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あメイジんぐ☆ちるどれん(旧タイトル:魔法少女になりたい)  作者: @ハナミ
3話 ダンスを踊ろう!
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悪魔グリセルズ・イポス

 そして私達は、公園へと足を運ぶのでした。


「それじゃ! 気を取り直していくよ!」


 トーテムポール公園にやって来た私達。水奈ちゃんは、小さなモニターの付いた携帯型のDVDプレイヤーを持っていた。再生ボタンを押して地面に置くと、『ドラゴンスレイヤ』が流れる。トーテムポールを背に、水奈ちゃんと距離を取って、音楽に乗せて足踏みを始める。携帯型だけあって、ちょっと画面が小さ過ぎて見づらい。


 サビの部分に差し掛かると、ターンが決まる! よし、今度こそうまく行った!


『やがて復活する八頭の龍をー♪ 受け継いだ神器をもってー♪ 打ち倒せー♪』


 サビに合わせて、手を振りながら腰に手をやったり、腰をリズミカルに揺らしたあと、小さくジャンプしたりする。

 そんな時、白いアヒルが目の前にやって来た。アヒルさんも、私達の真似をして一緒に踊り出した。可愛い。サビが終わって、間奏が入った所で一度、足を休める。


「アヒルさんも踊るんだね! 水奈ちゃん!」

「桜桃ちゃん、あれはガチョウよ! ほら、首が長いでしょ?」

「え? ガチョウって首が長いの?」


「ガーガー」


 目の前のガチョウは純白で、水奈ちゃんの言う通り首が長かった。くちばしは黄色で、首の根元と胴体の間には、エリマキトカゲみたいな純白のスカート……うーん、スカートというより、バレエのチュチュって言うの? 水平状に広がるアレ。ていうか、お笑い芸人が着ている白鳥のおぱんつみたい。


「2番目のAメロに入るわよ桜桃ちゃん!」

「うん! ……あれ? 水奈ちゃん、ここ右手を前だよ?」

「桜桃ちゃんこそ、ここはしゃがむ場所でしょ?」

「あれ? なんか身体が勝手に動いてない?」

「動きが止まれない? うそ!?」


「ガーガー」


 途端、水奈ちゃんの拳が顔面に迫って来た。避けようにも身体が動けないので首だけで避けた。そして、私の意志とは別に、水奈ちゃんに向かってキックが向かってしまう。思いっきりお尻を蹴り上げてしまった。蹴られた水奈ちゃんは、地面とキスしてしまった。


「ご、ごめん! 水奈ちゃん大丈夫?」

「…………」返事が無い。気絶しちゃったみたい!


「ガガガガ! グァーグァー!」


 ふと、ガチョウを見ると腹を抱えて笑っている。しまった、このガチョウ……悪魔だ!


「何してるのー?」


 聞き覚えのある声。ふと目の前に私服姿の白兎君と、白兎君の頭の上で、帽子みたいに圧し掛かっているグニグニが居た。

 

「白兎君!? 駄目、近付いちゃ!」

「あ、これ『ドラゴンスレイヤ』だよね? 踊りやってるんだ! 僕もやっていい?」

「駄目! 離れて!!」

「あれ? 体が……勝手に……」


 そして、白兎君も悪魔の魔法に掛かってしまい、一緒に踊り出してしまう。遅かった。


「ん? こいつイポスの末裔じゃないか?」

「ガァーガァー!」


 ガチョウがグニグニに向かって鳴き声を上げている。


「ごめん、何言ってんのか全然わかんない」

「ガァーガァー!」

「呑気に喋っている場合!? グニグニなんとかしてよ!」

「なんとかしてあげたいのは山々だけど、僕も踊の魔力のせいか、ここを動けない。それに魔力も無いから、動けても倒せないし。……あ、そうだ! オセの末裔に頼めばどうだろう?」

「でもどうやって呼べばいいの?」私は、腕をぐるぐる回しながら言う。

「『オセの末裔よ! 契約により、我の元へと姿を現せ!』と叫べば来てくれるはずだよ。奴は、桜桃の従順な下僕だからね」

「わかった! やってみる!」


 私は、息を吸い込んで唱える。肘を曲げて、足は小刻みにステップしながら。


「オセの末裔よ! 契約により、我の元へと姿を現せ!」


 しーん。


「ちょっと! 何も出て来ないじゃない!」腕を組み、腰の位置を下げてコサックダンスする私。

「魔力回路の無い、桜桃が言ってどうするんだい? 白兎、君が唱えるんだ!」


 ムカッ! 私は、音楽に合わせて、グニグニの身体目掛けて、回転と共に水平チョップをくらわしたった。


「うん! オセの末裔よ! 契約により、我の元へと姿を現せ!」


 白兎君が、唱えると。目の前に光の輪っかが現れる。そこからぜるぽんが顔を出して来た。


「はいはい、どちらさんですか?」


 ぜるぽんは、口にご飯粒をつけていた。どうやらお食事中だったみたい。なんだろう、緊張感が全くない。


「助けて、ぜるぽん!」

「おや? グリセルズ・イポスですか? そいつの鳴き声には注意して下さい。呪文と言って、音階や言葉の組み合わせによって魔法を展開するタイプにございます。耳に入ってしまえば、トゥギャザーダンスの魔力が展開され、一緒に踊る羽目になりますよ」

「説明はいいから! もう、踊らされてるのよ! 助けて!」


 ぜるぽんは、辺りを見渡して輪っかから出て来る。


「なるほど、状況はわかりました。直にでもお助け致しましょう」


 ぜるぽんは、両手の長い爪を擦り合わせて研いだ後、ガチョウに向けて飛び掛かる。


「ガァー!」ガチョウに向かって爪を振り下ろす直前、ぜるぽんの動きが止まった。


「……あ」

「あ」


 振り返るぜるぽんが、爪を振り回しながら向かって来た!


「うわぁ! 来るなぁぁ!!」 

「すいません! しくじりました!」長い爪を、ぶんぶんと音を立てて私達を襲ってくる。


「こうなってしまっては、万事休すだね」

「そんな事言ってる場合!?」

「わーい!」

「白兎君! 危ない!」


 ぜんぽんの爪が、白兎君に向かう。 間一髪、避けたけど、足がもつれて私の方に倒れて来た。


「きゃあ!」二人して地面に倒れてしまった。


「わぁ! ごめん桜桃ちゃん」

「うん、大丈夫……え?」


 白兎君の頭の上に乗っていたグニグニが、私のスカートの中に。


「いやあああああ!! 」


 自分でも耳が痛くなる様な大声を上げてしまった。 


「あ、身体が動ける様になったよ!」

「どうやら桜桃様の叫び声が、踊の魔力を壊したみたいですね」

「桜桃ナイスだ!」


「ふぇぇぇぇんんん!!!!!」私は、恥ずかしさのあまりにグニグニの羽を掴んで、思いっきり地面に叩きつけた。


バインドライン!」


 白兎君は地面に魔法陣を描くと、光の鞭がガチョウの首を締め上げる。


「ひっく……あれ? 終わったの?」

「うん、無事捕まえる事ができたよ!」

「あれ? なんでグニグニがボロボロなの?」

「桜桃、自分の胸に手を当てて、思い返してごらん?」


 そう言うグニグニですが、特に何も思い出せませんでした。


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