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向井の庄の輸出品

 五十川くんの提案をジンちゃん達に相談してみた。


「それは難しいな。日本に戻って仕事させるのも、それを見られたら不味いだろうし」

「うーん。そうかぁ」

「例えば、カッちゃんが車を持ち上げ運ぶ仕事とか請け負え無いだろう?もし請け負うとすると、その隠蔽工作で又コストがかかるからね。よっぽどのお金持ち相手じゃ無いと仕事がもらえないよ」


 そうすると、人の輸出は無理そうだね。


「将来はわからないけど、今は無理だね」


 うーん。スキルを使った輸出産業。良いところを突いていると思うんだけどなぁ。


「ふむ。一つアテが無い事も無い」


 ジイちゃんの提案は、職人街を作ってみてはと言うものだった。


「先ずは知り合いに一人、偏屈な刀鍛冶がおる。あいつもそろそろ年じゃらからの」


 鍛治なら、体力が必要になるし、若返りも出来る向井の庄はうってつけだろう。

 早速、ジイちゃんに説得を頼む事にした。


 刀鍛冶の名前は斎藤さいとう文彰ふみあきさん。82歳。

 二年前に体力を理由に鍛治を引退したんだそうだ。刀一本で生きてきたので、すでに身寄りもいないとの事で、条件に合っていた。


 ジイちゃんは、若返った事を見せてから、向井の庄の事を打ち明けたそうだ。

 斎藤さんは、直ぐに承諾。鍛治道具ごと引っ越してきた。


 ここで困ったのが自動ハンマーなどの工作機械だ。まだ向井の庄の電力はソーラーパネルしかない。電力が足りないのだ。しかし、ここでコボルドの一人が名乗り出てくれた。村鍛治をやっていたのだそうで、斎藤さんの手伝いをしてくれるという事に。


 斎藤さんの工作機械は日本に残し、どうしても使いたい場合は日本に戻って来て作業する事になった。


「まあ、刀の仕入れに業者が訪ねて来る事もありますから、その時は、この工房で対応しましょう」


 斎藤さんは、笑いながらそう言ってくれた。


………………………………


「向井の庄に入って、一週間ですが、驚くほど体調が良いんですよ。刀を使ってもらえると実感できたのも良かったのかもしれませんね」


 そう、斎藤さんの刀は犬川一党にも支給される。まだ、お金が無いのでこれからの話になるんだけどね。五十川くん達も刀と槍を作ってもらう事になっている。斎藤さんはやじりにも挑戦したいなどと言っている。ずいぶんとヤル気になっている様子。


 斎藤さんを皮切りに、徐々に職人さんが集まってきた。最初は斎藤さんのツテでスカウトしてもらうことにした。条件は世捨て人になる事。


「もともと、世捨て人のようなものですよ」


 そう言って向井の庄に来てくれたのは、刀のつかなど作る職人さんだった。少しずつ人が増えてきたので、向井家のそばの空き地に工房長屋を作って、作業は向井の庄で、取引は工房長屋で行う様になったんだ。何人もの職人さんが消えたと騒ぎになるのも不味いしね。


「やっぱり、向井の庄で作業している方が、若返りが早いですね」

「ワシなんて屋根に飛び乗れる様になったよ」

「何やってるんだ、お前は。俺は素材の選別で鑑定魔法が使える様になったよ」

「ああ、この魔法便利だよな。それにレビテーションも楽で良いよ。細かい作業の時なんか、空中に浮かせといて両手が使えるんだ」

「あら、私なんてレビテーションで紐が結べますよ。針に糸を通すのも楽になりました」


 皆さん、年を取っていう事を聞かなくなった体が思い通りに動き様になり、長年培ってきた技を存分に揮える様になって嬉しいらしい。おまけに魔法が使える様になった。オレみたいな強力な魔法じゃ無いけど、仕事の助けになるちょっとした魔法だ。最近は、夜ごと集まってはワイワイ騒いでいる。


「あー。皆さん。皆さんにとっては夜の9時ですが、日本では朝の9時ですからね?側から見たら、朝から宴会してる様に見えるんですからね!」


 もともとが、周りの事より自分の技って生き方をしてきた人達なので、結構周りを気にしない。オレが注意しても、どこ吹く風だ。


「あー、引退したジジババなんだから朝から飲んでたって問題無いよ。今作っているのは引退後の趣味みたいなもんだからな!アッハッハ!」

「もー、みんな酔っぱらいだと始末に負えないよ!」

「ギャハハハハ!」


 まー楽しそうだし、工房長屋は他からは離れているんで放っておくか。


 しばらくすると斎藤さんの刀が刀剣愛好家の間で話題になり始めた。姉ちゃん達の高級ホテルでセレブ向けに販売したりしていたんだけど、セレブな刀剣愛好家のネットワークって世界的なものらしい。わざわざ刀を買うためにホテルを訪れる人がいるらしい。奥多摩に来られても困るので、職人さん達を交代で姉ちゃんのホテルへ派遣する事にした。


「この歳で飛行機に乗る事になるとは思わなかったよ」


 そういいながらも楽しそうに出張しに行ってくれた。姉ちゃん達のホテルも気に入ってくれて、次の出張を楽しみにしている。


 斎藤さんの刀は高額なので、一本売れたら結構な赤字分が取り戻せる。ただ、今のところは材料はすべて日本のものなので、斎藤達はたたら場を作って玉鋼をつくるのにも挑戦したいんだって。


「そういえばさ、ゲートの魔法でホテルとつなげられないの?」

「あ!」


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