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山井くん

 向井の庄から戻って来てから、翌朝一番で山井くんを呼び出した。

 ジンちゃんも一緒だ。

 早速、土蔵スタジオに入って、鍵をかける。


「いやー。急の呼び出しなんで、びっくりしましたよ!まあ、今は黒鎌所属なんで、時間は自由なんですけどね!」

「山井。それが、事情が変わった。これから、忙しくなるぞ」


 爽やか好青年の山井くんだが、ジンちゃんの一言で、キリリと表情を変えた。


「先輩がそう言うって事は結構切羽詰まっています?」

「いや、余裕が無いかというと、そうでもない。僕たちはね」

「僕達の中身はどのぐらいが入っているんでしょうか?」

「安心していい。山井も入っているからね」


 そう言って、ジンちゃんは向井の庄の話を始めた。異世界があるって事を。


「うーん。にわかには信じられませんが、向井さんの魔法も度々体験していますしね」


 山井くんとはあれからも会うたびにいろんな魔法を体験してもらっていた。

 あくまでもゲートの事は秘密だったし、能力が使えるのはオレだけって事になっていたんだけどね。もしかすると、他の国があの星を占領してしまうかもしれないからね。


「まあ、山井もこの事を公表できないのは理解できるだろう?」

「ええ、魔法使いってだけでも大騒ぎになるのが確実なのに、もう一つの地球ですって?人死にがでますよ」


 山井くんはオレをじっとりとした目で見て言った。


「向井さんの存在だけなら、誤魔化しようもあったんですがね。こんなのほほんとしている人が、世界を揺るがす秘密を持っているなんて。」

「まあ、山井。そう言うな。先ずは、今までのご褒美だよ。タッちゃん、見せてやってくれ」


 ジンちゃんに言われたタイミングで、ゲートを開く。鏡が消えて、夜の風景が現れる。


「こっから先が、向井の庄だ。映像じゃないぞ。ほら、外に出てみろ」

「え、ええ」


 山井くんはフラフラとした足取りで、向井の庄に出て行く。


「夜昼は逆転している。今はよく見えないだろうが、後で空からも見せてやる」

「い、いえ、信じますよ。僕の脳が壊れていない限り、ここは本物だ。さっきの土蔵の大きさで、こんな空間を作れるわけが無い」

「そうか。話が早くて助かる」

「それで、先輩。僕に何を調べて欲しいのですか?」

「先ずは、秘密を共有できる官僚だ。これは本来時間をかけて探さないといけないだろう。だが、時間が無い」

「うーん。これだけの秘密を抱え込める人間となると………難しいですね」

「うん。ここは焦ってはいけないところだ。気長に探すつもりだったが、積極的に探す事に変えたぐらいに思って欲しい」

「分かりました。今いる候補者の調査を進めます」

「うん。なるべくならこちらが勢力と言えるぐらいになってから政府と接触したかったけど、そうも言ってられないようだしね」

「事情が変わったと言ってましたね?」

「そう。他にも魔法使いがいる可能性が高まった。杞憂ならそれでいいが、戦争になるかもしれないからな」


 山井くんは、ついに耐え切れなくなった様子で、深い息を吐いた。


「ふー。深刻な事態になってきているんですね?」

「いや、これは僕が心配しているだけだ。だが……」

「備えあれば、憂い無し。ですね?」


 山井くんがニヤリとしながら、ジンちゃんのセリフを先取りした。


「先輩の口癖ですもんね。分かりました。それも調べて見ます。なるほど、これは僕だけじゃ手が足りない。人手が必要ですね」

「そうなんだ。僕の方でも探している。後でリストを渡すから、その評価もして欲しい」

「分かりました。そっちは通常の身辺調査でいいですね?」

「ああ、民間人だし、政治的背景はそれ程重要では無いからね。リーク先が読めればそれで充分だ」


 ジンちゃんと山井くんの会話はボクシングみたいだ。横で聞いているだけで息が詰まってくるよ。


「じゃあ、最後にご褒美だ。山井。ニンジャにしてやろう」


 ジンちゃんがオレへ目配せしてくる。実は、前もって話していたんだ。


「山井くん。黒鎌党の御庭番になる気はあるかい?」

「正式に向井さんの防諜担当になるってことですか?」

「それもあるけどね。ほら、僕は魔法使いじゃない?」

「ま、まさか。マンガみたいなニンジャのことですか?」

「まあ、鍛錬次第だけど、身体能力なら3階へジャンプ出来るぐらいにはなれると思うよ」


 ビックリしていた山井くんが笑顔になる。


「分かりました!山井直毅やまいなおき殿とのにお仕えします!」

「ふふふ、これからよろしくお願いするね」


 オレは山井くんを黒鎌城の御庭番に指名した。


「う?うわわ⁉︎コレは!」


 山井くんに知識が流れ込んで行く。初めはビックリするよね。

 ジンちゃんとオレは自分達の時を思い出してほっこりしてた。


「どう?ニンジャになった気分は?」

「まあ、術を試すのは後でゆっくりやってくれ。身体能力については、この異世界でトレーニングするだけで上がって行く。見てろ」


 そう言うとジンちゃんはその場で2回転のバク転を決めた。


「僕でもこれぐらいはできる。まあ、ジムに通うつもりで頑張ってくれ」


 これでニンジャを一人ゲットだね。あ、ケンじーちゃんがいたか。



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