しょっぴんぐ
店を出てからは紅羽の案内に従い大型店舗の1つに入る。そのまま紅羽はまっすぐと目的のテナントのお店まで歩いて行った。
店に着いてレディスの方に足を向ける。
へぇ、紅羽が言ってたみたいに確かにカジュアルな感じの服多いな。
「どう?晴ちゃん、気に入りそうなのある?」
「ん〜、まだいまいち自分に合う服ってのが分かんないだよね〜。ちょっと見てみていい?その間に紅羽と姫で良さそうなの選んでおいてよ」
「おっけ。予算的にはどんな感じなん?」
「上下で1万から2万の間かなぁ」
「結構余裕あるんやね」
「あ〜、中学の頃はお小遣いの使い道とか遊びに行く時くらいしかなかったから結構貯まってるんだよね。でも靴とかも見ないといけないだろうからそれ位でお願いってことで」
「なるほどなぁ」
紅羽と晴の話しがまとまったところで晴が色々服やパンツを見てまわり、紅羽と姫が色々話し合いながら服をチョイスしていく。その間私も置いてある商品を眺めていく。
40分後。
長い。長すぎやろ。だって見るとここれだけしかないんやで!?
あ〜、暇・・・。
「紅羽〜、やっぱ自分だといまいち分かんないし姫と選んだの見せて」
晴がようやく満足したのか紅羽と姫に選んだ服を見せてもらいに行く。
「悩んだんやけど晴ちゃんに合うと思ったのはこのリボンの付いた白のカットソーのトップスとベージュのショートパンツかな。もうそろそろ夏だしちょっと寒かったりしてもカーディガン羽織ったりすれば大丈夫だしね」
「こんなアクセント付いたのあたしに似合うかな?」
「まぁ試着してみようよ晴」
姫が服を晴に渡して試着室に押し込めてカーテンを閉めた。
中でなにかブツブツ文句を言ってはいるようだが着替えもしているみたい。
「姫も結構強引なんやね」
ちょっといつもより上品にかける姫に少し驚きながら声をかける。
「まぁ晴相手やしってのもあるかなぁ」
「そんなもん?」
「稟も紅羽相手やったら結構ズバッともの言うたりするやん?」
言われてみれば確かにそうかも?
「うちって紅羽にちょっと雑やったりする?」
「全然。むしろそういう無理に気を使われてない感じは嬉しいかな」
う、ちょっと恥ずかしいです紅羽さん。
そこでカーテンが開いた。
その先にいる着替えた晴を見る。
うわぁ・・・めっちゃ可愛い。超似合ってる。さすがは紅羽と姫やな。
「ちょっと何か言ってよ」
私たちの沈黙に耐えきれなくなった晴が口を尖らせる。
「ごめんごめん。自分で選んどいてあれやけどあんまりにも晴ちゃんに合ってたから。ねぇ、燈?」
「うん、かなり可愛い」
「ちょっと、可愛いとかそんな素で言わんとってよ」
打って変わって晴が恥ずかしそうにする。
「晴、すごい可愛い」
「う〜ん、稟にまで言われるってことはそうなんかな?・・・うん、これにするよ」
「そんなにあっさり決めてええの?」
紅羽が自分が選んだ服にさらっと決めた晴に少し驚いて確認する。
「うん、自分だとまだいまいち分かんないし。そのうち自分でもいい感じの選べるようになるのが目標だけど今は紅羽先生と姫先生に選んでもらったの着て感じをつかもうかなぁと」
「先生て・・・」
服を着替え直して支払いを済ました。
「次は取りあえず靴かなぁ」
「よろしくお願いします」
「もう、そんなん止めてよ」
その紅羽と晴のやり取りに姫と私が笑う。
「もう、姫もウチと同じ立場やん」
「ごめんごめん、そう拗ねんといてよ」
「拗ねてないけどさぁ。・・・はぁ、次靴でいいよね?」
「いいんやない?」
「じゃあマルイの中に確か靴屋さんあった気がするし行こ?」
というわけで靴を案の定また1時間近く見て回って決めた。服に合ったカジュアルなものが最終決まったのだがそれが平靴じゃなかったので晴は最初反対いていたのだが姫に諭されて結局承諾した。
うん、ご愁傷様というかなんというか。まぁ私も可愛いし似合ってたので縋る目をしてきた晴に笑顔を返したりしたので言えた立場やないけど。
「次はどうする?」
「あたしは今日はもう満足したし3人が行きたいとこに行こうよ」
「私は今日は服買う気はなかったし紅羽と稟が決めて」
え?私ら?
