イースちゃんが大活躍?(純愛系など滅びれば良い)
毎度のことハカタです。
28/06/04誤字修正
さて、血滴る運命の炎(笑)基、ファイアーアレイで起きた爆風はなんとかシィルスとイースが防いだ。
「本当は、人族との接触など避けたかったのじゃが、こうなっては仕方あるまい。恩人に刃を向けては、兄者に怒られてしまうしのう。
それに・・・。」
不思議に笑いながらシィルスの言葉は途切れた。
俺の魔力はすっからかんだし、イースはシィルスに勝てるはずも無い。だから、有り難いと言えば、有り難かった。
シィルスにしても、今の状態では本来の力の半分も出せないだろう。良く普通に喋れると感心するほどである。
「しかしのう。お主等だけが逃げたら助かったやも知れんのに、戦うというのは些か愚答じゃと、妾は思うのう。」
「理性のある奴と無い奴だったら、ある奴に生きてて欲しいだろ?」
シィルスは俺達を見て、雑魚と認識したのか、殺さなかった。イースではシィルスに勝てないだろうとは言え、戦闘中に背を向けて良いほどの力量差がある訳も無い。
つまり、俺なりの礼も兼ねているという事だ。恩を仇で返されたら終わりだが。
「それに、舐められたままで終わるのも癪だったからな。」
意外と、「間抜け」と呼ばれたことを根に持っていた。俺も人間だから、いつも論理的に動くわけではない。いつも非合理的に動いているわけでもないが。
もし、こじ付け的に、もう少し合理性を求めるなら、、あのときと同じで、逃げられるか、戦うかの選択を迫られて、逃げられないと感じただけだ。「テラー=ケエル=ドラゴンからは逃げられない」ってね。
「くくっ。そうか。まあよい。礼をしたいが、何か望みはあるかの?」
「危険人物には変わりないから、すぐに別れたいんだが?」
「そんなもんかの?」
「そんなもんだよ。」
そう返すと、シィルスは俺らの進行方向とは別の方向へ去っていった。
「つーか、魔王大量発生し過ぎ。」
バーゲンセールかってんだよ。買わねーよ。売るんじゃねーよ。
「助かった・・のですか?」
「ん?ああ、一応引いてくれたみたいだ。」
引くって言うより、あれで引かなかったら逆に引くわ。
危険も排除されたし、また前進する。
「ちなみに、さっきのあれは《炎撃魔術》ですか?」
演劇魔術?いや、《火魔法》だが。そもそも、魔法と魔術の違いって何だよ。
「まあ、似たようなもんだが、企業秘密だ。」
「は?キギョウ秘密ですか?・・・まあ、なんでもいいですが。そう言えば、まだお礼を言ってませんでしたね。助けて下さってありがとうございます。」
「いや、それを言ったらこっちこそありがとう。」
今ここに俺が生きているのは、イースのお陰だからな。持ちつ持たれつどころか、大分持たれている。
「で、すまないんだが、今ので殆ど魔力使っちまって・・・。」
「問題ありませんよ。こちらはまだまだ余裕があります。」
実際に、イースのステータスのSEは、あれだけ四六時中魔物を狩っても、すぐに回復している。
そう言えば、あんまり気にしていなかったが、精霊には「SE」という特殊なステータスがある。一部の聖獣、神も持っているらしい。いや、待て、神ってなんだと思ったが、とりあえず置いておく。それで、その「SE」と言う奴は、イースが持つスキルでは、《水波》、《水撃》、《精霊波動》、《精霊結界術》、《霊源陣》などで消費する。逆に、《人物鑑定》や《浮遊》と言ったスキルは普通に魔力を使用する。まあ、代替エネルギーってところなんだが、実は《魔力感知》に引っかから無いという利点があるらしい。
そんな訳で、イースのSEがたっぷり余っているのに甘んじて、魔物狩りはいつも通りイースに任せてしまおう。
気付いたのは夕食前である。何気なくステータスを開いて、最初は目を疑った。
名前 :千一卜(セン=カズウラ)
種族 :純人族
年齢 :17♂
称号 :レベリンガー
言語 :ホントル語
状態 :良好
