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関所開き

 柳谷の騒動から色々とあったけど、権兵衛さん九兵衛さんの手配で近隣の村々から農業研修生が来る事になった。元々声を掛けていた所以外からも参加したいと申し込みがあったそうだ。


 それはつまり外から人が来るわけで……。


「はい、こちらにお並びください!」

「これが通行手形となります。これを無くすと向井の庄にいる事が出来なくなります。再発行には手続きが必要になるので、無くさないようにして下さいね」

「こちらで身体検査をします。お並びください!」

「荷物はこれだけですね!」

「はい、次の方ー!」


 関所のコボルド達が張り切っている。今日は非番の隊員達も出てきて手伝っているよ。

 コボルド達達なんだけど、フミエさんと職人長屋に来た有希乃さんにブラッシングやトリミングの指導を受け、フワフワのモフモフになっている。野良犬が愛玩犬になったぐらいのイメージチェンジだ。


「みんな、張り切っているね」

「実質、今日が関所の初日みたいなもんだからな」


 オレとカッちゃんも関所に詰めて、犬川一党の働きを見守っているよ。五十川くん達と犬川一党は、関所に人が来た時のためにいろいろ訓練して来たんだ。


 今迄は九兵衛さんの家族くらいしか訪問がなかったからね。外の人達との交渉は九兵衛さん家で行っていたし。


 あ!関所の場所は篠目谷のままだよ。まだ人員が足りないのです。


 柳谷と猪畑には砦という名のヤグラが立っている。櫓ってより足場を四角に組んで幕を巻いただけの物だけどね。

 それでも転移が出来るので、何かあっても直ぐに駆け付ける事が出来るようになったよ。


 もう、前回のような騒動は懲り懲りだからね!


 …………………………


「関所を通った方々はこちらにお並び下され〜!」

「皆が揃ってから、宿へと行きますからな!」


 今日は九兵衛さんや権兵衛さんも来ている。二人は今、関所を通った研修生達を並ばせている。


 今回の研修のために、関所の隣に宿屋を建てた。研修生達の寮として使うんだ。

 もちろん、庄が発展して来たらそのまま宿屋として使う予定。


 研修生達は近隣の集落から集められた若者達だ。中にはオッさんも混じっているけど。

 初回は二十名の研修生が集まった。権兵衛さんのようなオークやコボルド、ゴブリンなどもいるよ。半分は人間だけどね。


 彼らは二週間の間は研修を受ける。それぞれ事情が違うので、その後は自分の村に帰ったりそのまま研修を続けたりする。


 一応二年間は研修生として通用する手形を渡している。自分の村に戻ってから聞きたい事が出来て戻ってきてもいいようにね。


 …………………………


「じゃあ、自分の部屋に荷物を置いたら食堂に集合してね」

「タミさん、この子の案内お願い!」

「はーい!そこのゴブリンさんね。お部屋まで案内しますから、ついて来て下さいね」


 犬川一党の女性達がこの宿を切り盛りする事になっている。彼女達も将来ここが本格的な宿屋になっても大丈夫なように、今のウチから訓練するんだって。


「タミちゃん、次はこの子ね!」

「はーい!」


今はフミエさんが手伝って色々と助言している。なんだか犬川の女の子達が逞しくなりすぎない様にしてね?


「若殿様?何言ってるんですか?女手ひとつで生きていける迄、仕込みますよ?だいたい男なんてのは、自分一人で生きて行けりゃあ何とかなるとしか考えませんがね。女の場合には、子育て含めて考えているんですよ。自分と子供合わせて生きていける様にってのが女手ひとつってことなんですよ?そりゃあ甘っちょろい男どもにしたらシビアなんでしょうけどね!」


うわわ!フミエさんの地雷を踏んでしまったらしい。


「フミエさん!かんべん!かんべん!チャンと育児施設も考えているから!」

「あら?アタシとした事が。育児施設に付いては、後でゆっくり話を聞いて貰いますからね!」

「は、はいぃ」


 …………………………


「随分と人が押し寄せて来ているらしいの」

「そうだね。これで向井の庄に住み着いてくれる人が出て来てくれると嬉しいんだけどね」

「この子達が大きくなる頃にはたくさんの人が住み着いているじゃろう」


今、オレはフミエさんからなんとか解放されたので、癒やしを求めて犬川の集落に来ている。

三つ子ちゃんをあやしているんだよ。赤ちゃんって、なんで可愛いのかな?


「おー、コッチを見とる。どうじゃー?ジイちゃんですよー?」

「ふふふ、まだよく見えてないハズなんですけどね」


お母さんのシノさんも一人抱っこしている。


「篤弘様と黒丸も抱っこしてみますか?」


さっきから篤弘と黒丸が縁側から覗き込んでいたんだよ。赤ん坊が気になるらしい。

でも、シノさんに声をかけられたら怖じ気づいたらしい。


「ううん。いい!また今後ね!」


そう言って、二人で逃げて行ってしまった。


「あらあら、声をかけない方がよかったかしら」

「なあに。まだ恥ずかしいんじゃろう。それより、足りてないモノは無いか?」

「いいえ、お城の皆さんからも色々と頂いておりますし、使い切れないくらいですよ」

「そのうち、他にも赤ちゃんが生まれるだろうしね。余ったらその時に使えばいいよ」

「そうですねえ。このまま平穏に過ごせれば来年にはたくさんの赤児が生まれるかもしれませんねえ」

「そうなる様に頑張りますよ!」

「たっくんの事じゃから、ぼちぼちで行くんじゃろうがな」

「それはそうだよ。無理しても無理しなくてもどこかで躓くもんでしょう?急いでいたら躓いた時に対処出来ないじゃない。のんびり確実にがオレの基本方針なんだよ」

「まったく、サボる言い訳だけは一人前じゃのう。ほれ、ジンが迎えに来ているぞ。何ぞ決裁が必要なんじゃろ。現役はサッサと働きに行けい!」


しょうがない。充分赤ちゃんは堪能したからね。もうひと働きして来ますか!



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