せいふくとうちゃく
「ただいま~」
リビングでテレビを見ていたら母さんが帰ってきた。いつの間にか結構時間が経っていたらしい。
「おかえり~」
しばらくして母さんが結構大きな箱を持ってリビングに入ってきた。荷物を置いて着替えを済ませてから来たみたい。
「帰りに学校よって制服もろてきたで」
「ありがとう」
予想通り大きな箱は制服のようだ。
「せっかくやし着てみてや」
「え~、どうせもうすぐずっと着るんやしええわ」
「まあそう言わずに、な!」
母さんは箱を置くと私の後ろに回ってくると私の両肩を持って私を立たせた。もう、強引なんやから。
「ほら、絶対かわいいって」
母さんがさっそく箱から制服を取り出しにかかる。
「はぁ」
ため息をついて服とジーンズを脱ぐ。
「ちょっとだけやで」
「はいはい、わかっとる」
脱いだとたんスカートを渡されたのでそのまま履く。少し余裕があるけど動かんかったら落ちなさそう。次に上着を渡されたのでそのまま着る。そして最後にスカーフを結んだ。
「ほら、もうええやろ?脱・・・」
チラッと見た母さんの目に微かに涙が溜まってるのが見えて言葉が詰まった。
母さんの気持ちがわかってしまったから。
私、ずっと病弱やったからな。いらん心配ばっかかけてたし。しゃあないなぁ。制服くらいちょっとの間着といたるか。
ほんの少しの親孝行のつもりで母さんが満足するまで待つ。
「ありがとう。ホンマ似合ってるわ。かわええよ」
「そんなお世辞いらんわ」
満足したみたいやし制服から元着ていた服に着替えた。
「これ片付けてくるわ」
「うん」
母さんがリビングから箱を持って出て行く。その後ろ姿に聞き取れない大きさで
「いつもありがとうな」
と声をかけた。
ほんま、ありがとう。