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機械仕掛け50%  作者: タカ丸
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いつも通り

 中学二年の頃、仲の良いクラスメイトの女子がいた。何がきっかけで仲良くなったかは覚えていないが、三連休のときには必ず一緒に遊ぶほど仲が良かった。春休みにも、もちろんたくさん遊んだ。おしゃれなカフェや水族館へ行き、来年も同じクラスだといいねと笑いあった。

 そんな楽しかった春休みも終わって新学期。寝惚け眼をこすりながら学校に向かう。花がまだ咲いていない、もの寂しい桜の並木道を歩いて校門に到着する。毎年恒例のクラス替え。玄関には三学年分のクラス発表の紙が窮屈そうにはられている。そこでは大勢の生徒達が一喜一憂の声を漏らして賑わっている。彼女はもう来ているかなと思って辺りを見回したが、どうやらまだ来ていないらしい。先にクラスを確認しておこうと人垣を越え奥に進む。三年生の紙は一番左の方にあった。A組、B組、C組という順に自分の名前があるか探していく。あった。B組だ。B組のクラスメイトを確認したが、残念ながら彼女の名前はなかった。少し肩を落としながらA組とC組のメンバーを確認する。あれ、ない。彼女の名前がどこにも見当たらない。見間違えかと思ってもう一度A組からC組まで確認する。やはりない。

「は?」

驚愕して思わず声を出してしまう。なんてことだ生徒を忘れるなんて先生達も薄情だと思いながら近くにいた二年生のときの担任に確認すると、

「え、彼女から聞いていなかったのかい?」

と担任の方がびっくりしている。この人は何を言っているんだと怪訝に返事をする。

「何のことですか?」

先生は少し考えるような素振りを見せてから答える。

「彼女、親御さんの都合で県外に転校したんだ。君と相当仲が良いようだったから、てっきり彼女の方からもう聞いてたと思っていたんだ。ごめんね。」

周りの音から隔離されたような感覚に襲われた。唖然とした。少し落ち着いてから、何で彼女は僕に転校するって教えてくれなかったんだろうと不思議に思った。彼女がいなくなったことよりも、僕に教えてくれなかったことが何よりも寂しかった。

 その後の始業式はいつも通りに進んだ。いつも通り校長先生の話は長くてつまらなく、いつも通りいつまでもしゃべっている生徒がいるせいでいつも通りの先生がいつも通りの怒り方で怒り、まるで一人の人間がもうこの校舎から消えたことを感じさせないくらい、いつも通りに。



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