レベル:91
特性 :なし
HP :約20万
MP :∞
力 :2,000
防御 :3,000
賢さ :3,000
業力 :4,000
素早さ:120
命中 :66
SP:0
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いや、可笑しいな。俺にはMPの値が良く分からないんだが。なんだろう。8かな?いや、00かな。いやあ、俺も最近老眼が入り始めてきたのかなあ。
「んな訳あるかあっ!!」
「ど、どうしたんですか突然・・・。」
流石のイースも、俺の突然の発狂に驚いているらしいが、俺はそれどころではない。ステータス画面の下を見ていく。スキル枠のところだ。
スキル枠 13/50
第一言語:ホントル語
SP自動振LvMax(0)
無詠唱化LvMax(0)
回想ログLvMax(0)
ステータス展開LvMax(1)
スキルチェンジLvMax(1)
無限創造LvMax(1)
一隻眼Lv8
天機掩蔽Lv8
スキルコピーLv11
経験値上昇Lv10
アイテムボックスLv50
火魔法Lv50
水魔法Lv80
控えスキル
第二言語、第三言語、第四言語・・・第十言語
いやー、見慣れないスキルが入ってるな。これか。
無限創造LvMax(0)
MPは無限となり、業力は2倍になる。
創造系スキルの限界を突破する。
いや、最早チートってレベルじゃねぇ。いますぐ世界壊せるぞ。やらないが。
つーか、これの存在を知ってれば、シィルスも倒せたんじゃ?倒す意味が無いから、単純に可能か不可能の話になるが。
そして、そこで初めて心配そうなイースの顔が視界に入った。いや、視界には入っていたから、意識に入ったか?
「大丈夫ですか?主に頭が。」
「突然毒舌だな、オイ。」
「突然叫ぶ人に言われたくありませんが?」
「ぬぐ。」
それを言われると痛いな。
「それで、本当に大丈夫ですか?」
「ん、ああ。大丈夫だ。」
未だにイースが心配そうなところ悪いが、至って正常である。精神は。肉体は魔力的な意味でヤバいかもしれない。これはもう一度スキルやら《回想ログ》やら見直したほうが良さそうだな。
夕食である。相変わらず美味くない飯を食いながら、《回想ログ》を眺める。
それにしても、何とも不味い夕食だ。たまにはカップ麺が食いたい。そもそも、後半月経ったとして、美味い飯にありつけるとも限らないのだ。なんだか一気にやる気を失くすな。
「はあ・・・帰りたい。」
それがイースには珍しかったらしい。
「さっきの叫んだのもそれが原因ですか?」
「ん?ああ、別に。」
そう言えば、イースにしてみれば、帰りたいと言う言葉は、「村に」と付け加えられるのか。そりゃあ、なんというか、失言だったな。
「飯が美味くないのだけが、今の課題だよ。」
「ああ、なるほど。人族は不便ですね。」
精霊は食べる必要がないだけで、食べられない訳ではないそうだが。まあ、好き好んで嫌いだったり不味かったりするものを食べる必要は、全く無いのだ。
「テラー=ケエル=ドラゴン」に、ファイアーアレイで攻撃。(21,213,341ダメ)
「テラー=ケエル=ドラゴン」を討伐しました。
「スーパーゲル」にファイアアレイで攻撃。(70,000ダメ)
「スーパーゲル」を討伐しました。
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「グレートディア」を討伐しました。
レベルが上昇しました。Lv61(SP61取得)
レベルが上昇しました。Lv62(SP62取得)
レベルが上昇しました。Lv63(SP63取得)
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レベルが上昇しました。Lv77(SP77取得)
スキル《無限創造》を取得しました。
レベルが上昇しました。Lv78(SP78取得)
