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初めての住人

「よーし、とってこーい!」


 オレが投げた小枝をチビッコ達が歓声をあげながら追いかけて行く。二三人転んでいるのもいるが、すぐに立ち上がって、走り出す。元気なものだ。


 オレたちは、あの後、関所まで転移して、彼らを受け入れた。彼らって言うのは、食い詰めた集落の住民たちだ。今は、あらかた治療も終わり、みんなのこれからの事について、話し合いをする所だ。ジンちゃんも駆けつけてくれて、横にひかえている。


「で、村長。みんなでこの向井の庄の住民になるって事でいいんだね?」


 振り向いて村長をみると、村長はオレが投げた小枝を凝視している。


「村長?」

「あ、いや、失礼いたしました。若殿様。本当にこの土地に住まわさせていただけるので?」

「ああ、ここはまだ誰も住み着いて居ないからね」

「ああ、ありがたいこってす。大殿様に拾われた命でございます。どうぞ、若殿様の好きなようにお使いくだせい」


 村長とその後ろに控えていた大人達が、へへーと言って土下座する。


 うーん。こういうの時代劇とかでやるのかな?よく見ないからわからないけど、それっぽい。


 ただ、土下座している人達が二足歩行の犬だって事が無ければなんだけどね。


 そう、食い詰めた集落はコボルドの集落だったのだ。この世界が異世界だって思い知らされたわー。ジイちゃん達がいなかったら、オレ、何していたか分からないよ?


「まあまあ、取り敢えず、顔をあげて」

「へ、へい!」


 手を付いて見上げていると本当にワンコみたい。


 この世界では、コボルドやゴブリンなども普通の住民として暮らしているのだそうで、人間とも交流がある。だだ、普通はよっぽどの都会か辺境の開拓地でない限りは別れて暮らしているとの事。


 コボルドも文献によって色々な姿で書かれるけど、この世界では犬の人なのだ。コボルドらしいところは、穴掘りが得意な所か。狩りも得意らしい。犬なので。反対に農作業は不得意で、ちょっと天候不順だったりすると、すぐに不作になってしまうらしい。


 話を聴いていると、チビッコ達が帰ってきた。魔法も使ってかなり遠くまで飛ばしたんだが、結構早いな。


「よーしゃ、よしよし」


 枝を持って一番に帰ってきた子からモフってやる。大人達が羨ましそうに見てるけど、まだお話しは済んでいませんからね?


 でも、このままだと話が進まないので、棒投げはカッちゃんに任すことにした。

 オレもまた後でやらせてね。


 彼らは農作業が苦手な分、飢えには強くてオレが心配したよりも元気だった。妊婦さんや老人などもいたので、それなりに物資も役立ったんだけどね。


 さて、彼らの処遇なんだが。まずは、連れてきたジイちゃん達に聞こう。


「うむ。それなんじゃが、襲われた村の方にも聞いたのじゃが、警備に雇ったらどうかと勧めておった」

「ああ、主人を定めれば忠誠無比で、自分の命を捨てても主人に尽くすって性分らしい。あそこの集落も、彼らが達兄に従うのを見て大丈夫と思ったようだったね」


 コボルド達の内訳は、全部で40人。ジイちゃん達が言葉に詰まっていたのは、数え方でとうなのかひきなのかにんなのか迷っていたらしい。知性があって話し合いができるんだから、にんでいいじゃんね。大人が30人。ただし、20人は年寄りや女性だ。とりあえず、5人づつの2隊で関所に詰めてもらおう。


 細かい決まりは、例によってジンちゃんに迷って丸投げしようっと。


「ああ、そうなると思ったよ。まあいい。僕が城代のジンだ。君たち、読み書きはできるの?」

「へ、へい。一応、主だったモンなら、ふみを書くぐらいはなんとか。名前ぐらいなら全員書けますが…」

「そうか、結構識字率が高いのかな?じゃあ、年寄りや女性で読み書きできるのはこっちに来て!」


 ジンちゃんは持ってきたノートと筆ペンを渡して文字を書かせ、確かめている。

 コボルド達は墨をつけずに文字が書ける筆にビックリしているぞ。


 文章を書かせた結果、元村長とその娘ともう一人が事務を担当することになった。まだ、事務が必要な仕事もないのだけど。


「彼らの戸籍から作って行くよ。他にも明文化しておくものもあるしね」


 ………


 行政のことは、ジンちゃんに任せておきましょう。オレはみんなに棒投げをしてあげる大事な使命があるんだよ!


「ジン様もご苦労なされているようで……」

「分かるか……」


 なんだか、意気投合しているようで、良かったね!


「「はぁ……」」



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