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翌日

翌日の事。

俺は定石通り、暑さにより目が覚める。

寝起きの耳に蝉の声が煩く響くのに煩わしさを感じながらもそもそも布団から這い出、朝ごはんを食べに1階へと向かった。

「おはよう」

朝の苦手な俺は気力の無い声で挨拶をする。

「…あれ?」

が、いつもなら両親のどちらかからおはよう、が返される筈なんだが、今日は応答が無い。ふと机を見るといつも利用するパン屋のメロンパンとメッセージの書かれた白い紙が置かれていた。

「なんだこれ…」

俺は紙を手に取りながら椅子に座り、テレビを付ける。それから紙に書かれているメッセージに目を通した。


レイラへ

今日は少し用事があるので朝から買い物とかで家に戻れるのは夜になりそう、ミイの事頼むよ?


「…まじかよ……」

メッセージを読み終わり俺は軽く落胆する。そもそも俺は朝ごはんはご飯派で、パンはあまり好きではない、それに夜まで小学校4年生の妹の世話もしなきゃならない。自分に突如降り掛かった責務に溜息を着くと、ふとテレビの方に視線がいった。

「それでは今日の最下位はごめんなさい、さそり座の貴方、生活環境が大幅に変わり苦労するかも、でも安心して下さい、ラッキーアイテムは…」

「最下位か……」

テレビに映る自分の星座と12の文字…今日は何か良くない日な気がしてきた……。

まぁ…占いなんて所詮は根拠の無い物だ。最下位だからって信じなければどうって事は無い。と、自分の中でそう思い、半分まで減ったメロンパンを齧る。もさもさとした食感は嫌いではないけど、メロンパンを食べるといつも飲み物が欲しくなるからあまり好きだと言う訳でもない。というか最後にメロンパンを食べたのは何時頃だったっけ……。

そんなどうだって良い事をぼんやりと考えている途中、急に部屋にインターホンの音が鳴った。

はっ……慌てて時計を見ると九時、やばい、シルハとの約束の時間だ。

「ちょっ、シルハ速すぎだろ……」

インターホン越しに話しかける。こっちは出かける所がまだパジャマすら着替えてないんだよ。

「ご、ごめん……待ってる」

どことなくシルハの声は緊張で上ずっていたように聞こえたが、気のせいだろうか、俺は取り敢えずメロンパンの最後の一欠片を口に放り込み、ダッシュで着替え、昨日の用意した鞄を肩から提げると、急いでドアを開けた。ここまでに5分程しかかかっていなかったと思う。

「お待たせ」

「あっ、やっと来た……ってまた寝癖すごいよ…!?」

外へ出るなりシルハは自分の頭を、恐らく俺の寝癖が付いている辺りを左手で抑える動作をした。

「うわ、まじかよ……ちょっと待ってて」

俺は慌てて洗面所へ直行する。

洗面所へ着き、蛇口からの冷たい冷水を頭から被る。頭全体が冷やされてはっきりと目が覚めたような感覚だ。

適当に濡らし、タオルで適当に拭き終えると、俺は再び玄関を通り外へと出る。そこには白い日傘を細い腕でくるくると回しながら不満そうにこちらを見つめているシルハの姿があった。涼しげな白のワンピースが丁度風に靡き、頭に被っている麦わら帽子に施された薄い桃色のリボンも同様に靡く。どういう訳か、シルハが大人びて見えた。

「…何ボーッとしてるの?」

「あぁ、悪い悪い、ちょっと考え事をしててな、じゃあ行くか」

まさかいつもとは違うシルハの服装に見とれてた(?)とは言えず、適当な嘘で誤魔化しながら自転車へ跨がる。

「うんっ」

シルハが笑顔で頷くと、俺達はまるで恋人同士のように同じタイミングで自転車を漕ぎ始めた。照り付ける直射日光と蝉は、相変わらず響き渡っている。

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