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レベルが上昇しました。Lv89(SP89取得)
レベルが上昇しました。Lv90(SP90取得)
レベルが上昇しました。Lv91(SP91取得)
改めて見ると、俺は何と言う無謀な挑戦をしたんだろうか。結果的に勝ったから良いものを。しかし、この《回想ログ》のお陰で、原因が分かった。犯人はラッキーセブンだ。
そして、次にスキル一覧を見て、見て・・・見て・・・。
「あ・・・。」
その声は、本当に漏れたと言っても過言ではないくらいで、イースには聞こえなかったようだ。
スキルコピーLv11
相手のステータスが完全に見える場合、一日に1度だけ55%の確率でスキルをコピーできる(相手のスキルは消失しない)。回数と確率はSLによって変化する。一回消費MP1億。
チートだ。チートがいる。《スキルチェンジ》でポイントを振り直し、《スキルコピー》
のレベルを20まで上げたらもう、
スキルコピーLv20
相手のステータスが完全に見える場合、一日に1度だけ100%の確率でスキルをコピーできる(相手のスキルは消失しない)。回数と確率はSLによって変化する。一回消費MP1億。
多分、Lv1毎に5%ずつ確率がアップがするのだろう。Lv21になったら二回目か。
最高Lv100だとしても、一日5回?どんなチート製造スキルだよこれは。
《スキルコピー》について、確かめたい事がいくつかある。最重要なのが、エフェクトの有無だ。これがあるのと無いのでは使い勝手に大きな差を生む。もう一つは、どのような状態でコピーされるのかだ。これもかなりの差異が生まれる。他にもあるが、まあとりあえずおいておく。
試してみるか。イース相手なら何をやっても、もう何か大丈夫な気がするし。
《スキルコピー》を発動しました。
《スキルコピー》が成功しました。
スキル《浮遊》Lv55を取得。
チートだな!何がチートって、俺もうこれレベル上げなくても、際限なくSPを入手できるぞ?しかも、《浮遊》を選んだつもりだったから、自分でコピーしたいスキルも選べるらしい。エフェクトも無いようだし。イースも全く気付いてないようだし。
「とりあえず、そろそろ寝るか。」
「はい、お休みなさい。」
差し当たってすることも無い。動けないならさっさと動ける朝を待てば良い。
朝だ。《回想ログ》の手動記録、即ち『メモ帳』に刻んである数字によれば、異世界30日目。後今日含めて2日程で付く予定だ。ちなみに、『メモ帳』を使い始めたのは異世界16日目からだ。丁度、スキルを漁り直して一夜明けた朝からだ。この『メモ帳』機能が結構便利で、日数以外にも、魔法やスキルに関して分かった事などをちょくちょく書いている。
「順調ですから、今日着いても可笑しくありませんね。そろそろお別れですか。」
なんとかなく、寂寥感滲ませる顔でそう言ってきた。そう言えば、そうだよな。一緒に居る意味も無いし。精霊の扱いも俺には良く分からんし。
「思えば短いようで長い道のりでした。」
「え、何この突然の語り。なあ、それ長くなるか?歩きながらで良いか?」
「む、せっかく纏めてみようかと思ったのですが。」
「俺相手にそれをする意味がないだろ。」
「それもそうでしたね。」
何だか妙なテンションのイースをおいて、旅は続く。早く終わって欲しいけどな。
本当にただ歩くだけなのだ。魔物が現れてもイースが瞬殺してしまうから。つまり暇なのだ。この30日だけで何回暇と言ったか忘れた。135回までは数えてた。要するに、それぐらい暇だったのだ。
やることと言えば、飯を食い、道無き道を歩き、魔物を見つけて《スキルコピー》を使用し、飯を食い、寝て、飯を食い・・・あれ?すんげえダメ人間っぽいな俺。不思議だ。
ちなみに、今のスキルはこんな感じである。
スキル枠 25/100
第一言語:ホントル語
