天神山
天神山の頂上に着いた。
天神山は標高の低い山だから、頂上も木に覆われて見晴らしはよくない。でも、頂上はなだらかで木陰で休憩するにはちょうどいい。日本では、ここらの木は伐採されているから見晴らし良いんだけどね。
オレがフウフウ言って休んでいる間に、ジイちゃん達はスルスルと木を登って行った。
さてと、実は高出力のトランシーバーを持ってきているんだよね。出発の時は篤弘がいたので隠していたんだが。
「あー!もしもし〜!こちら探索隊、タンゴ!聞こえますか?ドウゾ!」
「ハイハイ!こちら、ベースのキロ!感度良好です、ドウゾ!」
「こちらも、よく聞こえます、ドウゾ!」
実際、よく聞こえるので、驚いた。電話してるのと大差ない。
「こんなによく聞こえるなら、電話代わりにしてもいいね。ドウゾ!」
「双方向の通信じゃないからちょっと話しにくけどね。ドウゾ!」
「そうだね。そういう通信機を探しても良いかも。ドウゾ!」
「戻ってくる時は、小まめに連絡してくれ。電波が届く範囲を知りたい。ドウゾ!」
「リョーカイ!では、一旦通話を終わらせます。ドウゾ!」
「通話終了!」
通信の相手はカッちゃんでした。
通信を終えて、トランシーバーをしまっていると、ジイちゃん達が、木から降りてきた。
「どうだった?なんか見えた?」
「ああ、面白いものが見えたぞ!」
何か見つかるとは思っていなかったので、この返事には驚いた。
「え?本当に何か見えたの?」
「ああ、達夫ちゃん。向こうの山にクマがいたよ」
「ええ!」
クマと言えば、日本本州で最大の肉食動物だ。
山の中で出会ったら、命の危険がある。
「とりあえず、こっちの尾根には来そうにないから、安心しなよ」
「ケンじーちゃん。なんでそんな事分かるのさ?」
「まあ、多分大丈夫だと思う。この先にその秘密があると思うんだよ」
「秘密?」
「ああ、多分、達夫ちゃんなら分かるだろうし、達夫ちゃんが分からないなら、誰にもわからないんじゃないかな」
なんだか謎めいた言葉を残してスタスタと歩き出して行ってしまうケンじーちゃん。
もちろん、ウチのジイちゃんは、その前に歩いて行ってしまっている。
オレは首をひねりながら、ジイちゃん達の後を追って歩いて行った。
地球の天神山は、名前の通り、天神様が祭られている。
山頂に小さな祠があるんだ。
麓から山頂への道は途中までは急な石段が続き、後はなだらかな尾根道となる。山頂は広場になっていて、社務所も建っていた。昭和の中頃までは、神主さんが住んでいたそうだ。
コッチは人の手が入っていないから深い森になっているけど、だいたいの地形は同じだから、何となく土地勘みたいなものが効く。ジイちゃん達は天神様の祠がある方に進むので、俺も付いていった。
ジイちゃん達の後をついて行くと、小さな石の祠があった。
なんか、感じる。言葉には出来ない感じなんだけど、祠の中に何かあるのを感じる。
「どれどれ。っと」
ジイちゃんが、祠を拝むと正面の扉を開いてく。
すると、中から緑色の光が靄のように漏れ出てくるのが見えた。
「うーん、何も見えんの」
「え⁉︎」
ジイちゃん達には、光の靄が見えていなかった。
「ふうむ。それじゃ、たっくん。祠の中に何かみえるかの?」
ジイちゃん達は何やら納得した顔で、場所を譲り、俺は祠の中を覗いた。
中には緑に光る石が置いてあった。20センチくらいの長細い玉子みたいな形をしている。
「何か見えるかの?」
「緑に光る石があるよ」
「その石はなんだかわかるかの?」
「あれは結界石だね」
後で思うとトランス状態になっていたのかもしれない。ジイちゃんの質問に、初めて思い出したかのように答える。
オレは自分が知っている筈の無い事をスラスラと話していた。
この結界石の役目は二つ。一つはこの石の周り500メートルぐらいから大きな生き物が近寄れないようにする事。そしてもう一つは近くの結界石とつながって、もっと広い結界を作る事だった。
結界石は山沿いに並んでいて、ウチがある盆地を覆う様に結界を作っていた。
この結界のおかげで、蔵の周りに大きな動物が現れなかったんだな。
そして、結界石に触れた事で、オレの中に魔法に関する知識が埋め込まれているのが感じられた。




