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おしゃべりって楽しい

 直売所の店番をしていると、ミワちゃんがやって来て話しかけて来た。


「最近、フミエさんが若々しくなってきてさ〜」

「いい事じゃない。スタジオの運営任されて、生活にハリが出てきたんじゃない?」

「あー、それはいい事なのかもしれないけど、お稽古が厳しくなってきてさ〜」


 フミエさんも向井の庄で活動し始めて、徐々に若返って来ている。白髪染めが要らなくなり、髪の量も増えたって喜んでいた。それまでも踊りで鍛えた人らしい優雅な身のこなしをしていたが、最近は滑らかさが加わってきたようにも思える。

 ミワちゃんには向井の庄の事は秘密にしているのでとぼけておいた。ゴメンね、ミワちゃん。最近は踊りを習っているんだって。


「ダンスとは、全然違う動きなんで面白いのよ。使う筋肉も違う感じだし」


 楽しそうに語るミワちゃんを見ていると、こっちも嬉しくなってくるね!そういえば、ミワちゃんとゆっくり喋るのも久しぶりだな。今までは、ミワちゃんが忙しかったりオレが忙しかったり、タイミングが合わなかったんだよね。


「そうそう、市民スタジアムでのダンスフェスタにスクールの子達が出るのよ。タッちゃんも来賓で行くんでしょ?」

「あー。アレね。地域振興課の山崎さんが、どうしてもとか言ってて、断りきれなかったんだよね」

「あれ?山崎さんて、もしかしてタッちゃん、マジックやるの?」


 地域振興課の山崎さんていうのは、市役所の人なんだけど、たまたまオレのマジックを見てたらしくて、機会があるとステージでやってくれって、言ってくるんだよ。オレのは魔法を使ったインチキマジックだし、そもそもそんな広いところでやるもんでもないんだけどね。


「マジックはかんべんしてもらったよ。でも、よく考えると、マジックを断る代わりに来賓の挨拶を任されているような気がする……」

「あはは、さすが山崎さん。策士ね!でも、タッちゃんの挨拶は説教くさい演説始めるオジさん達より評判いいんだよ?」

「短いからでしょ?」

「ふふふ。それもあるけど、結構タッちゃんファンも多いんだよ。何せ、地元の御曹司だからね!」

「えー?何それ。もう30過ぎで無職のオッさんだよ?」

「ま。遠くから眺めている分にはスラッとしているしね」

「遠くからって!ヒドイ!」

「あ、そろそろスクールの準備しなきゃ!じゃあまたね!」


 なんだか、言いたい事だけ言ってったな。一時期何か悩んでいたみたいだけど、吹っ切れたようでよかった。オレもミワちゃんとおしゃべりして元気をもらったみたい。いつもならぼーっと座って店番をしているんだけど、チョコチョコ動き回ってお店の整理とかしちゃったよ。さりげなくレビテーションを使って重い荷物も持ち上がられるしね。気になっていた棚の位置とかも動かしたりしちゃいました。


 その夜……


「よーし、タッちゃん!次は天狗岩の方に飛んで!ウヒョー!」


 えーと、なんで、オッさん二人で密着して空を飛ばないといけないんでしょうか?


 スカイダイビングでタンデムって言って二人で一つのパラシュートを使うシステムがあるんだ。インストラクターと生徒とかで使うヤツなんだけど、今、ジンちゃんと二人でそれを使って空を飛んでます。


「よーし、宙返りして!宙返り!アハハハ!」

「ジンちゃんのテンションが怖いよ!」

「アハハハ!空を飛ぶのは人類の夢だろう!楽しい!」


 それはそれとして、そもそもは向井の庄の調査をしている筈なんだけどね。

 ジイちゃんズの歩いての探索が終わり、向井の庄の中には蔵の周りと結界石の祠以外は人工物は見つからなかった。そこで、今後は結界を出て、向井の庄の周りを探索する事になった。その事前調査って事で、空からの偵察を行っている。オレが飛行と警戒を担当、ジンちゃんが偵察を担当の筈なんだけど、ちゃんと調べているのかな?


「大丈夫!ちゃんと記録はしているし、見るべきところは抑えているからね」


 能吏はきちんと働いているようです。


「さて、偵察の結果ですが、思った通り、集落の手前にいくつか生活の痕跡がありました」


空を飛んだ次の日、ジイちゃんズとカッちゃんとフミエさんを交えて向井の庄で報告する。

大型モニターを持ち込んでプレゼンスタイルのジンちゃん。昨日のハイテンションの人と同じ人物とは思えないよ。


「ハイ、そこ。黙って」


何も言ってません!


「いくつか写真を撮ったので、見てください。狩りの小屋や木こりの小屋と思われます」

「ああ、コレは狩り小屋だな。毛皮が干してある」

「すると、ここら辺まで狩りに来ている可能性があるのう」

「結界があるので、向井の庄の中には入らないでしょうし、その近くも大型の獲物がいないので狩り人が来る事はないんじゃないでしょうか?」

「普通はないだろうが、獲物がいない場合は遠征してくる可能性はあるな」

「もしかすると、猟師に気付かれているかもしれないな」

「ふむ。その前提で行くか?」


ジイちゃんズやジンちゃんには通じたようだけど、オレやカッちゃんは分からなかったので説明してもらった。


「これから探索に出るとして、人に会ったらここに新しい村が出来たって話すのさ」

「どこから来たか分からないヤツよりは信用してくれるし、交易を考えたらお偉いさんに紹介してもらえるだろう」

「デメリットは、この世界の人間がここに来るのが早まるって事だな」

「こっちの世界に人がここに来るとマズイの?」

「たとえば、このモニター、どうやって説明するんだ?」

「魔法の道具って事でいいんじゃない?」

「あ!そうか。それでいいんじゃねえの?ジンちゃんは考えすぎなんだよ」

「カッちゃんは考えなさすぎなんだよ!……でも、魔法が使える世界なんだよな……」

「案ずるよりは産むが易し。まあ、まずはこっちの人々と接触するのが先じゃな」


ジイちゃんがまとめ、まずは猟師たちに接触する事になった。



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