はるのいえ
改札を抜けると晴と姫がすでに揃って待っていた。
「ごめん、待たせてもた?」
「全然、待ち合わせの時間までまだあるしね」
紅羽の問いに晴が決まり文句を返す。
待ち合わせのときの「待った?」「ううん、今来たとこ」ってなんなんやろな?まぁ私は経験したことないからあんま言えへんのやけど。
「駅から家まで近いから歩きでいい?」
「うん、案内よろしく」
晴の問いに紅羽が頷いた。
駅から出ると外はいい天気で日差しがきつい。そろそろ昼間は涼しいから暑いの季節に変わりそうだ。
今日の私の服装は朝に紅羽にわたされた春柄の爽やかな感じのワンピースだ。いつの間にか先週のショッピングの間に買っていたらしい。何というか・・・うん、もうかないません。それに流石に買って貰いすぎで申し訳なさ過ぎるし。
晴の言ったとおり数分歩くと家に到着した。晴の家は二階建てのよく見るそこそこ大きな家だった。
晴が早速「ただいま〜」と言いながら玄関のドアを開ける。そのまま玄関に入ってしまった晴に続いて私たちも玄関に入ると、丁度晴のお母さんらしき人がやってきたところだった。
「おかえり〜。それと皆さんいらっしゃい」
「こんにちわ、本日はお招き頂ありがとうございます」
笑顔で迎えてくれた晴のお母さん?に紅羽がそつなく挨拶をする。それに続いて姫と私も「こんにちは」と挨拶を述べる。
「晴、さっさと皆さんに上がってもらってリビングに案内しておいて」
「は〜い。さ、皆上がって上がって」
晴に促されて私たちは「おじゃましま〜す」と口にしながら靴を脱ぎ家に上がる。そのときにさり気なく靴を揃える紅羽と姫を見習って私も靴を揃えておいた。
「こっちリビングだから入っちゃって」
通されたリビングはそれなりの広さがありテーブルを囲んでソファーも置かれていた。
「皆適当に座って」
晴がそう言ってソファーに座る。それに続いて姫、紅羽も座り私も最後に腰を下ろした。
「皆さん遠いところお疲れ様。これでも飲んで寛いでください」
晴の(多分)お母さんがお盆に飲み物を入れて来て私たちの前にそのコップを置いてくれた。
「ありがとうございます」
紅羽が即座にお礼を述べる。
「それにしても皆さん綺麗やね、晴のお友達やとは思えんほど」
「ちょっ、母さん!」
やっぱりお母さんで合ってたみたいやな。
「なによ、ちょっとくらいいいでしょ?せっかく来て貰ったんやから。私もお話してみたいわ」
「も〜!だから嫌やったんよぉ・・・」
そんな晴の様子に私たち3人は顔を向けあって苦笑いを浮かべた。
「学校で晴はどうです?今の高校に中学の部活で同じやった子は1人も行ってないみたいで気になってるんやけど」
「母さん!」
「ん〜、そうですね・・・晴ちゃんは・・・一言で言うと元気いっぱい?ですよ。ね、稟?」
紅羽の問いに頷きで答える。
「そうですね。それに私は電車でも一緒に登下校させてもろてるんで感謝してます。それに私たちの中ではムードメイカーですし」
「電車で一緒っていうとあなたが姫路さんね。それにしてもこの子がムードメイカーねぇ・・・」
「ちょっと母さん、何その言い方〜」
「別に〜。以外やな〜と」
「む〜・・・」
うん、親子やな。最初は上品な感じで似てないなぁと思ったけど、この感じ絶対親子やな。にしても晴のお母さん若いなぁ、見た目も性格も。
「で、お二人が神宮さんと夏目さんね」
「はい」
晴のお母さんの問いに紅羽が口で、私が頷きで答える。
「ホント皆さん綺麗で頭も良いみたいで晴にはもったいないお友達ね」
「そんなことないですよ。晴ちゃんのおかげで毎日楽しいですし、それに勉強なんか今後3年もあるんでわかりませんよ」
紅羽の答えに私と姫も頷く。
「それに晴は私なんかよりもよっぽど可愛いんでクラスでも姫と紅羽とで注目集めてますよ」
「そう言ってくれる友達がいるみたいなんで安心しました。勉強の方も皆さんが居れば安心できそうですし。ただ晴が可愛いってのどうですかね〜。部活一辺倒の中学生活をおくった子ですし」
晴のお母さんが晴をジト目で見る。その横で姫と紅羽が私をジト目で見てくる。なんで?
「晴はホントにすごく可愛いと思いますよ?一緒に住んでたらわかりにくいかもしれないですけど・・・」
「夏目さんって聞いた通りね。凄い綺麗で守ってあげたくなる感じがすでにわかるもの」
え?どう言うこと?それに晴は私のこと何て話してんの?
晴の方を向くと平気な顔で「ん?だってそうじゃん?」なんて返してくれちゃった。どうしてくれよう?
「あ、そうそう、神宮さんに姫路さん、先週はこの子をお買い物に連れていってくれてありがとうございます。おしゃれっ気の無いこの子がセンスの良い服買って来てホント驚いたんですよ。夫も喜んじゃって。できればまたお願いしますね」
「それはもちろん」
「うちらも楽しかったんで」
お願いに姫と紅羽が感じの良い笑顔で答える。
「も〜、母さん!満足したでしょ!?」
「はいはい、わかってますよ。じゃあ皆さん寛いでいってくださいね」
そう言うと晴のお母さんはサッと部屋から出て行った。
「は〜・・・こうなりそうだったから嫌だったんだよ〜」
「まぁまぁ、晴ちゃん。ええお母さんやん、美人やし若いし」
「精神年齢が若すぎるんだよ」
そんなこと言ってはいるが母親を褒められてそこはかとなく嬉しそうだ。
「で、何ししよっか?呼んだはいいけど家なにも無いからなぁ〜」
「稟?」
紅羽が私を気遣ってくれる。流石と言うか、ありがとうございますと言うか。ここに来る電車でも気を使ってくれてたし。ただ人の多い電車で立った紅羽の前私一人座るのは正直キツかったです。
「ありがとう、紅羽。ちょっと電車で疲れたしもうちょっと寛がさせて」
「了解」
晴も私の事情を軽く知ってくれているので二つ返事を返してくれた。
その後暫く4人で喋っていると玄関の方から「ただいま〜」という声が聞こえてきた。