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謎の機械とアイス・ビズ

「あっついな…」

シルハが帰った後、誰も居なくなった家の中でただ蝉の声だけがやかましく鳴り響く。その時、下から何やら物騒な音が聞こえた。

「またやってんのか…」

俺は呆れて呟き、下へ…地下室へ通じる階段をゆっくりと下っていく。そして、11段の階段を全て下りきった後に見えたドアを開けた。

「朝から何変な事してんの…」

そこに居たのは白衣を着た男…とまぁ、俺の父親だ。発明家である父さんは自室兼実験室である地下室を使い、俺が小さい頃から謎の実験をしていた。

「ていうか誰も居ないと思ってたけど…居たんだね?」

…しかしどうも様子がおかしい。父さんは俺の声に気づいていないのか、黙々と実験を続けていた。

「…父さん?」

三度目の声をかけた時…何も話さなかった父さんが口を開く。

「風涼祭り」

え…?いやいや、主語と述語が無ぇと伝わらねぇよ。

「風涼祭り?行くけど…それがどうしたの…?」

頭の中でそう思いつつ、父さんに尋ねる。すると父さんはそうか…と、諦めたような口調で呟くと椅子から立ち上がり…部屋の奥にあった何かを持って、俺に渡した。

「これは…?」

渡されたのは赤くて四角い立方体の箱と、丁度フリスビーのような形の何か、その二つだ。

「それは俺が去年に作った機械だ。そっちは3000度の高温を一点に浴びせる事で対象に穴を開ける道具、もう1つのそれは光と反応させるとレーザーを放つ道具だ」

いや…は?

「そんな物騒なもん何の為に作ったんだよ…そして何で俺に渡すんだよ…」

父さんの部屋にはそこらじゅうに作ってたは良いが使用される事の無い物や、そもそも何の機械なのか分からない物までが溢れかえっていた。恐らく父さんは失敗作のこの二つを俺にくれたんだと思うが…。

「くれるならもう少し穏やかな武器をだな…」

俺がそう言った瞬間、父さんの声が部屋に響いた。

「何があっても…死ぬなよ、護るべき者が居るだろう」

「え…?うん…」

死ぬな?どういう事だ…?どう抗おうがいつか人は死ぬが…もしや渡されたこの道具を使うと不死にでもなるってのか?それに…護るべき者って誰の事なんだよ。

俺はいつもと明らかに様子の違う…まるで霊にでも取り憑かれたような父さんを不気味に感じ、足早に一階へと戻った。



一階へ戻るが、先程の父さんの言葉がどうもひっかかる。一体何を意味していたのか。渡された道具に意味はあるのか。その答えは何も出て来ない。

ずっと考えていたその時、不意に自分の住んでいる街の名前が聞こえた。その発生源はシルハが来る前からつけっぱなしだったテレビからだ。

俺は何がやっているのか気になって目を向けたが…大した事はない、ただのニュースだ。画面には聞き飽きた「日本一の熱中症都市」というテロップ。

俺はチャンネルを変えようと…リモコンを取る瞬間にテレビで何やら討論していた人の発言により、リモコンは押される事なく机に戻された。

丁度そこでテロップが消え…「気象庁による政策を明日実施する予定」とのテロップに切り替わる。

「気象庁はおよそ1ヶ月前から自衛隊や色んな機関の力を借りてこの街全体の気温を下げようとする試みを行っていたらしいです」

「最早この街は地球温暖化の原因の1つになろうとしてますからねー…」

テレビの中で発せられたその言葉に苛立つ。地球温暖化の原因?知らねえよ、俺はただ普通に生活してるだけなのに街全体の気温が高い、ただそれだけで加害者扱いすんなよ。

当然の事ながら俺の言い分はスルーされる訳だが…。

「アイス・ビズ政策と言いましてですね、詳細は不明ですが自衛隊と気象庁による…」

「アイスビズ…?」

テレビの前で鸚鵡返しのように呟く。アイスビズ…聞いた事は無いが、クールビズの強化型か何かだろうか?

俺はここでテレビの電源を落とした。

「ま…涼しくなんなら大歓迎だけどな」



「…本当に実施するのですか?」

1人のスーツを着た男が不安を募らせてそう話す。尋ねられた迷彩服の男は笑って答えた。

「これは表向きは単なる都市の気温を下げる…だが本当の目的は…」

実験さ。冷たい感情の声が、その空間に響いた。

「ですが…」

苦虫を噛むような顔をするスーツ男に対し、嘲笑うような表情をした男は…こう言った。

「壁なら既に仕込み終わった。それに…実験が成功しないとは限らない、本当に街が快適な温度になる可能性だってある…まぁ、失敗したとして、あんな地球温暖化という単語すら知らなそうなクズどもなんて世の中に必要ないだろう」



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