美醜逆転→不幸?幸福?
私の名前はエマ・フォスター(16歳)ハビフレア国で豪商と呼ばれるフォスター商会の長女である。
兄が後を継ぐ為に日々猛勉強のなか
私はどうしたらいいのか迷っています。
美醜逆転→不幸?幸福?
この世界では身長÷2の体重が標準体重でそれ以上が日本でいうモデル体重みたいな扱いになっている。
160㎝なら80キロが標準、90キロだとモデルみたいな感じ。
これは男女共通認識で、更に一重で鼻が低いと美しい顔立ちと言われている。
私は158㎝で90キロもあり、一重で目は小さくで鼻は低い。
物心ついた頃に前世の記憶がよみがえり、鏡を見たときに絶望したのを覚えている。
158㎝で53キロの体型を産後も筋トレやらを頑張って維持していたのに、豚さんになってしまって嘆いたわ。
顔はたいして変わっていないから何も問題ないのだけれど…
両親も兄も体型は豚さん。
フォスター家は美男美女ばかりと国では評判だ。
ただ、家族みんな奥二重なのに、私だけ一重で絶世の美女なんて言われていて…前世の記憶があるから喜べばいいのか嘆けばいいのか分からない…
コンコン
扉をノックする音の後にお父様が部屋へと入ってきた
「エマ、決心はついたか?」
「お父様…ごめんなさい、まだ…」
「そうか…。なに、まだ時間はある。ゆっくり考えなさい」
「はい」
お父様はそう言うと部屋を後にした
私には毎日、大量のラブレターと贈り物が届く。
私はこの国1、2を争うほどの美しさらしいのだ。自覚はない。前世の記憶があるから自分の体型が好きじゃないのよね…
食事制限しても運動しても体重が減らないし筋肉もつかない不思議な身体をしている自分にため息が出る。
で、なにを悩んでいるかっていうと
この国の第1王子(18歳)か第2王子(16歳)と結婚しなければいけないのだ。
第1王子は今まで民衆の前に1度も姿を表した事が無いが、とても美しく逞しいと噂だ。
第2王子は視察としてよく街に姿を表すが私とそっくりな体型で背も鼻も低いし、彼と夜を…と考えるとちょっと所か凄く嫌なのだ。
お父様は王家からの婚約の申し込みだけど断っても良いっていってくださっている。
私に気になっている男性が居ることを知っているのだ。
私は晴れている日は近くの湖に本と軽食をもって出掛けている。
そこで週に2、3回会う男性が居る。
名前はダン。
この世界では醜いとされる容姿をしている。
背は170後半位で、程よく筋肉のついた体、二重で優しそうな青い瞳に鼻筋の通った顔。
物凄く私の好みど真ん中!
とても博識で、私の知らないことを沢山教えてくれる。
でも容姿のせいかいつも自信がなさげで、「俺なんか」が口癖。
私は兄や父のように太っていて目も鼻も小さいような人ではなく、 「俺なんか」が口癖の自信なさげなダンと一緒になりたいのだ。
人を見た目で判断するのは良くないのは分かっている…でも、私の美的感覚では見た目で判断したくなるの!!
◆
「ダン?」
今日も湖まで来てみると木陰に座っているダンを見つけた
「…エマ」
「良かった!今日はダンに会えた!」
「俺なんかに会えて良かったって言ってくれるのはエマだけだよ」
「あ!また俺なんかって言ったわ」
私と居るときには「俺なんか」禁止してるのに!
