向井の領とその周りを調べて見ました。
柳谷と猪畑が新しく向井家に加わった。
なんだか、ドサクサに紛れて領地を広げた様な気がしないでもないが、これで西奥多摩の東側は向井家が最大の勢力って事になった。まあ、かなりローカルな話なんだけどね。
勢力圏を奥から順番に言うと、一番奥が犬川一党の集落。そこから川沿いに降って黒鎌城。さらに降って関所がある篠目谷。だいたいこれが徒歩で一時間半ぐらい掛かる。
さらに篠目谷を出て多摩川との合流点近くに柳谷が有る。これも魔法の絵図で道を描いた結果、徒歩で一時間弱で行ける様になった。柳谷から多摩川を遡ると猪畑へと行ける。猪畑へはまだ図面での道は引いていない。権兵衛さんとケンじーちゃん達がどうやって道を引くか調査中なんだ。
図面で引いた道はかなり歩き易くなったとは言え、日本で言えば整備されたハイキングコース程度の物。人が一人通れる程度の細い道だ。階段も無いので、かなりグネグネと曲がっている。カッちゃんはもっと手を入れたそうにしているけど、ジイちゃんに止められている。
「そのうち往来が増えて道が荒れてきたら手を入れりゃええわい」
「今の所、崩れそうな場所も無いしね」
「それは、わかっているんだけどな。どうにも血が騒ぐというか……」
カッちゃんがまだ何か言っているけど、放っておこう。
「それで、ジンちゃん達の調査結果はどうなったの?」
ジンちゃん達文官チームは、巫女様や権兵衛さんなどにこの世界について色々と聞き込みをしていたんだ。メンバーは、ジンちゃん、ケンじーちゃん、山井くん、杉原くんの四人。ケンじーちゃん以外は調査はお手の物だものね。
「うん、まずはこの世界から。聞いた範囲でしか無いが、どうやら朝廷らしきものはあるらしい。場所は京都かどうかはわからないけどね。それで、行政区分は五畿七道だ。東海道とか北陸道ってやつだね。武蔵国が東山道扱いになっているんで、大宝律令制定からほぼ変わっていないと思われる」
うーむ。さっぱり理解できません。カッちゃんも首を傾げているから、ジンちゃんが難しすぎる言い方をしているんだろう。ジンちゃんはこちらの顔色を見て、全然理解していないのが分かったのだろう。わかり易く言い直してくれた。
「千年以上昔の呼び方そのままって事」
「へー。なるほど、分からん」
「まあ、ここいらが、武蔵国の多摩郡だって分かっていればいいよ」
「それなら分かるよ!」
ジンちゃんが微妙な笑顔になっている。
「日本の律令制時代と同じなのは郡ぐらいまでで、細かい地名は一致し無いんだけどね」
「ふんふん」
「東京と江戸の違いみたいなものだから慣れれば問題無いだろう。取り敢えず、僕からはこんな所だ」
ジンちゃんが話を終えて座ると、山井くんが立ち上がった。
「では、次はワタクシ山井が住民について報告します!」
山井くんは近隣住民について調査していた筈。
「はい。向井の庄の周りで確認されたのは、いわゆる人間。これは今の所黒髪黒目の日本人のみですね。次が、コボルド、オークと言った獣人種。こちらはクマ、キツネ、ネコ、タヌキなど雑多な獣人が確認されています。最後にゴブリン、オーガ、ドワーフ、エルフと言った精霊種がいるそうです。ゴブリンは見かけましたが、その他の精霊種に関しては近隣では確認されていません!」
「コボルドとかオークって精霊じゃなかったっけ?」
「この世界では獣人にその名が付いていますね。そう呼ばれているって事で、何故かってのは調べていません。日本との交流が活発になるのなら誰かが調べてくれるんじゃ無いでしょうか。統治するにはどんな人が居るのかが分かれば十分ですからね!」
「ふーん。そんなモンなのかなぁ」
「精霊種などという種別分けもこの世界のものです。二カポさんから教えてもらいました!」
「そう言えば、この世界、ドラゴンとかは居ないの?」
「超越種、と言うのがいるそうです。が、巫女様や二カポさんの様な神官がかろうじて接触出来る様で、実生活には殆んど関わらないそうです。何かの拍子で怒らせてしまえば酷い被害になるそうですが、天災扱いみたいですね!」
山井くんがそこまで説明すると、杉原くんが後を引き継いだ。
「そこら辺を含め、確認されている脅威は僕から報告します。先ずは各種族ですが、武器は刀剣が主で飛び道具は弓弩ですね。弩を見せてもらいましたが、伝統的な機構で科学的な要素はありませんでした。火薬は黒色火薬が既に使われていますが、質が悪く、爆発というより激しい燃焼と言った方がいいでしょう。棒火箭というペンシルロケットの大きい版みたいな物で敵の砦に火を付けるのに使われている様です」
「ふんふん。武器はそんなに発展していないって事かな?」
「その通りです。と、言うのも大きな争乱となると超越種が出て来て、敵味方無く殲滅されてしまうそうです。大きな統一勢力が出来なかったのもそのせいらしいですね」
「戦争が始まると天災が起きて停戦になってしまうって感じなのかな」
「そうですね。そんなイメージです。ただ、戦が無いのかと言うとそうでも無い様です。過去には百万の軍勢同士の戦争も記録されているそうです。どうも超越種にも介入するルールがあるんじゃ無いかと思いますね」
ここでジンちゃんが話を引き取ってまとめる。
「その他、魔法についても微弱な物ばかりだった。どうやらこちらの住民は魔力に限りがあるらしい。生活に使う程度で、戦争はもちろん、土木作業などの大掛かりな事に魔法を使うって発想は無い。ただ、巫女様の様に医療に関する魔術はかなり発展している。ガンを消し去る魔法なんかもあって、現代の医療より進んでいる部分もある。それ以外は中途半端に便利な魔法のせいで科学的な発展が阻害されている様だね」
「今分かっているのはこんなもんか。オレ達としては淡々と多摩郡の開発を続けて行くって事でいいんだよね?」
「ま、そういうことだね」




