道のり
今日も朝早くから出発。
覚醒者の佐藤さんは、道に放置された車を持ち上げて強さのアピールをしている。
それにつられて高木さんが風魔法の【竜巻】を発動。
1台の車を廃車にする事件が発生してしまった。
覚醒者でない高3のミサキに説教されて、2人ともバツの悪そうな顔をするしかなかった。
俺は仕方ないと思ったので、広い場所で魔法と接近戦の練習をさせる事にした。
風魔法の【風牙】を特に練習させた。単発魔法で有るが相手に直接風の牙が襲い掛かる。
相手の目の前に発生するので、誤射の恐れが無く外す事もなかった。
火魔法は、【炎の球】で発射系の為、コントロールの練習は必須だ。
接近戦は各自が見て知っている型を一生懸命に型稽古をしてる。
1時間ほどが経過した頃合いを見計らって、神戸に向けて再出発をする。
覚醒者が子供達を抱え、早足で移動する事になった。
やはり子供がネックになってしまった。
道路は放置された車が多く、車での移動はやはり無理であった。
途中ママチャリを発見、椅子に座らせて走ればスピードアップが図れる。
佐藤さんはそう言いながら探し回るが、そうそう見つかる物でもなかった。
自転車を探しつつ移動して、ミニスーパーの前で放置自転車を16台発見。
ようやく皆が自転車での移動が出来るようになった。断然移動スピードが上がった。
しかし今度は、覚醒者でない人にスピードを合わせないといけなくなった。
「ストップ!狼が3体来たぞ」
俺は自転車をとめて、刀を抜くと走り出した。
すれ違いざまに斬り捨て、もう一体も首を跳ねた。
残りの1体が逃げ出そうとしたので、追い駆けざまに後足を斬った
後首をがっしり掴むと引きずりながら皆の所に戻った。
ミサキに刀を渡すと、震えながら胴体を突き刺した。
しばらく暴れた後、動かなくなった。
俺は3体のブラッドから魔石を取り出していた。
佐藤さんは興味があるのか覗き込んでいる。
ミサキは光魔法を取得していた。その中に【治療】があり怪我や病気を治すらしい。
残りの女性も申し訳なさそうに、俺に覚醒を頼んできた。
俺も頷いて承諾。
またも襲ってきたブラットを高木さんが1体倒してLvアップ。
佐藤さんも負けじと、腹に1発、頭部に2発と殴りつけて仕留めてLVアップ。
俺が捕まえて抵抗できない状態のブラットを女性が何とか仕留めて覚醒者になった。
その女性は選択できる物の中に魔法が無かったらしく剣士を選び取得した。
SPを使ってSTRとDEXとAGIを強化している。
何度かの襲撃に耐え、立派な家に入りバリケードで塞いでゆく。
シャワーを浴びる者や、夕食の準備をしだす者など、思い思いの時間を過ごす。
子供達も元気になったのか、笑い声が聞こえる。
相変わらずテレビは付かなかったが、スマホで情報集めをする。
神戸までなら後60キロはあるだろう。
佐藤さんはスマホで、ここまで逃げてきたなら迎えに来れるのではないかと頼んでいたが、良い返事は貰えないらしい。
静まり返った夜に、家の明かりは消えているが街灯だけがともっている。
そんな風景を俺は、窓のカーテンのスキから注意して外を見ていた。
21時過ぎ頃だろうか、外に出しているシアンから警戒の思念が送られてきた。
「魔物がやって来た!数が多いので俺が打って出るから、佐藤さん後は任せた」
佐藤さんは俺の単独行動を危ぶんだのか「私も行こう」と言ってくれたが、俺はこの申し出を即座に切り捨てた。
「申し訳ないが邪魔です。守って戦う程、余裕はありません」
それを聞いていた人達は、真剣な表情になった。
俺はバリケードを崩して外に出た。
数は多く、80体以上いる事は分かっていた。
俺1人で戦いに勝てるのか不安でもあったが駆け出した。
何としても阻止しなければいけない。
トップスピードでブラッドの集団にぶつかる前に風魔法の【風斬】を発動。
1発で5体程、斬り裂いている。
そのまま刀で斬りつける。刀には【強化】を掛けて強くしている。
やはり住宅街では、俺の植物魔法と土魔法は分が悪い。
使えそうな植物も少なく、下はアスファルトで固められている。
使えるのは風魔法の風牙・風斬だけ。
【竜巻】が使えれば集団戦には便利なんだが、アイツラは魔法を使わせないよう攻撃をゆるめない。
「舐めるなよ俺をー」
高校時代に剣道をやっていた事に感謝だ。
気配探知で後からの攻撃も見えていた。
振り向きざまに斬り上げて切断。そのまま横からの攻撃を足さばきでかわす。
そして上段から斬り下げた。
遊びで覚えたフェンシングの突きが炸裂。
怒涛の突きが、面白いほど決まり数を減らす。
次第に攻撃が激しくなり。1時間の死闘の結果倒しきった。
ここからが又大変で腹を裂き魔石を取り出す作業が待っていた。死体は土のある家まで引きずり魔法で土に埋める。
入った家からバッグを探しだし、魔石を詰め込むとスマホで時間を確認。
23時過ぎと表示。そろそろ皆が居る家に戻らないと心配しているだろう。
ドアを叩き。
「大丈夫です。片付けました」
ガタゴトと音がしてドアが開いた。
そこからミサキが飛び出し、俺に抱き付いてきた。
そしてミサキはしがみついたまま泣いているが、俺はドキドキと胸が高鳴り足がガタガタと震えていた。
刺された記憶がよみがえり、俺は今にも倒れそうになっていた。
高木さんがミサキをあやしながら、奥へと連れて行った事で何とか持ちこたえた。
佐藤さんが目の前へ来て。
「顔が真っ青だな、シャワーを浴びろ。血だらけになってるぞ」
俺は自分の全身が赤くなっている事にようやく気付いた。
渡されたバスタオルでまず体を拭う。
風呂のシャワーで全身に浴びていた血を洗い落とし、赤かった床がすべて流されていったのを見て、ようやく安堵した。
出ると服が用意され、それに着替えた。
そして佐藤さんがやってくるなり引張られ、部屋に案内された。
「ご苦労だった。ゆっくり寝てくれ」
そう言うと出て行った。
布団が敷かれていたので、寝転ぶとすぐに睡魔に襲われ、眠り込んでしまった。
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