まぁ紅羽に振るけどな。
「ほなちょっと個人でやってるお店に行っていい?近くに可愛い服置いてるとこあるんやけど」
「ええよ」
「いいよ〜」
紅羽の提案に姫と晴が賛成する。
でも・・・あれ?それって・・・。
「紅羽、それって朝言うてたあれ?」
「うん。約束したし、選んだの着てもらうで?」
「何々?朝なんかあったの?」
晴が私と姫に聞いてくる。
「うん、稟が服はお母さんに任せっぱなしって聞いてさ、それでうちが選んだ服着てもらうことになってん」
うん?改めて聞いたら話全然繋がってなくない?
「へ〜」
晴が頷く。・・・って今の普通に頷ける話のやなくない?
「はよ行こ」
紅羽に言われるまま来たはいいけど・・・何このお店!
いや、確かに可愛い服一杯おいてあるけど・・・ファンシー過ぎへん?なんかふりふりの付いたの多いし。これ何かの罰ゲーム?
そんな置いてけぼりの私を放っておいて紅羽が鼻歌を歌いながら楽しそうに色んな服を物色していく。
不安な気持ちのままたっぷり1時間待ってようやく決まったのか紅羽が私の所まで戻ってきた。
ちなみに姫と晴は楽しそうに2人で服を見回っていた。人の気も知らんと・・・なんか腹立ってきたな。
「はい、めっちゃ悩んだけどこのスカートと長袖のカットソーにベレーで」
紅羽に服とスカート、それと帽子を渡されたので受け取る。
選ばれた服は予想に反してふりふりなのじゃなくて安心した。まぁ可愛い系なのに変わりはないけど。ちょっとベレー帽とかが格好いい成分入った感じなだけ救いというかなんというか。
背中を試着室まで押されてそのまま放り込まれた。
しかたがないので服とズボンを脱ぎ渡されたスカートを履く。そしてさっきは気づかなかったが一緒に渡されていたであろうベルトで止める。そして長袖のトップスを着てベレー帽を被って鏡を見る。
思ったより悪くはない・・・かな?あんま分からん。
帽子の位置を少し直してカーテンを開けると前には姫と晴も来ていた。
紅羽が表情を変えずにフラッと近づいて来たと思ったらギュッと抱きしめてきた。
ぇ!?何!?
「紅羽!?」
そう言うと紅羽はアッと言って離れた。
「ご、ごめん。・・・稟が可愛すぎて我慢できんかった」
少し伏せ目がちに珍しく恥ずかしそうにしていて顔はかなり赤くなっている。
「はいはいご馳走様。まぁ稟の可愛さ見れば分からんでもないけど」
姫が呆れたように言う。
う〜、ただでさえこんな服着て恥ずかしいのに。頬に熱が貯まっていくのが分かる。
そのまま姫と晴に暫くからかわれた後は服はこのまま着ていくことになってしまい、店員の人に値札なりを切ってもらって店を出た。
時間も結構遅くなってきていたので今日はもう解散ということで駅に戻ってきて解散の流れになった。
再び電車に乗り2人して席に座る。
すると紅羽がピトっと引っ付いてきた。
「紅羽!?」
「ごめん、我慢しとったけど・・・もう無理。誰も知ってる人おらんしええやろ?」
我慢って何?それに知ってる人おらんでも恥ずかしいもんは恥ずかしいし。
「・・・いや?」
「その言い方ズルない?」
「ごめん。でも着くまでくらいこうしてたいし」
う〜、絶対今私顔赤なってもてるし。確かに嫌やないけど・・・。
結局着くまでそうしてました。