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colored  作者: 海凪 静
4/5

last night

この話の前に本来はもう一つエピソードがあったのですが、止むに止まれぬ事情により削除しました。忍をわかってくれる人がいた、という話です。この回はお見せできませんが、忍は救われます。ご安心ください。その回で出した新情報として、人の心と心が共鳴しあった時にお互いの精神世界が混ざり合う「リンク」というのがあります。心に留めておいていただけると幸いです。

何人かの色を見つけ、夜が更けた。寝具コーナーで寝ることにする。先のダイブで意識を取り戻した人たちもいたが、スペースに困ることはなかった。床に入ってから、30分ほど経った頃だったろうか。足音がする。また、シンか。彼は警戒する。

「動くな」

ライトを点ける。そこにいたのは、奥で寝たはずの椎良だった。

「‥‥眠れない」

「そうか」

「どうしてくれるの」

「俺が何をしたっていうんだよ。羊でも数えれば」

「そんなの、とっくに試した。1500を越したところで嫌になって辞めた」

「じゃあ、どうする」

「‥‥眠れない」

「寝なきゃいいんじゃないか」

「眠れない、けど寝たい」

「んじゃ、寝たらいいだろ」

「子守唄歌ってよ」

「なんで?」

「寝れないから」

「‥‥わかったよ」

ねんねんころりよ、おころりよ。彼は歌ってやることにした。

「くるしゅうない、くるしゅうない」

彼女は彼の布団に倒れ込む。

「今日キャラおかしくないか。変なモンでも食ったか」

「いえ、ただ何か不安になって」

「不安って」

「全てが終わったら、私はどうなるんだろう」

「遠くに行くんだろ」

「そうじゃなくて、目的が消えちゃうんじゃないかって。私は、誰かを救うことでしか存在できない」

「あれか、なんちゃらパラドックスってやつか」

「まさか、メサイアコンプレックスのこと?」

「だからそう言ってるだろ。俺、博識」

「嘘でしょ」

「それはいいとして。多分、目的がなくなるなんてことはない。これが起きているのがこの国だけだとしても、1億はいることになる。世界中なら、70億人。誰もが色を取り戻しても、世界を再建する過程で苦しむ人は多くいる」

「でも、それでいいのかなって。救うだけで、いいのかな」

「いいんじゃねぇか」

「時々、思う。私達のしてきたことは、本当に正しいのかなって」

「正しいだろ。世界を元に戻そうとしてるんだ、英雄に決まってる」

「よく、言われるんだ。偽善者って」

「なら、見捨てればいい」

「それはしたくないし、きっとできない」

「じゃあ、こうしよう。苦しむ人のいない世界を作って、そこでゆっくりと余生を過ごす」

「それは、良いわね」

彼女はそれっきり黙って、そのまま眠ってしまった。あまりに無警戒な彼女のそばに座り込み、彼は眠る。そして、朝が来た。デパートを出て、二人は歩きながら言葉を交わす。

「寝ている間に何かされないか、気が気じゃなくて眠れなかったわ」

「嘘つけ、絶対寝てたぞ。シンが来てたら、殺されてたかもしれなかった」

「そうじゃなくて、誉、あなたが」

「何もしねぇよ」

「案外、臆病なのね」

「そんなんじゃない。ただ、そういうのは好かないってだけだ」

「よかったの?最初で最後のチャンスだったかもしれないのに」

「いいんだよ、お互いのための選択だ。俺は童貞であることを選び取った。童貞も守れない奴に何が守れる」

「え?私はあなたが裏切る可能性の話をしていたんだけど、何を勘違いしたの?」

「白々しいぞ」

「真面目な話、疑問なのよね。本当のあなたは、私の味方になるか敵になるか」

「さあな。ただ、今の俺はお前の味方だ」

「そうね。今だけが本当、それくらいで良いのかも」

「今更なんだが、どこに向かってるんだ?」

「向かうべき場所。全てが始まった場所」

「そこに行って、どうするんだ」

「シンはきっとあそこにいる。あの子を止めなきゃ、終わらない」

「どこにあるんだ?」

「あそこ」

そこには、一軒の家があった。

「冗談だろ」

「冗談じゃない」

「なら、何がある」

「シンがいる」

「何故わかる?」

「勘。あの子はきっとここに来る」

「そうか、じゃ間違いない。行こう」

また、歩き出す。

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