やっと周りを探索
「そろそろ12時じゃ。太陽が真上にあるんでおかしな感覚じゃが、真夜中じゃ。そろそろ戻ろう」
「うん、なんか時差ぼけっぽくなってきたかも。帰ろう!」
周囲の雰囲気は掴めたので、今日は帰ることにする。
この物語は30童貞のおっさんが日本と異世界を行きつ戻りつする物語です。
不定期更新なので、暖かい目でご支援ください。基本的褒められて成長するタイプです。
さてさて、誕生会は終了。
ジンちゃんやカッちゃんは例年どうりにオレを連れて呑みに行きたそうだったけど、ジイちゃんが声をかけてきた。
「おう、ジンちゃん、カッちゃん。今年は、たっくん抜きで頼む。これで、若い衆連れてっとくれ」
不思議そうな顔をする2人へ、封筒を渡して送り出す。
「まあ、たっくんもウチを継ぐ覚悟が出来たようじゃしな」
「は、はぁ」
「まあ、古い家はいろいろあるんじゃよ」
「そうなんですか???」
「なるほど、向井家の当主のみの秘密なんですね!」
ジンちゃんはまだ不思議そうな顔をしてたけど、カッちゃんはなにやら勝手に納得して、みんなを連れて出て行ってくれた。
どうもカッちゃんは、伝説の何々とかが好きで、向井家にも何か期待しているみたいなんだよね。
まあ、魔法が使えるようになったなんて言っても信じて貰えないだろうし、秘密には違いない。
篤弘は、誕生会ではしゃぎすぎたようで、すでに寝てる。
ステージの前で踊りっぱなしだったからな。
「さて、やっと、蔵の向こうに行けるのう」
やっぱり。宴会からちょろちょろ抜け出していたのは、なにやら探検の準備をしていたらしい。
ジンちゃんは、力関係云々って言ってたけどね。
曰く、オレの誕生会なのにジイちゃんだけに挨拶して帰って行く奴もいる。例年何人かいるんだけどね。オレが向井家を継いだ事を示して、オレへ挨拶をするようにわざと隠れているとか。
結局、ジンちゃんもジイちゃんに騙されているんだよ。
さて、みんなが帰ったのを確認して、土蔵スタジオに入る。
ゲートと唱えると明るい風景が広がる。
「ふむう。今度は昼間なのか」
ジイちゃんは時計を拾い上げると時刻を確認する。
スタジオの時計と比べてもズレはない。
「どうやら時間の流れは同じようだのう」
「そうだね。ただ、夜昼が逆転しているみたい」
「そうかもしれんの。おいおい確かめておこう」
次はゲートの調査だ。スタジオの中からドラムのスティックを突き出してゲートを閉める。
スティックが鏡に埋め込まれた様に見えたけど、その先が、無かった。
何の手ごたえも無くスティックが切れていた。
ゲートを開くとスティックの先が落ちていた。
「うわ!ちょっと!こわ!」
「うむむ、これは、ゲートを開け閉めする時は気を付けないといかんな」
「うーん、部屋の中から命綱をつけて行くつもりだったんだけど、これじゃあ無理だね」
「まあ、時間のズレは無いからすぐ外の木にでも縛り付ければ大丈夫じゃろ」
「そうだね。さて、次は向こうから開くか確かめてみないとね」
オレがスタジオから出ようとするとジイちゃんが、止めた。
「たっくん、ちょっと待って。わしも出来ないかやってみるから」
ジイちゃんがそう言うので、ゲートを閉めて後ろに下がる。
ジイちゃんは鏡の真正面に立つと、なにやら怪しい呪文を唱え出した。
「アブラカタブラ、扉よ開け!チチンプイプイ!」
開いた!えー!何それー!
「ホッホッホ!開いたのう。たっくんが開け閉めしているのを見てたら何と無くコツが伝わって来たんじゃ!」
ジイちゃんは嬉しそうにゲートを開け閉めしてる。うーん、チートジジイめ。
まあいい。いろいろ試してみたら、オレが開けたゲートをジイちゃんが閉める事もできた。逆も出来た。外からの開け閉めも問題無かった。
「まあ、ゲートについてはこれぐらいでいいじゃろう」
「うん、大丈夫そうだね」
「あとは周りなんじゃが…」
ジイちゃんは周りを見渡す。オレも周りを見渡すのだが、どうも気になる。
「じーちゃん、オレ、何となく見覚えあるような気がする。あそこの山とか権現さんの山みたい」
「たっくんも、そう思うか。向こうの山も造成前の山に似ている気がするんじゃ」
「うーん。もしかすると、ここはウチの蔵が建っているとこなのかな?」
「じゃが、この蔵以外の建物は無いのう。ほら、そこの井戸も無い」
迷子にならないよう、ロープを伸ばしながら周りを探索する。
家の裏手となる方向に進む。日本と同じなら、そこに小さな川があるはず。
元の世界では、コンクリートの水路になっているけどね。
「あ、川あった。どうやら人の手は入って無いけど、地形はウチの周りそっくりだね」
「不思議な事もあるもんじゃな。だが、ウチの地形図が使えるとなると便利ではあるのう」
「あんまり過信もできないけどね」
「そうじゃのう。ま、そこらへんもおいおい確かめていけばええじゃろ」
そんな話をしながら周りを確かめて行く。ロープが届く範囲まで進み、巻き取りながら戻り、また別方向へ進んで行くのを繰り返す。
「そろそろ12時じゃ。太陽が真上にあるんでおかしな感覚じゃが、真夜中じゃ。そろそろ戻ろう」
「うん、なんか時差ぼけっぽくなってきたかも。帰ろう!」
周囲の雰囲気は掴めたので、今日は帰ることにする。