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いんぐりっしゅこみゅにけーしょん

 長座対前屈と握力の測定だけ始めに終わらせ残りの種目はできないためクラスと合同クラスの皆がスポーツテストの種目をこなしていくのを体育館の端からボーッと眺める。


 一応2つの種目を計測したため今回はレポートは出なかった。ただ長座対前屈は平均よりも良い数値だったのだが握力では記録的な数値をたたき出してしまった。悪い意味で。


 ちょうど晴と紅羽が上体起こしの計測を始めた。2人とも激速やな。隣の娘が1回起き上がる間に2回やってるやん。


 そうなのだ。予想はしていたが晴と紅羽が長座対前屈まで含めて10点のライン以上の結果ばかりたたき出しているのだ。20メートルシャトルラン以外は今やってる上体起こしで最後なわけで・・・ほんま凄すぎやわ。


 そうこう言っている内に上体起こしも終わったようだ。


 2人は記録用紙を記入してもらっていた娘から受け取るとそれを先生に渡しこっちに歩いて来た。


 「疲れた〜。ほんと紅羽凄いわ」

 「いやいや殆ど晴ちゃんの方が良かったやん」

 「お疲れ、うちからしたら2人とも凄いで終わりやわ。姫は?」

 「ん〜?あっちでまだ測定待ちしてるよ〜。さっさとやればいいのにね?」

 

 いやいや皆晴ちゃんみたいに無尽蔵に体力あるわけないやん?


 「そんなん言うんやったら晴が応援したげたらええやん?てか2人はここおってええん?」

 「いいんじゃない?まぁでもあたしは姫の応援行ってあげますかね。・・・でないと後で何か言われそうやし。てことでまた後でね〜」


 そう言うと晴が姫の方へ走って行った。ほんま元気やな。


 「うちは晴ちゃんみたいに体力無いし休憩させてもらおっかな」


 紅羽はそう言うと私の横に座るとコテっと此方に寄りかかって来た。それとともに紅羽の良い匂いが鼻をくすぐる。うっ、汗かいてるせいか何時もより香りが強いな。


 「ちょっと紅羽、まだ授業中やし」

 「あっ、ごめん、汗臭かった!?」


 紅羽が少し離れて服のニオイを確かめる。


 「大丈夫やて、全然臭ないよ。むしろ良い匂いや」

 「ぇ?・・・あ、ありがとう。でも気せんで言ってくれたらええんやで?」

 「なんも気にしとらんよ。ほんまに思ったこと言っただけやし」

 「そ、そう?」


 紅羽は少し嬉しそうな表情をしてから離していた距離を埋めて再び先ほどよりも軽めに寄りかかってきた。そしてリラックスしたふうに目を閉じる。


 「稟も良い匂いするで?何か安心する」


 ぇ!?良い匂いってやなんやって普通人に言うこと?・・・あっ、そもそも私が先言うてるやん!何も考えんと言っとったけど私凄いこと言ってもてたんやない!?う〜・・・今更ながら恥ずかしすぎる。


 紅羽は目を閉じたまま休んでるみたいやけどこちっはさっきのことを意識したせいでヤバい。なんや紅羽の火照った体の感じまでダイレクトに伝わってくるし。今誰かに近くで見られたら絶対変な人に見られてまう。多分顔真っ赤やし。


 チラッともう一度紅羽を見ると完全に寛いでいる。くそ〜こっちの気もしらんで。


 もう・・・早よ授業終わって。






 体感的には凄い時間が経過した頃、まぁ実際は10分ちょっとなんやけど、先生集合がかかった。


 紅羽がすっかりリフレッシュした様子で立ち上がった。それをジト目で見やる。


 「どないしたん?」

 「何もない」


 心底不思議そうな表情をする紅羽に諦めの感が否めない。ほんま紅羽は誑しの才能あるわ。そこらの男の子なんか多分一撃やで。


 首を捻る紅羽を連れて集合すると晴と姫がよって来た。


 「燈、どうやった?」

 「なんか晴に無理矢理のせられて頑張っちゃった感じかな。でもそのせいで多分明日筋肉痛やわ」

 「え〜、でも良い結果なんだったら良かったってことじゃん」


 「は〜い、皆さんお疲れさま〜。次はシャトルランをやるのでまた集合はここです。じゃあ解散」


 






