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ジイちゃん達の帰還

 山井くんは、しばらく忍術の練習をしてから帰って行った。

 探し物に便利な「サーチ」や、透明になる「隠身」など、ニンジャらしい魔法に大喜びしていたよ。


「アハハハ!それでは、これで、サラバでござる!ニンニン!」 ボウン!


 山井くんはニンジャらしく、煙幕を張って消えて行った。これから毎回コレやるのかな?


「ゲホゲホ……ちょっと、早まったかもしれないね。ジンちゃん」

「…………僕も、焦っていたのかも……」


 今日は、午後から老人ホームで慰問のマジックショーをやりに行って、夜はカッちゃんとソーラーパネルの設置の予定。早ければジイちゃん達が帰ってくるかもしれないし。


「僕は、図書館でなるべく古い地形図がないか探してみるよ」


 人員の増やし方とかをちょっと相談してから、ジンちゃんも帰って行った。


 お昼を食べていると、ミワちゃんがやって来た。実は今日のマジックショーのアシスタントをミワちゃんにお願いしていたんだ。


「こんにちは〜!あ、まだ食べているんだ」

「いらっしゃい。今日は朝から忙しくてさ。さっきまでお客さんがいたんだよ」

「ふーん。あ、コレちょーだい」


 オレの向かいに座ったミワちゃんは、オレの皿からキウイフルーツをつまむとそのまま食べてしまった。


「あぁ!」

「んっ!美味しい!これは浅田さん家のキウイね。酸味と甘みがちょうどいいバランス!」

「おー。正解。さすが、つまみ食い女王だけはあるね!」

「あー!ナニ!その称号!」


 俺たちが騒いでいると、奥からフミエさんが顔を出した。


「なんだか騒がしいと思ったら。ミワもお腹空いているなら、ゴハン出してやるから大人しくしてなさい」

「大丈夫ですよー。お昼は食べてきました!」

「じゃあ、お茶出してやるから、待ってなさい」

「はーい」


 オレとミワちゃんはフミエさんのお茶を貰ってから、老人ホームへ出かけたのだった。


 老人ホームへの慰問は、これが初めてではない。家で婦人部相手にナンチャッテマジックショーをやっていたのを聞いた社協の人が声をかけてくれたんだ。それまでも老人ホームへ季節ごとに挨拶しに行ったりしてたんで、顔見知りの場所ならばってことで、引き受けたんだよ。


 もちろん、慰問でやるマジックは、魔法を使わないヤツ。マジックの道具を購入して練習したんだ。ステッキが花になるとか、シルクハットからスカーフが大量に出てくるとかの定番モノだ。

 こういうよく見る方が、拍手のタイミングもわかりやすくていいみたい。


「はーい!それじゃあ最後のマジックですよー!ハイ、このスカーフ。種も仕掛けもありません!」


 マジックショーも順調に進み最後のネタ。スカーフからボールを取り出すってマジックに挑戦する。


「ハイ!この通り!」


 ピンポン玉を出しただけで、みんな大拍手してくれる。でも、ここからが腕の見せ所なんだ。


「はーい!ハイ!」


 次は大きめのマリを出す。みんな次があると思って見なかったようで、ビックリしている。


「まだまだ行くよ〜!ハイ!ハイ!ハイー!」


 最後に、両袖と背中に仕込んだ花束を抜き出して広げて掲げると、みんな大喜びしてくれた。


 実はコレ、フミエさんの提案で、最後はたたみ込むようなタイミングで見せるようなマジックをって言われたんだ。

 途中で失敗しても最後だけはしっかりやれば、上手なマジックショーだと思ってもらえるからって。このマジックだけは失敗しないようにみっちり練習してきた。

 実はこのマジック、アシスタントの動きが重要なカギを握るマジックなので、ミワちゃんにもずいぶんと練習に付き合ってもらったんだ。


 帰りのクルマの中でもミワちゃんは大はしゃぎしていた。


「タッちゃんすごい受けてたね!」

「うん、ミワちゃんのサポートのおかげだよ。みんな、ミワちゃんの動きに気が付いていなかったんじゃないかな?」

「うん。お客さんに気が付かれずに動くって大切さが分かった!多分、フミエさんはこれを教えたかったんだと思う!」


 ミワちゃんは何かをつかんだ様子。


「次のステージでは、この動きを取り入れて、もっとメリハリのあるダンスにするわ!」


 あ、あれ?マジックショーはどこかに消えて、新しいダンスに燃えているみたい。


「タッちゃんも絶対に見に来てね!タッちゃんが来るとチケットのハケもいいんだよ!」


 フミエさん……、タッちゃんミワちゃんのマジックショーはしばらくお休みのようです。


 ミワちゃんを送った後、ソーラーパネルの取り付けをしながら、カッちゃんに報告すると大笑いされた。


「アッハッハ!タッちゃんの春は遠いのう!」

「いや、そんな、ちょっとは期待したけどさ。今日のお昼なんか結構いい雰囲気だったと思ったんだけどなぁ」

「まあ、今はミワちゃんの方がその気がなさそうだなぁ。まあ、他にオトコがいるわけでもないみたいだし、今まではタッちゃんもアピールしていないんだろ?」

「まあ、そうなんだけどね。あっちはアイドルだったし、こっちは無職だし、意識してなかったんだけどさ」


「そうやってノホホンとしているから、背中を押してあげたんだけどねぇ」

「あ、フミエさん!」


 気が付くとフミエさんがお茶の用意をして後ろに立っていた。


「ハイ、お茶。ちょっと一息入れなさいよ」

「ありがとうございます。いただきます」


 オレとカッちゃんは神妙になってお茶を貰う。


「ミワもまんざらじゃないみたいだし、ここは、若旦那がしっかりリードしてやらなきゃダメよ」

「はぁ。頑張ります」

「全く、色恋が苦手なところは達造さんにになくても良かったのにねえ」

「へー、親方も色恋が苦手だったんですか?」


 あ、カッちゃんが食いついた。


「そうよ、嫁取りだって大騒ぎだったんだから!私も苦労したのよ」

「ほう、あの時、お前さんはかき回すだけだったと記憶しているんじゃがの」


「あ、ジイちゃんおかえり!」




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