表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

非公開まとめ

悪夢

作者: 綾小路千春

 目が覚めたら自室のベッドの上にいた。

 薄暗く、壁に幾つもの穴が開いている、陰気な自室。

 カーテンの隙間から僅かに部屋に差し込む太陽光が、大まかな時刻を知らせていた。

 朝か。

 この部屋でまた目が覚めてしまったと、うんざりした視線を横に向けると、すぐ傍にはなぜか付き合って三年になる彼女の姿があった。

 どうしてこんなところに……。

 訊ねる前にあることに気付いた。

 彼女の吹き出物一つない綺麗で安らかな顔は、頭から流れる赤黒い血で汚されていた。

 何があったんだ。

 慌てて向けた僕の双眸が捉えたのは ぱっくりと割れた彼女の頭。

 写真でしか見たことのない脳髄が、彼女の脳髄が、僕の目の前に置かれてあった。

 なんなんだこれは。

 馬鹿になった頭で必死に状況を整理しようとしていると、父親が部屋に入ってきた。

『てめぇは欠陥品だ。てめぇの彼女も欠陥品だ。欠陥品をどう扱おうと俺の勝手だ』

 父親は金属バットを片手に、訳のわからない言葉を頻りにぶつぶつ洩らしていた。

 僕はすぐに理解した。

 こいつが彼女を殺したのだと。

『ふざけんな』

『あぁ?何だって?』

『ふざけんな』

 高校の制服姿の彼女から手を離すと、僕はズボンのポケットの中に忍ばせてある、ダガーナイフに手を伸ばし、激昂することもできない空虚な気持のまま、父親へと突進した。

 ナイフの刃は面白いくらい簡単に父親の腹に飲みこまれた。

『貴様……欠陥品の分際で……』

 父親は何か戯言を抜かしていたが、僕は下卑たおくびと共に吐き出される奴の穢れた血しか見ていなかった。

 それから何度も何度も父親をナイフで刺している内に、いつまでたっても父親が死なないので、今見ているものが夢であることに僕は気付いた。

 彼女は現実で死んだわけじゃない。

 良かった。本当に良かった。

 でも……。

 夢であることには気付いたが、僕は父親を滅多刺しにする両の手の動きを止めることはできなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