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backup2  作者: 黒い映像
第一章 竜と異邦人と底辺宿屋
31/33

31.屋台は一日にして成る(Ⅳ)

バレッタをいつもの部屋へとご案内する。

荷物を置いてベッドに腰かけ、やっと一息吐いた。


「店員が客の部屋でくつろいでんじゃないわよ……。仮にも宿屋なんだから、もう少し気を使って欲しいわ……」


まぁそういうな魔女っ娘よ。

おじさんももう年でね。重い荷物を二つも運ぶと肩やら腰やらが悲鳴を上げるのよ。


「知らないわよ……。用件が無いなら早く出てってくれる……?」


まぁ待て魔女っ娘よ。

宿の料金の話だ。


「……いつも通り、宿の魔道具を点検するだけでいいの……?」


うむ、いつも通りお願いしたい。

それと、もう一つ見てもらいたいものがあるんだ。


「?」


***


厨房へ移動し、物言わぬブツを紹介する。


「これは……これも魔導具なの……?」


ああ、ここに魔晶珠が入ってる。

見てくれるか?


「……ふぅん…………あぁ、そういうこと? 風の魔術で中の液体を定量供給させるわけね……なるほど…………でもこれじゃ上手く動いてない……完全に制御式の一部が破損しているわね……」


うむ、一瞬で自分の世界へ没入したようで何よりだ。

スカートを捲って見てもやはり色気のないドロワーズだったので面白みはない。

今度色気のある下着でもプレゼントしてやろう。


さて、彼女に見てもらっている魔道具は飲料用のディスペンサーだ。

ジョッキにジョバーっと飲み物が出てくるアレな。

客がいないのでこの手の便利魔導具の修理は後回しにしていたのだが、屋台を開くとなるとコイツの存在は必須だ。


「……破損個所が分かれば簡単よ。何の機能が不足しているかくらい、アタシならすぐに分かるわ……。これがこうなってるから……こうに決まってるわ。……ほら、バッチリよ……フヒヒッ……」


うーん、もう少し可愛い感じで笑えないものだろうか……。

まぁいいか、後は任せよう。


この調子ならすぐにディスペンサーも使えるようになるだろうな。

コンロは使えるし屋台も出来上がっている。酒も買った。

ホルモンの準備も昨日下処理したものがそのまま使える。

これは……もう今日中に屋台を出せるんじゃないか?


後、必要になってくるのは……容器と串くらいか。

ドリンク用のジョッキなら宿に大量にあるからそれを使えばいい。

容器は使い捨ての皿を作ればいいし、串も作れるよな。

……よーし、作るか。




*** *** ***




というわけで裏庭に出て地面に手を付き、クラフトスキルを発動。

錬金っ!


特にかっこいいエフェクトもピカッと光るわけでもなく、淡々と地面が盛り上がって質の悪い土製の皿が出来上がっていく。

地味。


「なにやってるんですか?」


屋台で使う用の皿を作ってんだ。

ジーナもこれ作れるか?


お手本になりそうな串と、材料の竹そのまま一本を放ると、ジーナは目を輝かせて受け取った。

そしてクラフトスキルによって瞬く間に大量の竹串を生成した。


「できましたっ!」


はえーよ。

クソッ、スキルのレベルが高過ぎる……。

せめて切って工作する過程ぐらい入れろや。


「だんなさまもにたようなことやってるじゃないですか」


まぁそう言われるとそうなんだが……。

俺のは精度も悪いし質も悪い。

ジーナのようにぱっと見で分かるほどに質がいいのは作れんさ。


……しっかし、最強種族にくだらないことさせてんなぁ、俺。

普通の成り上がりものならもっとこう、このチートパワーを使った壮大な何かが始まるところなのに、やることがスラム街で屋台出すための小物作りとか……。


……いや、思えば別に壮大な何かは起こらなくていいな。面倒事の方が多そうだし。

程々だ。何事も程々がいい。

このスラム街で程々に目立つ宿屋になるくらいが丁度いいんだ。うん。


「……なーちゃん、やくにたってませんか?」


ん? いや、滅茶苦茶役に立ってるぞ。

屋台は素晴らしい出来だったし、この串もどこぞの高級品かと思うくらいのクオリティだ。


「……だんなさまは、なーちゃんがなにかをしてあげるよりも、ほかのにんげんのほうがきになってますよね……」


おっとぉ……ジーナにまで爆弾が点灯してしまったか……。


ハーレムルートを征くには複数のヒロインたちの好感度を均一に保つ必要がある。

選択肢一つで全てのフラグがへし折れてしまう可能性すらあるのだ。

まぁこれゲームでもなんでもないんだけど。


なのでヒロインのメンタルケアは必須である。

とりあえずジーナを受け入れてやろうと腕を広げたら、目に見えない速さでがばっと抱き着かれた。

(リキ)は入ってないのでそのままにしておいてやる。


「だんなさまはごしゅうしんなヒトがおおくて、なーちゃんがいちばんになれるかふあんになってきました……」


おいおい、たった数日で何を弱気になってるんだ。

言っとくがお前は後発ヒロインなんだからな。他の子たちより出遅れてるんだ。

その分巻き返すための努力は人一倍必須なんだぜ?


「いくらどりょくしても、とうのだんなさまにすきになってもらわないと、いみがありません……」


かぁ~っ最近の若い子は……。

悟り世代ってのかねぇ……なんでそう分かった風に語っちゃうかなぁ。

未来の事なんか誰にも分からないんだから、今を心配してても仕方なかろうが。

もっと馬鹿になんないと楽しくないぞ?


「……ばかになればすきになってもらえますか?」


う、うーん……まぁ……変に賢しい子よりは、ちょっと抜けてる子の方がおじさん的には好きだけど……。


「では、なーちゃんはちょっとぬけてておばかなこというろせんでせめようとおもいます」


お、おう……。

デフォで少しお馬鹿な子の認識だったけど、更に上塗りするつもりなのか……。


……いや、ちょっと待て。そういうキャラがどうとかいう話じゃないんよ。

お前はお前だ。無理にキャラを作る必要なんかないんだ。


「でも……すきなヒトのために、すかれるじぶんになるどりょくはひつようなことじゃないですか?」


うーん、それも確かに正論だけどな。

俺は作られたキャラじゃなくて、その人のありのままを好きになりたいと思うワケよ。


「……なーちゃんの、まま?」


ああ、お前はそのままで十分に可愛い女の子だろ。

とてつもなく面倒くさい面はあるが。


「……ほんとですか? ほんとになーちゃんかわいいですか?」


可愛いさ!

ほらほら、可愛い可愛いっ!


「ひゃうっ! きゃふっ、んうぅぅっ!」


可愛い可愛い。めちゃんこ可愛いぜひゃっほう。

全身を撫で繰り回すと嬉しそうに美少女が身を捩る。

ペット感覚で愛でてる感は否めないが、まぁ可愛いことには変わりないだろう。


「ふぅ……ふぅ……♡ んふーっ♡ ふぅーっ♡」


やれやれ、これで爆弾の導火線消火作業完了だぜ。

ちょっとヤバい息遣いをしてるけど、多分大丈夫だよな。

なんせベイビーちゃんだからな。

いやらしい感じにはなってないはずだ。

うん。

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