 私達は今体育からの化学という波状攻撃によるダメージを昼食で回復している。


 「いや〜、体育が4時間目ならよかったのにね〜。昼食の前に化学って壁高過ぎだよね〜。せっかくの体育が楽しめないよ」

 「晴?それ天連先生に言っちゃっていいの?」

 「ちょっと姫、それはやっちゃダメでしょ!?」

 「冗談冗談」

 「う〜、たまに冗談に聞こえないから怖いんだよ〜」

 「そうかしら?」

 

 姫が戯けて笑う。うん、何かやっと姫が分かってきた気がする。


 「紅羽も4時間目が体育の方がいいよね?」


 晴がこんどは紅羽に同意を求める。


 「う〜ん、確かに化学は結構疲れる授業やけどそれはそれでええかな」

 「ぇ?何で?」

 「どうせその後稟のお弁当で体力回復できるし」

 「あ〜・・・そう言えばそうだっけ。羨ましいなぁ。ねぇ稟、あたしにも作ってよ〜」


 !?


 ぇと・・・う〜ん、後1人分プラスかぁ・・・ちょっとしんどいかもやけどいけるかな?うん、せっかく友達になってくれた晴になら作って来てもええかも。


 「ぅ、うん。ええよ?」

 「あ〜・・・冗談冗談。さすがにそんな無理お願いできひんって。愛妻弁当を盗ってもたら旦那さんが怖いし」


 あ、愛妻弁当!?それにだ、だだだ、旦那さんって。


 「そ、そんなんで怒ったりせんって。そ、そそ、それに、だ、旦那さんって」


 珍しく紅羽も同様している。


 「こ〜ら晴、からかい過ぎ」

 「だね、2人ともごめんごめん」


 姫に嗜められて晴が謝ってくれる。


 「いや、そんな謝ることやないし、なぁ、稟?」

 「う、うん」


 「じゃあこの話はおしまい。時間無くなってまうし食べよ?」


 いつもは紅羽がこういう時纏めるのだが今回は紅羽も顔を赤くして同様してしまってるため姫が空気を読んで話を変えてくれた。



 







 今日の最後の授業は初めてのイングリッシュコミュニケーションだ。


 チャイムが鳴りしばらくしてから英語の七瀬先生とともに外人の女の先生も教室に入って来た。


 最初に外人の先生の自己紹介があった。先生の名前はオリビア・ホークというらしい。出身はカナダで大学を卒業してから院にいくまでの間に日本でALTとして数年暮らすそうで去年の夏から日本に来たらしい。ちなみに呼ぶときはオリビアと呼んでほしいらしい。


 授業内容は自己紹介を用紙に英語で書いてそれを発表してそれを聞いたオリビアと発表者が少し会話するといった一般的なものだった。


 だったというのはついに私の順番、つまり最後が回って来てしまったからだ。う〜、ほんま英語の授業ってなんなん!?前も自己紹介させられたし。もう勘弁して。


 しかし回って来てしまったものはしょうがないので前と同様無心を心がけて前と同様の発表をした。するとオリビアが驚いた顔をする。


 「〈すごく良い発音ね。どこか英語圏で暮らしていたことがあるの?〉」


 うん、まぁわかってました。普通日本人ってカタカナ英語かよく分からん巻き舌の発音やもんね。


 「〈いえ、日本から出たこともありません〉」

 「〈ほんと!?すごいわね、ネイティブにしか聞こえない発音よ?〉」

 「〈ありがとうございます〉」

 「〈ん〜、でもそれだけ話せるならどうしてそんな短い紹介文しか書かなかったの?〉」

 「〈えと、その・・・恥ずかしかったので〉」


 正直に答える。


 「〈そう、ならあなたのこの授業での目標はコミュニケーションをとることに対する苦手意識を無くすことね。このクラスの授業は楽しくなりそうだわ。ありがとう、どうぞ座って〉」


 促された通り座りようやく一息付く。


 ん?回りが静かすぎると思い見ると皆私の方を見ていた。


 ぁ・・・やってもた。


 前もミスったのにまたやってもてどうすんねん私。う〜・・・。


 どうしていいか分からずアワアワしてしまっていると、


 「は〜い、ちょうど時間になってきたので授業はここまでとします。皆で挨拶しましょう、See you」

 『See you』


 華麗に七瀬先生が授業を終わらしてくれた。


 助かった・・・。ほんま七瀬先生には感謝やな。



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