「ごめん」
ダンは苦笑して謝ってくれた
「ねぇ、ダン…私一ヶ月後にはもうここに来れなくなるかも知れないわ」
「え…何かあったのかい?」
「私、第1王子か第2王子と結婚するかも知れないの」
「…嫌なのかい?第2王子はとても素敵だし、第1王子も見目麗しいと噂だよ?」
「私は会った事も話したこともない人と一緒にはなりたくないのよ」
嘘だけど…見た目で判断してるだけだけど…
「貴方にいつも言ってるのに…私は貴方が好きなのよ?」
「エマ…嬉しいけど君と俺なんかじゃ」
「ダン…」
その後は結婚の話はせず、いつも通りに過ごしたけど…今日もダンは私に好きって言ってくれなかった。
態度からすると、彼も私を少なからず好いてくれているはずなのよね…この世界では美女な訳だし…
しかしこの日から王家への返事をするまでの1ヶ月、ダンに会えないでいた。
お父様は断っても良いって仰っていたけど、断ったらこの商会はやって行けなくなるわ…
だったら、第1王子も第2王子もイケメンだって言われてるんだから王位継承権のある第1王子と結婚した方が得策よね?
◆
「お父様、私決めましたわ」
「エマ、どうする?」
「第1王子のダリウス様と結婚いたします」
「いいんだな?」
「はい、これが最善なのです」
そして王宮へと出向くと何故か第2王子のイーノス様が出迎えてくれた。
「イーノス様?」
「エマ、この国一の美女が妻になってくれるなんて僕は幸福者だ!」
「え?」
「さぁ!父上と母上がまってる!」
「待ってください!私はダリウス様と結婚すると言ったはずですが?」
「ダリウス?本気か?なんであんなヤツと?」
「イーノス様、私は娘を将来の王妃にするために王家へ嫁ぐことを許したのです」
お父様の言葉にイーノス様は不貞腐れていたけど、「ダリウスを見ても同じことが言えるのかよ!」と喚きながらも王と王妃が待つ部屋へと案内してくれた
◆
「エマ、よい返事をありがと」
「貴女のような娘が出来て嬉しいわ」
王、王妃は笑顔で迎えてくれたけど、私は気が気じゃなかった
この二人から生まれたダリウス様はきっとイーノス様とそっくりだわ
「王様、私と娘はダリウス様に1度もお会いしたことがありません。早速ですがお目通りをお願いしたい」
「ふむ…本当にダリウスで良いのか?」
「私が言うのも何ですが、イーノスと比べてあの子はちょっと…」
「街での噂は噂でしかなくてな…」
お二人は表情を固くしながらモゴモゴと話す
「どういう事でしょう?」
と私が問うと王が申し訳なさそうに「ダリウスは醜いのだ」と言った
今なんと???
醜いの?街での噂ではめちゃイケメンだって言われてるけど??
「私は、見た目で判断など致しません。第2王子が第1王子を差し置いて結婚などあり得ませんわ」
「そうか…エマがそこまで言うのなら」
「ダリウス、お入りなさい」
王妃がそう言うと扉が開き、そこに立っていたのは
「ダン!?」
「エマ…今まで騙しててゴメン」
そこには私が恋い焦がれていたダンが立っていた。
もう会えないと思っていたのに
私が絶対にダリウス様が言いと言ってからは 話が進むのは早かった
イーノス様は何か騒いでいたけど、王たちはダリウス様の婚約が成立してとても安堵していた。
第1王子に嫁がいないのは国にとっては大問題なのだ。
◆
『 健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?』
《はい、誓います》
『それでは、誓いのキスを』
ダリウスとエマは民衆の前で幸せそうに誓いのキスをした
◆
「ダリウス様、私、貴方の妻になれて幸せです」
「エマ…俺なんかが君と一緒になれるなんて思ってなかった」
「また、俺なんかって言ってる」
「ごめん…でも絶対に弟を選ぶって思ってたんだ」
ダリウス様は泣きそうな顔で言った。
「私はダンがダリウス様で嬉しい、ずっと好きだったんだもの」
「エマ…ずっと言えなかったけど君が好きだ、愛してる」
「私も愛しています」
私はほどよく筋肉のついたダリウス様の腕に抱かれ、深い口付けを交わしベッドへ身を沈めた。
私は今とても幸せです。
美醜逆転物が好きで書いてみたんですが、物凄く難しいですね…