表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
backup2  作者: 黒い映像
第一章 竜と異邦人と底辺宿屋
8/33

8.スラム通りの黒猫亭

これまでのあらすじ。


とあるところで困っていた爺さんを助けたらお礼に宿屋を譲渡されました。丸ごと。

そんなことある?


宿屋の主人としての生活も悪くないかな、とか軽い気持ちで引き受けたらまぁそんなうまい話はなかった。

場所はスラム街、宿屋はオンボロ、宿泊客はアウトロー、店員は俺一人と地獄のような有様であった。

体のいい厄介払いかもしれなかった。

別に宿に借金があって代わりに背負わされたとかではなかったのがせめてもの救いか。


早々に健全な経営は諦めた。

一応道楽で開けてはいるが、新規客はほぼいない。

そして宿の稼ぎもほぼ無い。なので宿の経営はほぼほったらかしだ。

迷宮で食材調達とモンスター討伐依頼に精を出す日々である。


しかしそんなある日転機が訪れた。

偶然出会ったドラゴンをコテンパンに叩きのめしたら、少女の姿に変身して求婚されてしまいました。

これなんてエロゲ?


当然断ったがギャン泣きされてしまい、仕方なく拾って帰ることになったのであった。




*** *** ***




朝だ。

眠りから目覚めた。夢など見ていた気がする。

久しぶりに夜にしっかりと眠れたな……。


「くぅ……くぅ……」

「んふふ……お兄ちゃん……♡」


気付いたら全裸の少女×2が俺に纏わりついていた。立派な事案である。

おまわりさーん、俺です。


腕に引っ付いて寝てる全裸ドラゴン少女は分かる。

上に乗っかってるエウリィはなぜ全裸なんです?


っべー。いやマジで、っべーわ。流石に怖い。

とりあえず丁重にどかしてベッドから降りた。

全裸少女同士絡み合っておいてくれ。百合っ。


良い朝だ。

人口太陽が今日も元気に世界を照らしている。

身体を伸ばして一息ついた。快眠だったな。

全裸少女を侍らせて眠るという悪徳貴族みたいなことをしたからだろうか。

今度から一考してみよう。


***


部屋から出て厨房へ行くと、既にシンママが朝食を作っていた。

しまった、少し遅かったか。


「タナカさん、おはようございます」


本日もご機嫌麗しゅう、マダム。

手を取って口付けた。うーんロリロリしいすべすべおてて。


「も、もうっ、こんなおばさんに何してるんですか」


娘と姿が胸とお尻の肉付きくらいしかさほど変わりがない母親がそんなことを申した。

あなたをおばさんと形容してしまったらこの世の大半の女性はババアになってしまう。

あまりご謙遜をなさらないように、レディ。あなたは若々しくてお美しい。


「い、いやだわそんな……おだてても何も出ませんよ」


頬に手を当てておっとりと照れるシンママ。

その仕草がまた可愛らしい。押せばいけそう感もなかなかグッドだ。

だが押さないっ!


「……亭主。むやみやたらと色目を使うものじゃない」


食堂からむすっとした声が飛んできた。

目を遣ると、こんな底辺宿屋には似つかわしくない輝かしい銀髪のお嬢様が座っていた。


おっと、お嬢様までいらっしゃったとは。

昨日の夜も遅かっただろうに、朝も早いとは大変ですね。


「話を逸らさないでくれ。さっきエカーテ殿から聞いたぞ。また女を増やしたそうだな」


人聞きの悪いことを仰る。少し可哀想な子を泊めてやるってだけでさぁ。

それが偶々女の子なだけですよ。他意はない。


「ふん、どうだか。連れてきたのは小柄な少女だったようだが?」


ええ、まあ。偶然ですね。

どうも俺の周りにはロリータが集ってしまうようで。


「……ここにまんまと泊まってしまっている私が言うのもなんだが、もう少し節操というものを持った方が良いのではないか?」


私怒ってますアピールをされてしまった。

いかんな、何がお嬢様の逆鱗に触れてしまったのだろう。


「あはは……レーヴェちゃんはタナカさんのことを心配してくれているんですよ」


苦笑いしながらフォローしてくれるシンママ。

なんと出来た女性なのか。


「別に心配してるとかそういうわけではない!」


へっへっへ。分かってるさお嬢様。

貴方の属性がツンデレなのは百も承知さ。

すすすと瞬間移動して小柄で可愛らしいお嬢様の元へ。

えいっ。手を脇に通して抱き上げた。


「ひゃあっ!? なっ!? 何をする!?」


ふっ、反応が鈍いぜ。

そんなことでソロ冒険者なんてやっていられるのかいお嬢様よお。


「なっ!? やめろ! は、離せ! お、降ろせっ!!」


じたばたと暴れるが、俺の腕から逃れることは出来ない。

ほれほれ、ここがええんじゃろう? ぐふふふふ。


「きゃああぁっ!? ど、どこを触っている! いい加減にしろっ!! こらッ!!!」


怒られてしまった。

仕方ないのでそのまま椅子に座る。

お嬢様をくるりと一回転させ、向かい合うように俺の膝に下ろしてやった。

お嬢様はもっと肉を付けた方がよろしいですな。細すぎて不安になる。


「亭主! 好き放題しすぎだっ! そして私を子供扱いするなっ!!」


ははは、愛い奴め。頭を撫でてやろう。

サラッサラの銀髪に指を通す。うーん美少女。

貴族特有の気高い香りが心地よい。くんかくんか。


「なっ……ばっ……! そっ……はぁっ……もおぉ……!」


言葉にならない言葉を呟いて俯くお嬢様。

耳まで真っ赤になってるぜ。いいねえこの反応だけでご飯食べれちゃう。

ぽかりと胸を叩かれた。うーん100点。


「タナカさん……もうそれくらいで勘弁してあげてください」


シンママのストップが掛かったのでこれくらいにしといてやらぁ。

今度は素直に可愛がってほしいって言ってみ?


「誰が言うか馬鹿ものっ!!!」


今度は割と腰の入った正拳を頂いたので大人しく解放してあげた。げふっ。


***


シンママは俺が教えた味噌汁を俺以上の手際の良さで作ってくれていた。

勿論味も上だろう。悲しみ。


味噌汁が飲みてぇと痛切に感じたのは遥か昔のことだ。

このISEKAIでは当たり前のように歴史も文化も異なっているため、味噌も醤油も存在しない。

似たような調味料はあるのだが、どうしても味が違う。

だが日本人の魂の味をどうしても舌が求めてしまうのだ。


俺はISEKAIものによくある他人任せチートなど持ってないので、もはや自らの手で作るしかなかった。

なので時間を掛けて、元々この世界にある似たような調味料を改良した。

そうして出来上がったのがこちら、味噌Ver.3.08と醤油Ver.5.01である。

恐らく完璧に近い出来であると自負している。


インベントリの空きを永久に埋めているのがこういった調味料だ。

俺の唯一の趣味と言っていい料理のレパートリーを豊かにする為に開発し続けた結果、調味料の類がとんでもない量になってしまった。

まぁインベントリに突っ込んでおけば嵩張らんし、腐らんし、何個あってもいいもんだろう。


「今日も”みそしる”が二日酔いの胃に染みるゥ……」

「最近朝はこれと白米を食べないと始まらなくなってきたんだよな」


無銭飲食者共が味噌汁に舌鼓を打っておるわ。

クックック。知らずの内に日本の魂に染められていることを後悔するがいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