紹介
教室に戻ると、六人はそれぞれもうテーブルについていた。今夜はもやし入りカレーを食べる人が多いようだ。
俺はパック半分のご飯と、カレーを食べることにした。
席に着くと、リーダーが話し始めた。
「みんな、飯を食う前に聞いてくれ。この絵描きがみんなに自己紹介をしたいらしい」
リーダーが目配せをする。俺は頷いて話し始めた。
「えー、俺は絵を描いて生活していたヒロというものだ。例の選抜で変わってしまった街を歩いていたら、この場所を見つけた。選抜には納得していないから、なんらかの方法で撤回を求めたい」
なんだか政治のスピーチのようになってしまった。だがみんなは少し安心したようだ。
「ということだ。こいつはちょっと怪しいが、悪いやつではないだろう」
リーダーはなぜか知ったように言うが、溶け込みやすい雰囲気を作ってくれるのはありがたい。続けてリーダーが言う。
「俺はオサム。ここの上の喫茶店のマスターをやっていた。だから、みんなからはマスターと呼ばれている」
俺は矛盾を感じて質問する。
「喫茶店を営んでいたなら、選抜の対象者ではないだろ?なんで隠れているんだ?」
「俺はもともとロンガーの2人と一緒に生活していたんだ。しかし、2人が対象者になってしまったから、一緒に警察から逃げることを選んだんだ」
なるほど。男気溢れるいい人だ。
「これからよろしく頼む」
俺たちは握手をした。オサム、もといマスターとは何回か話しているからすこし信頼できる。
「じゃあ次は俺が」
マスターの隣に座っていた、筋肉質で色黒の男が話しだす。
「俺は近くの鉱山で炭鉱夫をやっていたタケだ。
選抜のちょっと前に鉱山で事故があって、そこが封鎖された。おかげで仕事がなくなって、選抜の対象者になっちまったんだ。だが運良くマスターと仲が良くて、この地下に入れてもらえたのさ」
「たまに来たらいくらでも飲み食いするから印象に残ってただけだ」
マスターは少しぶっきらぼうに言うが、2人の距離感からして、とても仲がいいんだろう。
「次は私ですね」
メガネをかけた男が話し始める。どうやら時計回りに話すようだ。
「私はサトルと言います。マスターの喫茶店に泊まらせていただいて働いていました。ミュージシャンを目指していて、音楽活動が少しずつ軌道に乗って来たので、独立しようとしたところで選抜が始まってしまいました」
丁寧な物腰の男だ。しかも中性的かつ童顔なのもあり、学生にさえ見える。
「これからよろしく、ヒロ」
「よろしく、サトル」
握手を交わす。手がとてもきれいだった。
「次は俺か……」
金髪の、どこかチャラチャラした男が話し出す。
「俺はツカサという。昔サッカーのプロを目指していたが、実力が無くてチームをクビになった。
そのあとは物書きの仕事を探して食っていて、マスターの喫茶店のポスターを書いたことがあったから、ここに入れてもらえたんだ」
なるほど、元サッカー選手か。細く見えるが、たしかに足の筋肉はしっかりとついている。それに、こいつも若く見える。サトルもそうだが、年下と言われても信じてしまいそうだ。
「次は私たちだね」
イオリが話し出す。先日のやりとりで、怪しさは消えたみたいだ。
「サラは無口だから、私がサラの分も紹介するね。改めて、私が姉のイオリ、こっちが妹のサラだよ。私たちはロンガーって種族なんだけど、知ってるかな?」
「ああ」
「なら説明はいらないね。わたし達はこれでも100才を超えているんだけど、ロンガーを知らない人が多くて気味悪がられちゃったんだ」
たしかに、俺も昨日まで知らなかったからな。というか、この街の人も知らないのか?
「だけど、マスターが私たちを家に住まわせてくれたおかげで生活できていたんだ。それなのに、選抜のせいで隠れないといけなくなっちゃったんだよ」
隣でサラが悲しそうな顔をする。やはり、理由もなく弾圧されるのは不快なんだろう。それは俺たち人間も、もちろん同じだ。
「よし!これで正式に俺たちの仲間だ。特に目的はないが頑張っていこうぜ!」
マスターが言う。俺は笑顔で応えた。
「とりあえず飯だ!ちょっと冷めたが食うぞ!」
マスターのテンションが高い。俺は笑って手を合わせた。 みんなも手を合わせる。
「いただきます!」
その日は夜遅くまでみんなで騒いだ。




