よる
覚醒。意識が浮上する。
手をついて上半身を起こす。
「ん」
変な声がでてしまった。ちょっと恥ずかしい。部屋の中でよかった。ふと窓へ目を向けると外は完璧に真っ暗になっていた。どうやら半日寝ていたらしい。
足をベットからおろす。ちょうどベットに腰掛けた形だ。さて、どうしよかな。もう母さんがご飯を作ってるかもしれない。でもあんま、てか全然お腹は空いてない。う~ん。
ま、とりあえず下に降りよかな。
ベットから腰を上げる。目を擦る。少しの間ボウっとしてから1階に降りた。
「もう起きたんやね」
階段の最後の段から1階に足を移すとすぐに母さんに呼びかけられた。
「うん」
「顔洗ってき」
言われた通りに洗面所に行くとタオルをタオル入れから取り出して側の洗濯機の上に置いて蛇口をひねる。両手で水を受けてためてからバシャバシャと顔を洗ってから、手探りでタオルを手に取ると顔をポンポンと叩くように優しく拭く。うん、さっぱり。使ったタオルをタオル掛けに掛けて洗面所をでて台所へ。
「ご飯もうちょっと時間かかるしテレビでも見て待っとって」
母さんが料理をしながら声をかけてきた。
「わかった。今日のメニューは?」
「シチューとパン」
「また洋食かぁ」
うちの母さんはお粥以外は洋食を作ることが多い。
「あんたが和食ばっかり作るからこうやってバランスとってんやん」
「ぅぅ」
たしかに私は基本和食しか作らない。でもそれって日本人なんやから普通やん?
「明日の朝も和食のつもりやってんやろ?」
痛いところを。
「テレビ見てるからできたら読んでぇ」
リビングへ向かう。そんな背中に
「はいはい」
と声が掛けられる。どうやらうまく話しを切り上げられたみたいや。うん。そういうことにしとこう。
和食っていいよね?美味しいやん。
リビングに入ってソファーに座って机の上のリモコンを取る。電源ボタンを押してテレビをつける。テレビが新しくなってる。引っ越しの機会に変えたんか。液晶テレビ。安なったしアナログがいつか見れんようになるしちょうどよかったんかな。
テレビではちょうどサザ○さんが始まったとこみたい。まあ私は今日から春休みやし何ちゃらシンドロームとは無縁やしボウっと見る。ていうても、私が行ってた中学の在校生も振替で明日休みなんやけど。
何も考えんと眺めてるとエンディングが流れ始めた。
「ご飯できたで」
母さんがリビングに入ってきた。
「行くわ」
テレビの電源を切って立ち上がる。そして母さんに続いてリビングをでる。
台所の席に着くと母さんがパンののったお皿とシチューの入れられたお皿を私の前と正面の席のとこに置いてその席に座った。
「ほな食べよか」
「うん」
『いただきます』
しばらく黙々と食べてから母さんが口を開いた。
「明日から私仕事やけどどないする?」
口に入っていたシチューを飲み込んでから言葉を返す。
「ん~。何もまだ決めてない。母さんはこっちの部署明日が初めてやっけ?」
「ううん。ちゃうちゃう。引っ越す前に何回か行っとったよ」
「ふぅん。なら別に困ることないんやね」
「まあ急な部署転換でもなかったしな。仕事の引き継ぎとかでここんとこ元の部署とこっちの部署を行ったり来たりしとったからそっちの心配はないな。ただ人付き合いがまた1からなんがめんどうや」
母さんがそういって軽く肩を上げた。
「いうても人見知りするほうやないし困らんやろ」
「まあな。あんたももうちょっと人見知り直せたらええのになぁ」
しみじみと言われてしまった。
「ほっといてや。それに友達もちゃんとおったわ」
「数人な」
「ぅ」
言い返せない。確かに中学では友達は少ない方やったし親友みたいな子もおらんかったし。
「彼氏でもできたら変わると思うんやけどなぁ」
ニヤニヤ顔でおちょくられてしまった。
「やめてや」
「はいはい、この話はここまでにしといたるわ」
すねたように睨んだら話を終わらしてくれた。そしてちょうど私も母さんも食べ終わった。母さんの方が食べるんは速いけど私の量がかなり少なめやったから。
『ごちそうさま』
食事の挨拶は欠かさんのがうちの決まりや。母さんが2人分の食器を持って立ち上がった。
「まあ明日の朝までには予定決めときや」
「わかった。考えとく」
そんな感じで新しい我が家での初めての夕食はいつものように済んだ。




