てる
勢いよくリビングのドアが開かれる。
「ただいま〜、あれ?お客さん?」
開かれたドアから晴を少し幼くしたような容姿の女の子が部屋に入ってきた。
「照〜、昨日友達来るって言っておいたでしょ!?さっさと部屋に行って」
「え〜、私も晴姉のお友達とお話したいなぁ」
「あんま調子乗ってると怒るよ?」
「晴、別にいいんじゃない?折角私達も晴の家に来たんやし晴の妹とも話してみたいわ」
そう言ってさっさと妹を部屋から追い出そうとする晴を姫が止める。
「いやぁ、照と話したっておもんないって」
「話してみないとわからへんやん?」
紅羽も追撃する。
「も〜・・・だって、よかったね照」
どうやら晴も諦めたらしい。
「やった!じゃぁちょっとお邪魔しますね」
照ちゃんがソファの晴の横の空いている所にポスンと座った。
「初めまして、私照って言います」
座るや気持ちいいくらにすがすがしく眩しい笑顔で自己紹介をしてくれる。まさに向日葵のような少女って感じやな。
「初めまして、私は姫路燈です」
「うちは神宮紅羽で、隣のこの子が」
「夏目・・・稟です」
姫と紅羽が優しい笑みを浮かべて自分の名前を口にする。私?ちゃんと名前を言えたわけやしそれで勘弁してください。
「皆さん揃いも揃ってすっごい綺麗ですよね。特に稟さんなんて天使様みたいだし、晴姉って実は結構面食いやったんやね」
「くそ〜調子乗りやがって〜。照?あんまり調子乗ってたら後で知らないからね」
「こらこら晴〜、妹を虐めない。折角妹が居るんだからかわいがってあげないと」
姫にまたも妹の肩を持たれ「あたしの見方が誰もおらん・・・」と晴が肩を落とした。
「そんなこと言うって事は燈も妹おるん?」
「ん?いないよ?兄弟は兄さんだけ。でも妹は欲しかったかな。照ちゃんもこんな可愛いし、ホント家の子にならない?」
「燈さん、それなら晴姉を貰って下さいよ!そしたらめでたく私も燈さんの義妹になれますし」
「照!?急に何言ってんの!?」
「そうやね〜・・・良い男が見つからなかったら晴をいただいちゃおうかな」
「姫!?」
照ちゃんのノリに姫も合わせる。こんな振りに慣れていないのか晴が珍しくテンパって口をあうあうと何度も開閉させる。
まぁ気持ちは分からんでもないけどな。私も紅羽に同じことされたら今の晴よりももっと酷いことになるに決まってるし。
「そう言えば照ちゃん、なんで私なの?紅羽や稟はどう?」
「いやぁ、だって稟さんと紅羽さんって付き合ってるんですよね」
!?
「どうしてそう思ったの?」
訳が分からなくなっている私を尻目に姫が照ちゃんに質問を続ける。
「え、違うんですか?私の行ってる中学女子校で、やっぱり女の子同士で付き合ってる娘達もいるんですけど、何となく同じ空気を感じてそう思ったんですけど・・・」
「あぁ、大丈夫大丈夫間違ってないから。ただよく直ぐ気づいたなと思って」
「姫!?」
何言ってくれちゃってんの!?それに照ちゃんも何!?女子校ってやっぱそうなん?いや、それ以前にそれでええの?中学生!
「まぁまぁ落ち着いて落ち着いて。別に稟も嫌じゃないやろ?紅羽も」
「そらうちは嫌なわけないけど・・・」
そう言って心配そうな顔を紅羽が向けてくる。
そんな顔で見つめられて自分でも驚くほど顔が火照っていく。
「うちも嫌やない、よ?」
「・・・ほんま?」
まだ心配そうに確認してくる紅羽に頷きで返す。
「わ〜・・・やっぱり稟さんや紅羽さんくらい美人だと女の子同士でも見惚れちゃいますね」
「そうやね」
「照!ホント調子乗りすぎ。それに姫も。紅羽、稟、ホントごめん、あとで言っておくから」
「あ〜、気にせんとって。ホンマにうち気にしてへんから」
珍しくまじめに謝る晴に普通の表情に戻った紅羽がフォローを入れる。
ただその顔は若干赤くなってしまっている。それにもしかしたらそこはかとなく嬉しそうな表情も混ざっているかもしれない。まぁ私はそれとは比べられんくらい顔真っ赤になってもてるやろうけど。
「晴姉、せっかく人数居るんだしゲームやらない?」
え?この流れで急に!?
「いいわね」
「あ〜・・・まぁそれの方がまだましかも」
姫と晴が照ちゃんの提案に同意する。
晴は慣れてるからやろうけど、なんでか姫も照ちゃんのテンポについていけてる。あれかな?妹好きがなせる技かな?
晴と照ちゃんがどこからかゲーム機を持ってきてテレビに繋ぐと私たちは赤い帽子のあのキャラとかを操作して遊ぶ定番のパーティーゲームを始めた。
私がこのシリーズで初めて遊ぶのもあって紅羽と二人で操作することになった。
そして2ターンゲームの進行を見せて貰ってから3ターン目のミニゲームで遂に私が操作することになった。
チーム分けは私の操作キャラVS姫、晴、照ちゃんの操作キャラとなった。ゲーム内容は紙飛行機対イカダの勝負。操作方法はただ障害物をよけるだけなので簡単かなと思って始めたが、実際やってみると難しくて障害物にぶつかりまくって3人チームにぶっちぎりで負けた。
「・・・ごめん、紅羽・・・・・・」
「しゃあないって。稟、こんな時の為の2人チームなんやしうちに任せて。絶対勝つから」
「ぁりがとう、」
やばい。格好良すぎる。
ただ一瞬紅羽の目が光った気がして一瞬ブルッと震えが来た。
「あ〜〜〜!負けた!」
結果発表で最後の2人のどちらが優勝かが出て晴が声を上げてソファーに仰向けに倒れ込んだ。
順位は4位が姫、3位が照ちゃん、2位が晴で1位が私と紅羽のペアになった。紅羽は足を引っ張りまくる私がいながらホントに1位になってしまった。ちなみに晴は大人げないプレイで照ちゃんを押さえ2位になった。
「晴大人げなかったわね〜」
「ホント晴姉ないわぁ」
「はっはっは、ただ勝てばいいのさ勝てば」
「紅羽、ごめんなぁ?」
「何が?」
「いや、足引っ張ってばっかで」
「何言うてん。うちは稟とペアでゲームできて楽しかったで?」
そう言って紅羽がギュッと抱きついてくる。
私のボッチ力も落ちてきたのかさすがに友達に抱きつかれること自体にはそろそろ慣れてきたがまだまだ人前では恥ずかしい。
「もぅ、紅羽、恥ずかしいから」
「え〜、ええやん。女の子同士やったら普通やって」
どうやら紅羽の言葉はホントのようで別にそれを見た姫や晴には何も言われなかった。




