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土喰い奉行

 柳谷と猪畑を領地化した際に、新しく奉行所が作れる様になっていたんだよ。関所を柳谷に移して、篠目谷の空き地に奉行所を作る。ジンちゃんが絵図でパパッとやってくれました。


 関所の実務は犬川一党に任せている。犬川一党の部隊は二人増えて十二人になったので三つのチームに分けた。三交代で関所に詰めているよ。


 ………………………………


 水野さんが奉行となって始めたのが土のサンプル収集。


「いままで異世界と繋がった事がありませんから。どんな病原菌があるのか分からない。検疫は必要です」


 そう言って、色んな場所の土のサンプルを集めては研究機関に送っていた。


「前にジイちゃんもやっていなかった?」


 ジンちゃんに確認してみたら、あれは草木や動植物などで水や土壌などの分析はしていなかったんだって。


 向井の庄だけでなく、柳谷や猪畑まで出かけ、嬉しそうにあちこちの土を試験管に詰めて回っているのを見て「土喰い奉行」ってあだ名が付いていた。あまりにも嬉しそうなんで、土を食べているんじゃ無いかって噂されているらしい。


 向井の庄ではそんな噂から変なあだ名が付いたぐらいで済んでいたのだが、日本では予想外な影響が出ていた。


 ………………………………


「ほら、黒鎌奨学金の対象者で農学部へ行くのが何人か出るって話ししたでしょ?水野さんも本当は農学部へ行きたかったんだって。でも色んな事情で法学部に進んだんだ。そして趣味でバイオ技術での土壌改良を研究しているんだよ……」


 ジンちゃんが遠い目になっている。


「東京近郊の在来菌とかを熱く一晩中語られてもね……」


 ……一晩付き合ったんですね。御愁傷様です。

 その日、一晩語るだけ語った水野さんは元気に登庁して行ったそうだ。


 そんな水野さんだから、パートタイムとはいえ農政を見る事ができる奉行職に就けて大喜びしているんだね。水野さんは喜んでいるんだけど、水野さんの知らない所で影響が出ていたんだよ。被害者はジンちゃんだけではなかったのだった!


 政府からの出向組が相談があると言ってきたんだ。


「水野さんが元気なのは喜ばしい事なのですが……」

「もともと政府内でも、諜報機関に隠然たる影響力を持っている水野さんは注目されているんですよ。それが突然、ただの土を大量に持ち込んで分析を依頼したものですから、何か大掛かりな捜査が始まったと噂が立っているんですよ」

「サリンなどの化学兵器の調査には、土地の土壌調査は必須ですからね」


 オマケに、子飼いの山井くん達はその前からどこかに移動していて、噂になったばかりだ。


「そこから逆算で考えられたみたいで、僕らはどこかの組織に潜入調査しているんじゃないかって噂で、そこから大きなテロ組織が国内で活動しているんじゃないかって話になっいて……」

「たまに霞ヶ関に顔を出したら、内調やら公安やらの知り合いに色々と問い詰められるハメになりまして……」

「こちらとしても、魔法使いとか異世界とか普通に言えない事を抱えているわけですからね。話せない事があると見ると余計に探りたくなるのは人のサガなんでしょうけど、向こうも秘密を探るプロなんで大変なんですよ……」


 出向組の四人も苦労しているみたいだ。水野さんが生き生きしているのに反比例するするかのように生気が無くなっている。


「まあ、向井の事情は少しずつリークしているので、その内に収まるとは思うんですがしばらくは嗅ぎ回る人が増えるでしょうね」

「ふーん。じゃあさ、そこから他の魔法使いに辿りつけるかな?」


 オレが軽く聞くと、山瀬さんが答えてくれた。


「まず、無理でしょうね。ただ、そうやって漏れて行った情報から反応はあるかもしれません。今でも監視していますが、どうも魔法使い関連で情報を収集していると思われる反応があります。ただ、コレが私たちのエコーなのかも知れないので、慎重に分析しているところですが」


 結局、噂が巡って動揺した国内の組織が一つあり、内部抗争に発展して自滅したそうだけどオレたちの生活には影響なかったです。


 ………………………………


 水野さんの土壌サンプルだが、日本の在来菌と変わらず、新規のバクテリアなども見つからなかった。


「これで検疫の必要もなく農作物の輸出入ができる。よかった。よかった」


 口ではそんな事を言っていたが、新しいバクテリアを発見出来ずにガッカリしているのを知っている。

 奉行所の水野さんの机に書きかけの論文があったんだよね。


「まあ、そのうち日本にも発表出来るような事も出て来ますよ」

「ありがとう。タッちゃん。よく考えたら、今の時点では、こっちの世界の発見を向こうで発表する訳にもいかなかったね。自分でも気がつきませんでしたが、舞い上がっていたんでしょう」


 反省反省と頭を掻く水野さん。


「オホン。それはそれとして、日本からの支援は最低限にする方針ですが、医療品や乳幼児向けの食べ物などについては特例としてもらえませんか?」

「うーん。どうかなぁ。技術支援はいいけど、医療品は巫女様との相談が必要でしょう」

「既得権益者との調整ですね。それは配慮します」

「いやそうじゃなくて、コッチには魔法があるからね。骨折とか魔法でくっ付けちゃうんだよ」

「は?あ、ああ魔法か、それがありましたね」

「ゲートを通る分だけしかない訳だから、大して影響は出ないと思うし、持ち込むのは良いけど」


 医療支援については後日、巫女様のところと相談する事になったよ。




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