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女神さまに土下座されたので魔王を倒そうと思う  作者: ケアプ一浪
プロローグ
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プロローグ

当小説をご覧いただきありがとうございます。

稚拙な文となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。


~合衆国・某所~



 赤、青、黄色、様々な色のサーチライトが夜空を彩る。それぞれがアトランダムに夜空を駆ける。

 半月と人工の光によって日中もかくやとばかりに照らされたその空の下に、円形の舞台があった。その周囲には地面が見えないほどの大観衆が熱気を讃えている。

 不意に何処からともなくドラムロールが鳴り渡る。同時にテンカウントが観衆の中から巻き起こり、それがに津波のように伝播していく。

 3(three)、 2(two)、 1(one)、 とカウントが徐々に小さくなり、0(zero)!という掛け声と共に舞台のど真ん中から人影が弾かれたピンボール球のように飛び出した。


「 “ジャッキィー・ショーウ”! 今宵もこの瞬間! この時間がやってまいりました!司会進行は皆さんお馴染みこのワタシ! ジャッキィィィィリッィイイイードゥ!」


 舞台のど真ん中に片膝を衝いて着地した男は、四方を彩る火炎と共に口上を叫んだ。

派手な金色をした衣装に逆立てた金髪、右手にはごてごて装飾のマイク。ジャッキー・リードと派手な男が大仰に名乗りを上げると、煌びやかな会場から怒号の様な歓声が興る。中には失神してしまった婦人方もいるようだ。


「おうおうおう! ミナサンありがとう! こんな大勢の見目麗しいご婦人方から声援を頂けてワタクシ、とても感激しております! ……ん、男もいるって? すまないがワタシにそっちの気はないんだ」


 ジャッキーがジョークを飛ばすと観衆が爆笑の渦に飲み込まれる。


「さて、本日のメインイベントはぁぁぁぁ……これだ!」


 上空に立体ホログラムの花火が飛び交い、その後ろから『超人チャレンジ』の文字が映し出される。


「『超人、ヨリチカ・カケイ』が前人未踏なチャレンジをするこのイベント! 今回はどんなスゴイ光景を見せてくれるのかッ!」


 ホログラムが切り替わり、左右から『地上20メートルから』『無傷でヒモ無しバンジー』の文字列が飛び出す。

 観客がチャレンジの内容に息を呑む。


「人間には出来ないってェ? HAHAHA、しかし『超人』になら出来るだろう! では主役に登場して貰おう! 海の向こうからやってきた『超人(タフガイ)』ヨリチカ・カケイ!」


 どぱん、と観客の後方数十メートルの場所がライトで照らされる。その場所には高さ15メートルの即席で作られたジャンプ台、さらにその頂上には一人の中年男性が腕を組んで仁王立ちしていた。

 それと同時に司会の立つ舞台の頭上に中年男性の姿がホログラムで中空に投影される。

 歳の程は四十ほど。海兵風にカットされた頭髪には白髪が目立つものの、その体躯は年齢にそぐわないくらいに鍛えあげられていた。童子一人分はある腕に、石材くらいなら易々と踏み抜いてしまいそうな脚。鋼鉄もかくやとばかりに鍛えられた腹筋に躍動する胸筋。なるほど、『超人』という称号に名前負けしない肉体美であった。

 男は片腕を天に突き出す。そして意味もなくその場で宙返り。

 着地した瞬間、ジャンプ台が軋んで大きく揺れたが、観客たちは危険なパフォーマンスに半狂乱になっている。


「おうおうおう、ヨリチカよ、本番前にレディたちを卒倒させないでくれよ? アンタの偉業を見届けるのがむさ苦しいおっさんだけなのは忍びないだろう?」


 ジャッキーが半笑いで筋肉達磨……ヨリチカを批難すると、彼は大仰に肩を竦めた。そしてぱきりと指の関節を鳴らすと一度、二度その場で軽く飛び跳ねてから右手でOKサインを作った。


「どうやら彼の準備が完了したようだ。では皆さん、カウントを!」


 ジャッキーの掛け声と共に観客たちはカウントを始める。


「5! 4! 3!」


 ヨリチカは首を鳴らし、真剣な表情で地面を睨む。


「2! 1!」


 ゼロ、同時にヨリチカの両足がジャンプ台から離れる。

 巨躯を器用に折り畳み、くるくると打ち上げられたバレーボールじみた回転をする。

一回、二回、三回転。そこでやっと彼の体が重力に引かれ落下を開始する。上体を開いて捻りを加える。二度(ふたたび)、宙を舞うヨリチカを幾つもの照明が照らし、技の美しさを引き立てている。

 遂に、地上がむき出しのコンクリート床が目前に迫る。

 ある者は目を塞ぎ、ある者は半開きになった口を閉じるのを忘れている。またある者は感涙し、成功を願い祈りをささげている。


「よっと」


 気の抜けた掛け声と共に地上まであと2メートルという所で最後に二回転。そのまま凄烈な音を立てて彼は地表に降り立った。

 成功か――。しかし、ヨリチカはコンクリートの上でしゃがんだ状態のまま微動だにしない。

固唾を飲み込み、見守る観客たち。

 ゆっくりと彼の巨体が身じろぎ、立ち上がる。


「ッッッッッッッッ!!」


 歓声が地上を、空中を埋め尽くした。

 勝利のガッツポーズ、ヨリチカは自身の健在を示す様にダブル・バイセップスでポーズを決め、その場で雄たけびを上げた。


「ウォォーー……」


 その叫びが最後まで続く事はなかった。彼は撤去される銅像のようにそのポーズのまま地に倒れ伏す。

 (かけい) 頼義(よりちか)。享年四五歳、死因は足首の捻挫であった。



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