救助
いつもの様にスマホで情報集めをしていると、岡山の山奥から救助要請の動画を見つけた。
大人10人と子供4人が映し出され、戦時中に作られた防空壕に隠れているらしい。
防空壕の座標位置を書かれた紙を、母親が小さな子供と手を繋ぎながら持っていた。
そこのリーダーらしい男性が、食料も無くなり切羽詰まっている現状を訴えかけている。
救助要請者の話で分かった事は、スマホの通信可能な時間帯が17時から18時までらしいということだ。
原因は分からないが、それも1つの情報として捉えられている。
座標を調べてみると、ここから50キロ先だと分かった。
あくまでも直線距離であるが、道路を使うともっと距離は伸びるだろう。
政府が救助するなら兵庫側からがもっとも近い。
しかし兵庫側は神戸を守るのが手一杯で、救援に行けそうになかった。
バードンの目撃情報もチラホラ出だしていた。そんな状況ではヘリを飛ばす事も出来なかった。
書き込みには、同情するコメントが多くあり。
ニュースにもなって、政府への批判へとなっていた。
そして俺は悩んでいた。
女のストーカーに刺され、刺された状態で放置。
俺は動けないまま倒れ、痛さと死ぬのかという恐怖に襲われながら長い間もがいていた。
誰か助けてくれと、意識が続く間助けを願っていた。
これは体験した人間しか分からないだろう。
そして救助要請者たちを助けられるのは、今は俺しか居ないと考えていた。
防空壕まで行くのは簡単だが14人を無事救助するのは大変な事だと容易に理解している。
何もしなければ助からないなら、1人でも助かる可能性に掛けるべきだ。
女性に対しての恐怖感は依然として変わらないが、我慢できると自分を信じる。
そして俺はやっと決心した。
屋根のツータンに、水が欲しい時はこのボタンを押せと教え込んだ。
止める時も同じボタンを押すんだと念を押す。多分理解してくれたと思うしかない。
第1防衛ラインのツータンと協力し合えば、畑の水やりも出来そうで教え込んだ。
救助には多分、日数が掛かると予想したからであった。
一旦決めたらバックを背負い。腰のベルトに刀を差し、猟銃を肩に担いだ。
バックからは、鉢に植えたシアンがフサフサと揺れている。
シアンは見張りや警戒担当として連れて行く。
準備が出来たので、俺は走り出した。
Lvアップした事で身体能力が異常に上がっている。
時速50キロは出ているかも知れない。今まで体感した事もない経験でもあった。
車を使わないのは、道路も下手をすると車で移動できない状態だと考えたからだ。
8時間駆け続けて、ようやくたどり着いた。
17時過ぎでスマホが使える時間帯になったので現在の座標位置を確認。
移動しながら位置確認しつつ防空壕を探す。
「あ!これか。植物を使って分からなくしていたのか。おーい誰か居ないかー」
ガサゴソ植物を掻き分け、1人の男性が出てきた。
「助かった。本当にありがとう。他の人は何処ですか」
「私しかいません。食料を持ってきました」
日本政府の対応や警察や報道関係など厳しい状況を説明。
暗い顔で静かになる人達を見ながら周りを確認。
防空壕の中は薄暗く、天井から小さな光が差していた。
そして異様な匂いもしている。
菓子パンとペットボトルが配られ、必死に皆は食べていた。
防空壕内が暗くなってきたので、LEDの照明を付ける。
1つしかない光源であったが、防空壕内を明るく照らしている。
足の怪我で動けない男性と腕を怪我をした女性に、赤魔石を渡し布を取り患部に当てるように言った。
不思議そうに患部に当てると徐々に傷が治ってゆく場面を見て、皆一様に驚いていた。
俺は対人恐怖症で特に女性から話掛けないで欲しいと断わった。
そして魔物を倒した事で、特別な力を授かった事を話した。
だから俺と同じ様に、力を手に入れるのを手伝う事を伝えた。
男性5人と女性3人が手を上げた。
明日、朝一で出発する事となり、今日はまだ早いが寝る事になった。
朝早く目覚めると、早速残りの食料を皆で食べ、出発する事にした。
最後尾にはリーダの佐藤さんが猟銃を構え警戒。
中央には女性の高木さんがシアンの鉢を持つ担当。
先頭は俺が立ち警戒しながら進む。
子供達は抱っこかおんぶをして連れて行く事になった。
俺はここに来るまでブラットを何体か倒していた。
そしてSPを使って気配探知を取得している。
なので魔物が来ればすぐ分かる。
「ネズミタイプが来たぞー。5匹だ警戒しろ」
悪戦しながらも右手に2匹、左手に2匹と、さらには右足で踏みつけて1匹を捕まえた。
「足の奴から倒して下さい」
佐藤さんがサバイバルナイフで刺した。
次々に刺して、最後に高木さんが刺して終わった。
5人はステータスが現れた事に驚いていた。
3人が恩恵を貰えた様で2人は貰えなかった。
どうやら個人差が有るみたいで、貰える恩恵も個人差が有った。
高木さんは恩恵の中で、戦闘系と風魔法が有ったらしく風魔法を取得した。
後の2人は魔法が無かった為、佐藤さんはSTR強化を取得。
もう1人は隠密を取得したらしい。
隠密は、魔物から存在を隠すスキルで匂いも姿も分からなくするらしい。
恩恵が貰えなかった2人は、SPを使ってVITやSTRを上げていた。
SPの取得ポイント数や取得できる物にも個人差があったのだ。
それは新たな情報でもあった。
そしてキラーズの襲撃がもう1回あった。
それで残りの3人も取得した。女性陣2人が火魔法と風魔法を取得。
男性1人が風魔法を取得した。
それを見ていた少女のミサキが、
「私にも取得させて下さい」
「分かった。魔物がやってきたら捕獲しよう」
夕暮れ前に、空き家となった家に入った。
窓やドアにバリケードを作り、明かりが洩れないよう布を幾重にも被せた。
そして水や電気やガスはまだ使える様だ。
順番に風呂場でシャワーを使って洗っていた。
衣服と下着類を新しいのに着替えホッとする女性陣。
女性の2人は、途中のコンビニで集めた食料で微笑みながら夕食の準備をしている。
残りは子供の世話をしている。
ここまで来たが、人と出会うことは無かった。
その間、俺は外の気配に集中しているのだった。
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