向井の庄を鑑定
向井の庄って言うか、ウチの敷地だよね。日本の家と同じ形で盛り上がっているこの土地。
蔵とか生えていた植物とかは鑑定したけど、この土地の鑑定ってのはした事がなかったんだ。まあ、鑑定するにもコツがあって、上手く答えが返って来ない事もあるんだ。
例えば、ジンちゃんを鑑定すると、
【人(能吏:策士持ち)】
みたいに答えが出る。ん?なんか増えてる?
まあ、それは置いておいて、ジンちゃんの腕を鑑定すると、
【腕】って出る。
ちなみに、カッちゃんの腕を鑑定ってやると、
【腕(豪腕)】って出る。
てな感じで鑑定するときは、知りたい対象をハッキリさせ、見る範囲を意識しないといけない。
これ迄は、この盛り上がっている土地全体を意識して鑑定した事はなかったんだ。
「で、事後報告でもよかったんだけど、何だか分からない鑑定結果が出ても困るし、そこらへんに詳しい人がいた方がいいと思ってさ」
「まあ、どんな理由であれ、何かやらかす前に、僕を呼んでくれた事に感謝するよ」
「あ!それなら、カッちゃんにお礼言ってね!」
そう、功労者を教えてあげたのに、ジンちゃんは、ピクリと眉を動かした。コレは危険信号なんだ。カミナリが落ちる予兆。慌てて話題を逸らそうとしたけど、間に合わなかった。
「カッちゃんに、止められる前に僕を呼ぶ事!分かった?」
「はいい!」
久々に怒られてしまった。
「まあいい。これでこの土地が誰かの所有だったりしたら、面倒な事になるかも知れないからね」
「うーん。いろいろと手を入れちゃったからなぁ。今更持ち主が出てきて現状復帰とか言われたら面倒だな」
カッちゃんがブツブツと言いながら心配している。じゃあ、サクッと鑑定しちゃおう!
面倒な事は早めに分かった方がいいものね!
【黒鎌城(城主:向井達夫)】って、出たよ。城?
ビックリして城ってトコロに意識を合わせていたら、鑑定が働いたらしい。
【黒鎌城(初期状態)】ってなった。
この感覚は、結界石の時と同じだ。思い出すように、俺の中に知識が増えてくる。
「ええと、このお城は領地を発展させる事によって、成長させる事が出来ます。領地は、城主と城主に任命された管理人によって、開発が出来ます。って事なんだけど」
「ゲームか!」
うん、カッちゃんが突っ込むのもよく分かるよ。オレもそう思ったもん。
「まあまあ、ちょっと落ち着いて。タッちゃん、具合いは大丈夫?気持ち悪くない?」
フミエさんが心配してくれる。
「ええ、ちょっとフラフラしますが、気持ち悪くは無いです」
「昔から、詰め込みすぎると知恵熱出していたからなぁ」
「ちょっと、ジンちゃん?オレだって、もう30のオッさんなんだから、知恵熱はないでしょ!」
「うーん。知恵熱で寝込んだって言われたら納得しちゃいそうな感じもあるのよね」
「フミエさんまで!ヒドイ!」
みんなで笑って!オレがむくれていると、三人はまたその様子が可笑しいと笑い出した。
「ヒイヒイ、まあまあ。それはそれとして、タッちゃん。お城だって?」
笑いの発作がやっとおさまったジンちゃんが聞いてくる。
「うん、黒鎌城って名前だね」
「うーん。そうか。もしかすると、思っていたよりも深刻なのかも知れない」
「ん?どういう事?」
「お城ってなんのためにあると思う?」
「ん?普通は、せめてくる敵からみんなを守るためじゃない?」
「そう。お城が用意されているって事は、攻められる可能性があるって事だよね?」
ジンちゃんの指摘に、オレはなんだか足元が急に軟らかくなっていくような不安を覚えていた。
「今のところ、山井の情報網には他に魔法使いが現れたって話は引っかかってないけど、逆にウチの情報が漏れたって話も無いから、もしかすると他の魔法使いも上手く隠蔽しているのかもしれない」
「じゃあ、こっちの世界で会うのが先になるかも知れないのか」
「会うぐらいならいいけど、いきなり攻めて来られたらどうする?」
「うーん………」
オレとジンちゃんが、深刻になって考え込んでいると、カッちゃんが聞いてきた。
「でもよう。こんなところを攻めて何のメリットがあるんだ?」
「あ、そうだね。今、ココって森の中だし」
「ゲートが使えるだけでも便利じゃないの」
「あ、フミエさんにはまだ説明していなかったか。ここの鍵って向井家の男子しか使えないし、男系しか継承出来ないんですよ。つまり、タッちゃんの子供が出来ない限り三人しか開け閉め出来ないんです」
「開けっ放しにしておけばいいじゃない」
「コッチが開けっ放しだと、土蔵スタジオの出口が使えないんですよ」
「ああ、そういえば、そうだったわね」
黒鎌城についても城主の譲渡は血族しか出来ず、女城主は可能だが、相続は男系になる。考えてみると、ここを攻めとってもメリットがないね。やっと、明るい顔になったオレにジンちゃんが硬い顔で忠告する。
「でも、攻めないとデメリットが一つあるんだ。この世界を独占出来ない」