SP自動振LvMax(0)
無詠唱化LvMax(0)
回想ログLvMax(0)
ステータス展開LvMax(1)
スキルチェンジLvMax(1)
無限創造LvMax(1)
上限開放LvMax(1)
一隻眼Lv8
天機掩蔽Lv8
スキルコピーLv20
経験値上昇Lv5
アイテムボックスLv50
火魔法Lv30
水魔法Lv80
地魔法Lv10
風魔法Lv10
空魔法Lv10
浮遊Lv0
状態異常耐性Lv50
夜目Lv50
シールドLv10
鎧通しLv0
アイシングフィールドLv0
毒の牙Lv0
紅蓮纏Lv0
炎火礼讃Lv10
絶対に使わないであろうスキルもとってしまった。《紅蓮纏》なんかは、体に火を纏うスキルなので、おいそれと使えない。勿論、常時発動スキルパッシブスキルなのだが、レベル0にしている現状では発動しない。
《空魔法》は、無属性魔法みたいなもので、スーパーゲルが偶々持っていたものだが、これをコピーする前にも後にも見つけた事はない。かなり希少なのだろう。不可視の攻撃だからかもしれない。
《状態異常耐性》、《夜目》、《紅蓮纏》、《炎火礼讃》はレッドドレークのものだ。もちろん、レッドドレークと言っても、イースと初めて会ったときに居た奴ほどの強さではない。イースが瞬殺出来る程度だ。《夜目》は結局寝るから使わなかったな。
《シールド》、《鎧通し》、《毒の牙》は夜叉又という蛇風の魔獣が持っていたものだ。この魔獣、夜行性なので俺とはあんまり縁が無かったりする。朝早くか夕方遅くにしか見かけなかった。
《アイシングフィールド》は、アイスモアという駝鳥を拡大したような魔獣から得たスキルだ。何を隠そう、異世界最初に遭遇した奴もコイツだ。《アイシングフィールド》は、自分の周りを凍らせるもので、Lv10では3m範囲を凍らせる事ができる。これ、レベル上げたら酷いことに成りそうだな。
「まあ、もうちょっとあるが、本当に付き合ってくれてありがとな。」
「どうしたんですか急に、気持ち悪い。」
「いや、思ってても気持ち悪いとか言うなよ。傷つくんだが。」
「それは嬉しい誤算ですね。」
「嬉しいのかよっ。」
本当に、今日のイースはちょっとテンションが可笑しい。
それから、何事も無く一日が過ぎ、暗くなったときには、視界にも城壁が捉えられるほどのところまで来ていた。
「もう、もうあと少しだ・・・。」
肉体的には疲れていないが、気苦労というか、慣れない生活へのなんとも言えない感情のせいか、精神的に疲れていた。
さて、今日で終わりだと思うがと付け加えて、イースにいつも通り感謝して、夕食の準備を始め、そして、すぐに寝ても良い準備ができた。
益体も無いことを考えているうちに、城壁まで後百数十メートルのところまで来ていた。
「千一卜。もう、これで会うことも無いかもしれませんね。」
ふと、思い出したかのようにイースが呟いた言葉は、当然といえば当然のことだった。というか、何故突然フルネームで呼ばれたのだろうか。
「そりゃあなあ。棲家も違えば、文化も違う。会えたのが奇跡ってもんだろ。」
「それを言ってしまうと、私が生きているのが奇跡みたいですね。」
苦笑をしながらイースが言う。確かに、そうだな。逆に、俺が生きているのも奇跡だと言えるだろう。
あの時、イースが逃げられていれば。
あの時、俺が違う方向を選択していれば。
あの時、俺が逃げていたらば。
たらればに意味は無いが、どうしてもそんなことを考えたくなる。
「もしかしたら――。」
途中で言葉を切ったイースに、俺は視線を向けた。瞬間。
――唇に冷たくて、それでいてどこか温かいものが触れた気がした。
「また、会えるかもしれません。」
そう言って、掻き消えた。まるでそこに始めから誰も居なかったかのように。
「え、いや・・・マジですか?!」
また叫んでしまったが、もう咎める視線もからかう声も聞こえはしなかった。
未来系のたらればは、変化球だったぜ。