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あメイジんぐ☆ちるどれん(旧タイトル:魔法少女になりたい)  作者: @ハナミ
5話 夢魔をやっつけろ!
14/15

帰って来た墓川先生

 G・Wはあっと言う間に終わってしまい、今日からまた学校が始まる。


「いってきまーす」


 私は、水奈ちゃんと合流した後、今日も一緒に学校へと向かう。


「うわああぁぁぁぁぁん! とらじろうが死んじゃったよ! うわぁぁぁん」


 大河アニメ『駆ける妖刀』も最終回を終えて、とらじろうの死に水奈ちゃんは号泣していた。


「私、墓川軍を絶対に許さない! 許すまじ墓川はかがわ 宏次ひろつぐ将軍!」

「水奈ちゃん、落ち着いて! とらじろうは、そんな事望んでない。水奈ちゃんは笑った顔が一番だって、そう思っている筈だよ」

「桜桃ちゃん……」

「大丈夫。とらじろうは水奈ちゃんの心の中で生き続けているから、だから笑っていて」

「桜桃ちゃん……うん、私……もう泣かないよ!」


 水奈ちゃんは泣き止んだ後、笑顔を向けてくれた。


「とらじろうの生首ストラップが発売されたら私、一生大事にする」


 それはそれで怖いよ、水奈ちゃん。


「そういえば、墓川 宏次将軍と、同じ名前の人、学校に居なかった?」

「そんな人居た?」


 何か聞き覚えのある名前だったんだけど……誰だったかな? 


◇◇


「桜桃ちゃん、おはよう」


 学校に到着すると、白兎君が声を掛けてくれた。


「おはよう白兎君。何持っているの?」


 白兎君の手には、透明なビニール袋と、緑色のリボンでラッピングされた手のひらサイズの何か。


「これ? 昨日ユマちゃんに貰ったんだ。見て見て、メイドさんの絵が描かれたクッキーだよ」


 丸くてきつね色をした平たいクッキーは、デフォルメしたとても可愛らしいメイドさんの顔がチョコペンで書かれているみたい。


「可愛いね!」

「おしょうゆ味で、パリッパリのクッキーなんだよ」

「それ、クッキーじゃなくて御煎餅おせんべいだよ!」

「投げるとほら! めっちゃめっちゃ飛ぶんだよー」


 御煎餅をフリスビーみたいに、教室の窓目掛けて飛ばす白兎君。御煎餅は、勢いよく回転して空いていた窓から飛び出し、空を飛んで行った。


「ね? めっちゃくちゃ飛ぶでしょ?」

「『ね?』じゃないよ! 白兎君、食べ物で遊んじゃ駄目だよ!」

「うん、ごめんね」


 笑顔で謝られたら、私もこれ以上は怒れない。


「解ってくれたらいいよ」

「桜桃ちゃんも食べる? クッキー」

「え? いいよ。もう一枚しか無いし……白兎君がもらったんだし、白兎君が食べなよ」

「そう? パリパリ……このおしょうゆと、チョコレートの意外な組み合わせが美味しいのに……もぐもぐ……」


 チョコとおしょうゆって意外と合うのかぁ……。そんな時にチャイムが鳴る。同時に、教室のドアが開かれた。


「おーい席に着けー」


 HRが始まる。教室にやって来たのは、いつもの女性の先生ではなくて、紺色の短い髪をした、背の高い男性の先生だった。半袖のカッターシャツに、グレーのズボンを穿いている。


「おおー元気にしてたか? 都合により長期旅行に行ってしまってすまんな。一応俺が、このクラスの担任って事になっている 墓川 宏次だ。改めてよろしく」


 墓川 宏次先生? あ、思い出した。2年生の時担任だった墓川 宏次先生だ。


「先生帰って来たんですかー!?」

「お土産! お土産!」

「今回は何処に行って来たんですか?」


「まぁ待て、落ち着け。いっぺんに言われても分からん」

「とらじろうの仇ー!!」


 大きな声が教室に響いたその時、ハサミを持った水奈ちゃんが、宏次先生に向かって行った! やばい! 殺し屋の目をしている!

 宏次先生の手刀が、突撃する水奈ちゃんが持つ手を叩いて、ハサミを床に落とす。


「犬神? なんの真似だこれは?」


 宏次先生は、水奈ちゃんの首根っこを軽々と掴んで、捕まえた。


「とらじろうの仇! 離せぇ!」

「とらじろう? ははん、さては犬神、『駆ける妖刀』を見たんだな?」

「先生、とらじろうの敵の墓川 宏次将軍と、先生。名前が同じだよね?」


 同じ名前の人なんてそうそう居ないし、先生の苗字も珍しいし……。あ、でもHKMR5も、みんな苗字に墓が付いてるから珍しくも無いのかな?


