あまつせんせい1
先生を待つ間パソコンの電源を入れて明日の予定を立てることになった。
「明日どこに行くのがいいかな?」
晴が姫と紅羽に聞く。うん、まぁ私に聞いても仕方ないしね。
「四条河原町あたりだとお店多いしいいと思うんやけど燈はどう思う?」
「いいんじゃない?」
紅羽が提案して姫も頷く。
「稟はどう思う?」
いや、紅羽さん私に聞いても分かるはずないやん。四条は何となく分かるけど河原町とか何か聞いたことあるなぁ程度なんですけど。そもそも四条と河原町どっちなん?
「うち引っ越して来てそんなたってへんのやけど」
「え?でも春休み中はおったんやろ?」
「あ〜・・・うん。引きこもっとったから」
「あぁ〜」
うぅ、納得された。いや、まぁその原因は完全に私の行動なんやけども。
「じゃ、明日は四条河原町周辺でお買い物ってことで」
晴が総合して決定を下した。総合もなにも1カ所しか上がってへんかったけど。
「じゃあ何時に何処集合にする?」
もはやまとめ役固定となった紅羽が最後に集合場所を決めにかかる。
「私と晴的には四条駅がいいかも」
「だね」
「ならそれで、改札でいい?」
「うん」
紅羽の確認に晴が頷く。でも四条駅ってどうやって行くんやろ?まぁ紅羽に連れて行ってもらったらええか。
「時間は11時でええかな?お昼は向こうで食べる感で。あんま早いと2人もキツいやろし」
「そうやね」
「それくらいでちょうどいいかも」
時間の確認に姫と晴も了解した。
「いやぁわるいわるい。今日の仕事終わらせてきたら遅くなった」
明日の予定を決めてから暫くダベっていると前より少し遅れて天連先生が教室に入って来た。にしても先生の私たちに対する話し方がだんだんフランクになってる気がするな。
「で、何だっけか。今日は私とも話したいとかなんとか柊が言ってやったな。まぁ私も初めての担任だしクラスの生徒と仲良くなるのは歓迎やけどな」
「初めてのクラス担任ってことはやっぱり先生若いんですよね!?何歳なの!?」
いや晴、敬語敬語。それに歳いきなり聞くとか。
「柊?女性にいきなり年齢を聞くのはマナー違反だぞ?まぁお前達の年齢だとあまり感じないかもりれんけど大学を卒業したくらいから結構気にしだす人が多いからな、気をつけた方がいいぞ?」
「でも先生は気にしない方でしょ?」
「まぁな。でも世の中私みたいな奴ばかりやないし無闇に聞かないようにな?で、歳だったか。今年で26、だからお前達の丁度10上やな」
「てことは今年で先生4年目ですか?」
紅羽が即座に計算して訪ねる。
「いや、私はエリートまで行ったし2年目だよ。去年は副担任やって今年は初担任って感じやな」
先生になるのに院まで行くとか珍しな。それにしてもクラスの時よりももっとサバサバしたこの喋り方ええな。心地ええわ。
「2年目で担任とか先生って凄いんやね」
「柊?ゴマすっても成績は上げてやらんぞ?」
「え〜ケチ〜。ほんとにヤバいんだよ〜。お願い、楓ちゃん」
「名前で呼ぶのはいいが先生を付けろ先生を。それにお前には勉強の良くできる友達がほら目の前に3人もいるやないか」
「それは〜そうなんですけど〜、授業が速すぎて心配といいますか何といいますか」
「あぁ、そこらへんは気にせんで大丈夫や。去年も今より少し遅い位で授業したけど真面目に勉強した子はなんだかんだ付いてこられとったからな。それに模試の結果は他のクラスより圧倒的に良かったしな」
たしかに授業は速いけど分かりやすいしノートも見返して分かりやすいように工夫されとるみたいやったしかなり考えてやってくれとるんやろな。
「あぁそうだ、私もお前達に幾つか聞いてみたいことがあったんだった」
私たち4人は顔を見合わせた首を傾げた。
「まず1番気になってんのが夏目のことなんだが。入試の結果はあまり言っていいもんじゃないからここでのことはオフレコで頼むが夏目の入試結果はそこそこ上位止まりなのに今の成績までどうやって伸ばしたか聞きたいと思ってな。不正がないことは分かってるから普通に実力を上げたか入試の時は手を抜いたか」
これは困ったな。何て返せばええんやろ?春休み引きこもって勉強してましたとか?いや、あかんあかん。それで説明できるような学力の上がり方やないもんな。となると入試が特別悪かったってことにした方が良さそうか。ほな理由がいるな。手抜いたってのは気分的にもようないし・・・う〜ん・・・・・・使えそうな理由はあるっちゃあるけどあんま使いたないなぁ。
チラッと天連先生を見ると真剣な顔でこっちを見ている。
う〜ん、やっぱりこれ意外で上手く誤摩化せそうな理由なんか思いつかんし、しゃあないか。
「手を抜いたってわけやないんですけど、試験の時、前泊したんで体調崩してしもて」
「あ〜、そういえば夏目は体が弱いんだっけか。いや、わるかったな、ただ勉強で伸ばしたのならどうやったか聞いてみたくてな」
「大丈夫です。なんも気にしとらんので」
私もこんだけ学力上げられる勉強方法あるんやったらぜひ知りたいもんやしな。
「楓先生、聞きたいことが幾つかあるって言うてましたけど他には何なんですか?」
紅羽が私に気を遣ってくれたんか話題をさっと変えてくれた。ありがたいんやけど病弱ネタはもう姫も晴も知ってもてるからもう気にせんのやけどなぁ。
にしても速攻名前で呼ぶあたり紅羽にはほんま感心させられるな。
「あぁ、そうやな。これは4人ともに聞きたかったんだがどんなふうに示し合わせたように美少女4人が仲良くなったんや?今なんてクラス中からの注目が凄いやろ?特に男子どもがそろそろ告白なんかし始めるんじゃないか?」
美少女って・・・私を入れんとってや。
「どうやって仲良くっていうかたまたま私と晴が同じ電車なんで仲良くなって紅羽とは席が隣同士になったんで仲良くなって、稟とも仲良くなってって感じですね」
「だね〜。でもあたしも紅羽と稟がどうやって仲良くなったかくわしく聞いてみたかったんだよね〜。普通知り合ったばっかなのに同居なんてしないじゃん?」
晴の言葉に天連先生が驚いた顔をする。
「夏目と神宮って一緒に住んでたんや?」
「ぇと・・・」
「はい。うちの両親が仕事の都合でカナダに行ってまして、それで稟のお家でお世話になってるんです」
言葉に詰まった私の代わりに紅羽が答える。
「ほ〜、にしてもなんでまた?」
「えと、それはうちにも分からない部分もあるんですけど・・・入学式の日のプリントを持って行った時に稟のお母さんに夕食に誘われて、そのときにうちが一人暮らしやって聞いてた稟の母さんが一緒に住むの進めてくれたんでそれに甘えてって感じですね」
「なるほどな、てことはそこらへんは夏目の方が詳しく知ってんのか」
チラッとこっちを天連先生、改め楓先生がこっちを見る。
え?これってあれ?私と母さんのあの聞かれたら恥ずかしい会話言わなあかん感じ?
楓先生の口調も4人に対してはだんだん標準語メッキが剥がれてきました。その内無くなりそうです。