鴉と猟犬
今回から主人公の心理描写を少し入れてみました。
読みづらければ言ってください
……どうやら少し眠ってしまっていたらしい。
一応まだヘリの機内のようだ。外を見ると大きな島が見えた。
「目が覚めました? もうそろそろ到着しますよ」
向かいの席からフランが言う。
てことはアレが学校なのか……?
そんなリオンの胸中を察したのか、フランが笑って言った。
「さすがにあの島全体ではありませんよ。それでも島の中心であるのはクリフォード学院ですが」
自慢気に言うフランの姿にはどこか可愛らしいものがあった。リオンは島の中心に目をやり、上空からでも十分大きい建物を見た。
中心……てことはあのデカい建物がそうか。
「先に学院のシステムの説明をしておきますね」
フランの言葉にリオンは何も言わず、目で「続けろ」と促した。
「クリフォード学院では5人1組のチームを作ってもらいます。そしてそのチームで課題をこなし、点数を稼いでいく。といった具合です。……ここまでで何か質問はありますか?」
「……点数の説明を頼む」
「そうですね……。点数というのはクリフォード学院生のみが島で使えるポイント…もっと言えばお金のようなものです。それに加え、チームが獲得している点数によって様々な優遇措置がとられます。身近なところでは寮の内装等ですね。……ちなみに、一年間を通して一定以上の点数を獲得できていないチームは原級留置、といったかたちになります。」
「なるほど……、よくわかった」
リオンは少し口を釣り上げ、笑ってみせた。
するとフランも嬉しそうに笑った。
「……っと、着いたようですね」
窓から下を見ると、ヘリポートのようなスペースがあった。
ヘリはそのまま降下し、無事着地した。
リオンはヘリから降り、辺りを見渡した。今まで仕事で来ていたのはいずれも半壊した町や内戦地域ばかりだったのでこういった綺麗な場所は珍しい。
「パトリオット君、こちらです」
慣れない呼ばれ方に戸惑ったがフランが歩きだしたことですぐに我に返り、ついていった。
☆
「ここが君の部屋になります。……といっても相部屋ですけどね」
しばらく歩き、いくつもの部屋があるホテルのような場所に案内された。
「今日は学院は休みですので同居人はもう中にいると思いますよ」
……挨拶してこいってことか。
リオンは一つ息を吐き、扉を開けた。
が、中には誰もいない。
部屋の内装はワンルームで、ベッドが二つタンス越しに並べられていてさらにその横に長めの机がある。本当にホテルのようだ。
一旦部屋を出ようと思い、後ろを向いた瞬間、何かの気配を感じて後ろに仰け反った。
すると、先ほどまで自分の立って場所に氷柱が立っていた。
「今のを避けるとは…… ハハッ、こりゃあ期待の新人だな」
「……にしても、攻撃をしかけるなんて聞いてない。驚かせるだけだって…」
「確かに不意打ちはよろしくないな。アリス、謝っておけ」
「ハハハ… いや悪かった。けどまぁ、アレを避けれるなら戦力としては期待できそうだな。俺はアリス・キラー。よろしくな」
「リオン・パトリオット」
アリスと名乗った男は水色の髪に翡翠色の目をした中世的な顔の青年だ。
アリスが出してきた手を握り、握手を交わす。
「……私はシエル・シュナイゼル。さっき姿が見えなかったのは私の能力。よろしくリオン」
こちらはリオンに似た特徴の少女。白い髪に赤い目、身長は150ほど。
シエルとも握手を交わす。
「私はアレクサンド・ルーガンだ。長いからアレクでいい。ところで……君を中々の腕利きとみた。いつか手合わせ願いたい」
黒い髪に碧色の目のいかにも武人、といった感じの少女。
こちらは願い下げだ。と、胸中で断りつつ同じように握手した。
「ええ…と、ハルシオン先生から話は聞いてるだろ?俺たちはこれからこの五人で生活していくことになる。……ということで、お前がどんな能力なのか知っておきたい」
なるほど。能力によって戦術を変えていこう、って考えか。
リオンは先ほど攻撃に使われた氷柱に手を触れ、それを溶かして蒸発させてみせた。
すると、アリスは嬉しそうに言った。
「炎系か!俺は氷だから………なんかちょうどいい感じだな!」
氷と聞いた途端、体の古傷が痛んだ。
懐かしい。かつての宿敵、自分が唯一敗れた相手を思いだした。
「とりあえず、なんか課題終わらすか」
「そうだな。猶予はまだあるが、早いにこしたことはない」
「それにリオンの実力も見てみたい……」
まだリオンは何も言っていないが3人はすでに乗り気だった。
空気を悪くするのもどうかと思い、とりあえず自分も乗っておく。3人はそのまま廊下へと出て行った。
すると廊下で待っていたフランが笑っていた。
「……何笑ってんだ」
「いえ、第一印象は良かったようですね」
「どうだかな……」
それだけ言い残し3人の後を追った。
☆
学院にある島からまたヘリに乗り、移動する。機内で課題、とやらのことを尋ねた。
「えっと… 今回の課題は『失敗作』の後処理だ」
失敗作?何のことだろうか。
すると、顔に出ていたのかシエルが教えてくれた。
「失敗作っていうのは……なんだろ、そのままの意味で何かの実験の失敗作なんだって。何の実験かは知らないけど。学院ではそれをヘロンって呼んでる」
「実験……?」
そういえば聞いたことがある。レイヴンに匹敵する為の兵士を造りだす計画、実験……。成功例は聞いたことがないが。
「じゃあ着いたら各自で行動。ヤバくなったらすぐに連絡してくれ。……ああ、リオンは……そうだな、シエルと一緒で」
随分と適当だな。
まぁとりあえず、与えられた仕事をやるか。
「……と、着いたな。じゃ、行こうぜ」
「…リオンはこっち」
言われた通りシエルに着いていく。
しばらく歩くと、やや大きめの屋敷にでた。
「この中か?」
「…うん。私はサポートが主だから、前は任せた」
「……わかった」
リオンが前に出て扉を開ける。
人の気配はない。が、何かが蠢いている。
気持ちが悪いので早く終わらせようとリオンは歩きだした。
☆
「…おかしい…… ヘロンが全くいない…」
シエルの声が屋敷の暗闇に消える。
中を調べること数十分。ただの一匹とも遭遇しなかった。
その時、リオンはあるものを見つけた。
「これは……小刀?」
見ると、普通の小刀よりは少し大きめの刀が床に刺さっていた。
抜いて確かめようと思った瞬間、シエルの声が響いた。
「リオン!前!」
「…ッ⁉︎」
ギリギリで回避。
数本は足に刺さってしまったが。
すると、前方から声が聞こえた。
「避けたか……さすがだな。化け物」
「その制服……猟犬か」
襲撃してきた男は黒い衣服に身を包み、2本の刀をもっている
リオンが舌打ち混じりに呟く。
「そうだ。今宵、この場所で、貴様ら鴉を……殺す為に来た。死んでもらうぞ。ダスト・トゥ・ダスト…………塵にすぎん貴様らは…塵に還れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!」
戦闘描写は苦手だな……
次は時間かかりそう