「そりゃそうだろう。『駆ける妖刀』は俺が書いたんだからな」

「「「えええ!!!」」」


 意外と近くに居たんだ。世界は狭いんだなぁ。


「げ……げんしゃくしゃ様でございましたか!」


 水奈ちゃん、噛んでる噛んでる。


「犬神、お前が俺の書いた物語を絶賛してくれている事は分かった。そんなお前に良いものをやろう」


 宏次先生は携帯を手にしている。あ! ストラップに手の平サイズの生首がぶら下がっている! ちょっと目がうざそうに見えるけど、とらじろうだ!


「それは!? とらじろう様の生首ストラップ!?」

「ただのストラップじゃないぞ? 見て見ろ」


 宏次先生は、生首を握りしめる。離すと……『まったりしていってね!!』と、生首から機械の様な声が出て来た。


「「「おおおおぉぉぉ! しゃべったー!!!」」」

「俺の寝首を掻かないと約束できるなら、この発売前の『限定とらじろうまったりストラップ』をお前にやろう。どうだ?」

「ははぁー仰せのままに」


 床に下ろされる水奈ちゃん。先生は自分の携帯のストラップを外して、水奈ちゃんの手に渡す。その時の水奈ちゃんの顔は、極上の笑顔だっただろう。その後ろ姿から、なんかもう身体中から花畑が放出されているみたいだった。


「犬神だけずるいぞー!」

「そうだそうだ!」

「心配しなくても、お前達にもお土産があるぞー」

「何々?」

「まずはこれ」


 教卓に置かれた箱詰めの蓋を開くと、小麦色の肌をした小さな人形が詰まっていた。緑の腰みのをしており、ハイビスカスの花の輪が首から掛かっている。


「なんですか? それ?」

「ハワイの人形焼きらしい」

「人形焼きって、これ肌の焼けた只の人形じゃない?」

「なんか間違っているよ! これ食べられないでしょ?」

「人形焼きって食べ物なのか? じゃあこれならどうだ? 萌えツタンカーメン。エジプトでは人気らしい」


 宏次先生は、こけしみたいなツタンカーメンを握りしめてクラスの皆に見せつけた。うーん。何だろう、率直に言うときもかった。


「なんでも、たき火の燃料で、皆で燃やしながら、『萌えー』と叫ぶらしいぞ?」

「燃えツタンカーメンじゃない!」

「先生、絶対騙されてるよ!」


 ざわざわ騒ぐ、教室中が静かになったタイミングで、小さな寝息が聞こえる。どうやら、私の右斜めの席の白兎君が机に突っ伏して寝ているみたい。それに気付いた宏次先生は、白兎君の席の隣まで来た。


「おお、長月? しんどそうだけど大丈夫か?」

「すぅ……すぅ……」

「体調が悪いなら保健室に行けよ」

「……うん……桜桃ちゃん……」


 やだ、白兎君、寝言で私の名前を呼んでる。恥ずかしいなもう。


「……すぅ……僕のパンツ返して……すぅ……すぅ……」


 ちょっと! どんな夢見てんのよ!? 私、白兎君のパンツなんか取ったことないよ?


「おい花見、パンツ返してやれよー」

「お前等、仲良いもんな! 昨日はお楽しみで? ぐへへへへ」


 名前すら覚えてない、モブキャラ的なクラスメイトに馬鹿にされている私って一体……。


「おい、者共、長月を保健室に連れて行けぇい」

「「「ははぁー仰せのままに!」」」


 墓川先生の一言に、ストラップで買収された水奈ちゃんを筆頭に、白兎君は沢山のクラスメイトに連行され保健室に連れて行かれた。保健室に連れて行かれる白兎君は、なにやら顔色が悪く見えた。まるでうなされているみたいに。


◇◇


 お昼休み。白兎君が心配なので、保健室に来た。保健室の先生は居ないみたい。ベッドに向かうと、寝ている白兎君とグニグニが居た。


「あれ? グニグニどうしたの?」

「桜桃か。丁度良いところに、どうも白兎が悪魔に憑かれているみたいなんだ」

「悪魔?」

「うん、夢魔と言ってね。夢の世界の住人なんだ」


 白兎君の寝顔を見る。凄く苦しそうに息を洩らしていた。


「どうやら眠り薬を使われたみたいだ。お願いだ桜桃、君の力を借りたい」


 眠り薬? そういえば、白兎君が眠る前に御煎餅を食べていた様な……。


「どうすれば助けられるの?」 

「近くで寝れば、夢の世界へリンクできるはずだよ」

「でも、こんなお昼の時間、全然眠くならないよ?」

「そういうと思っていいものを持っている。眠りの杖と言ってね。振るうと眠らせる効果があるんだ」


 そう言って、グニグニが手にしたのは、どう見ても木製のバットだ。


「それ、絶対気絶させるバットだよね!?」

「いくよー!」

「待って! 心の準備が!!」


 物凄い衝撃音が頭に響くと共に、私は気を失ってしまった。


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