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どえす

 2限目、あいかわらずのスピードで化学の授業が行われた。案の定まだ午前中の半分の授業が終わった所だというのに教室には疲労の空気が充満している。


 「あ〜、やばい。やっぱりやばいよコレ。ねぇねぇ昨日はああ言ってたけど顧問なんだからある程度大目に見てくれたりしないかな?」


 晴が私たち3人にどこか縋るような目をしながら言った。それを


 「いや、それはないんやないかな?天連先生ってそういう所しっかり線引きしてそうやし」


  姫がバッサリと切り捨てる。


 「だよね〜・・・はぁ、終わった」

 「まあまあ晴ちゃん、テスト期間になったら皆で勉強頑張ろうよ。そしたらなんとかなるって。なんせ稟先生もおるしな」


 ちょっと紅羽、フォロー入れるんはいいけどそこで私の名前使うんはやめてや。私、人に勉強教えたことなんかないし。


 「そういえばそうだね!あたし達には稟がいるもんね」

 「いやいやうち人に勉強教えたことなんかないで?」

 「勉強が分かってる人に教えてもらえるだけで全然違うよ。今日の朝の電車でも姫に数学の宿題聞いたら解けたし」

 「半分写したようなもんやったけどね」

 「ちょっと姫それは秘密やって」


 姫と晴の会話に自然と笑いが出てしまった。横では紅羽も笑っている。


 こちらの視線に気付いた紅羽がニコっと微笑んできた。


 うん、あれやな。やっぱり友達ってええな。中学の頃は別に友達らおってもおらんでも変わらんと思っとったけど、いざ出来ると楽しいもんやな。


 「ちょっと紅羽も稟も笑わんとってくれる?」


 晴がプク〜っと頬を膨らませる。


 「ごめんごめん」


 紅羽が誤りながらも晴の膨らんだホッペをツンツンとつつく。


 「ちょ、やめい!全然悪いと思ってないやん」

 「ちゃんと申し訳なく思っとるで?」

 「あ〜やっぱり最後にあたしの見方でいてくれんは稟だけやわ」


 そう言うや晴が私の胸に顔を埋めて嘘泣きを始めた。


 急には止めてや。ドキッとするやん。まだ紅羽にすら慣れてへんのに。


 「いやいや晴ちゃん嘘泣きなんバレバレやから。それにうちの稟を盗らんとってくれる?」

 

 いや、私紅羽の所有物やないし。


 「そうよ晴、稟は紅羽に返して私で我慢しなさい」

 「いや、そもそもの原因は姫やん」


 嘘泣きを止めた晴がジト目を姫に向けてそう言った。


 「それもそうやね」


 そんなしれっと返した姫の言葉に晴も堪らず笑い出した。


 「まぁこれからは姫で我慢してやるか。勝手に稟に抱きついてばっかしてたら紅羽に怒られてまいそうやしな」


 いやだから私紅羽のもんやないし。・・・ないよな?確かに毎日弁当作ったりして奥さんみたいなことしとるけど・・・って何考えてるんや私!


 「我慢ってどういうことかな?まぁ七瀬先生来たみたいやし次の休憩でたっぷり教えてもらおうかな?」


 ちょっと姫、笑顔やけど怖!まぁいらんこと考えてたこと頭から吹っ飛ばしてくれて助かったけど。晴もなんかプルプル震えてるし。







 「はい、今日の授業はここまで。次はまた文法書に戻るから忘れず持って来てね〜」


 ちょうどテキストのキリの良い所で授業が終わった。


 「さて、晴?我慢の意味を教えてもらおうかな?」

 「冗談やって〜。もう許してよぉ。それに次保険体育やし教室移動やで?・・・・・・いや、ホント・・・ごめんなさい」

 「ぷぷっ。あははは。・・・もう、晴面白すぎ」

 「な、何それ!?」

 「い、いや・・・ごめっ、あははっ、いやぁガチガチな晴見るんおもしろすぎて調子のってもたわ」

 「さすがにひどくない?」

 「だからごめんて。でもこれでチャラやん?」

 「そう言われるとそんな気もするけどなんか釈然としないな〜」


 薄々気付いとったけど姫ってドSやな。私も気付けんとあかんな。


 「はいはい、姫も晴ちゃんも漫才やってないで移動しよ」


 空気の読める紅羽が会話の切れ目で移動を促す。


 「そうやね。ほら晴行こ」

 「いや、行くけどさ。・・・もう何かずっと姫にはいじられる気がするや」

 「それは晴が可愛からやって」

 「そんな可愛いは全然嬉しくな〜い」


 「稟、ウチらも行こ?」

 「うん」






 保険体育の授業は体育同様2クラス合同で行われるみたいで基本女子は視聴覚教室で授業が行われるらしい。らしいというのは初日の授業説明を聞いていなかったため紅羽に教えてもらったからだ。


 教室に行くと柴田先生がもう来ていてた。


 「席は適当でいいから座っていってね〜。ただ五月蝿くしてると席を決めないといけなくなるから私語は授業中は控えてね」


 「席自由やって。あっこ4つ空いてるしあそこにしよ?」


 紅羽がちょうど4つ席が空いている所を指差す。


 座ってから暫くすると皆揃ったみたいで人数を確認していた先生がドアを締めた。


 「はい、じゃあ授業を初めていきます。私が皆さんの体育だけじゃなく保健体育の方も担当することになっているのでよろしくね。この授業自体は初めてだけど体育は一度あったのでさっそく教科書に入ります。こんな教室に集められたしどんな授業するんだろうとか色々考えてしまってるかもしれませんが、当面は教科書の始めから順にやっていきます。だからまずは現代社会と健康をやっていきます。ただ皆さんが想像していたかもしれないような授業ももちろんする機会はあります。人によっては嫌だなぁ、とか気分が悪くなっちゃうかもしれない。でも知らないといけないことでもあるからその時は嫌でもちゃんと頑張って授業を受けてね?ただ今月は健康についてやっていくからそんな心配はありません」


 先生の言葉に一瞬教室がざわつくが先生の咳で静まる。


 そんな感じで授業は始まった。



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