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まちうけのもうひとり

 2限の終わりを知らせるチャイムが鳴った。


 朝から英語、数学と私にとっては暇でしかたのない授業の連続攻撃がようやく終わりを告げた。まぁ結局両方とも寝てもたんやけどな。途中当てられることもあったけど紅羽に助けられてなんとかことなきを得た。


 「稟、やっぱり毎日お弁当作るんキツいんやない?作ってくれるのはそら嬉しいけど稟が無理してやってくれてるんやったら意味ないわ」

 「いや、それは関係ないよ。慢性的に眠いんは生まれてこのかたずっとや」

 「それやったらええんやけど・・・ほんま無理だけはせんとってな?」

 「うん、わかってる。ありがとうな」

 「ぅ、うん!」


 え?お礼言っただけで喜ばれるって・・・私そんなにお礼言ってないっけ?・・・ない・・・かも?


 「うちってあんまお礼言ったりしてなかったりする?」

 「あ、ちゃうちゃう。いや、お礼はちょっとしたことでも言ってもらってるよ?言われ過ぎなくらい。でも、なんて言うかな・・・こう、いつもはどっかごめんなさいに聞こえる感じやってんけどさっきのは・・・うん、単純なありがとうやったっていうか・・・あぁやっと稟とホントの意味で友達になれた感じがしてな」

 「そっ、そっか」


 そう言えばいつの間にか紅羽とおるんが自然というか、おって当たり前に思ってもてるし、自然体で話せるし・・・なんなんやろ?まだ初めて会ってから一月しかたってないのに。


 〈キーンコーンカーンコーン、〉


 チャイムが鳴り明智先生が教室に入って来た。それにあわせて私と紅羽は向かい合っていた体を前に向けた。


 今日は午前の残りの授業が地理と生物やし助かったな。まだ楽しめそうや。






 前半に比べ後半の授業は期待通り暇せず終わった。


 「ごっはん〜ごっはん〜」


 晴が待っていましたというふうに変な歌を歌いながら椅子をこちらに向けて弁当を取り出す。


 「晴はよくそんなに食べて太らないよね?」

 「姫も全然太ってないじゃん」

 「そりゃ私は晴ほど食べてないからね」

 「なに?食べるのがまんしてたりすんの?」

 「量はそこまで気にしてないけど何食べるかは皆普通気にするでしょ」

 「え?あたし気にしないよ?お菓子も好きなだけ食べるし」

 「女の敵め」

 「え〜!?ねぇねぇ稟も食べるもの何か一々気にしてないよね?」

 

 ここで私に振る!?


 「うちは気にする気にしない以前にあんま量食べられへんからなぁ」

 「そういやそうやった。紅羽は?好きに食べてるよね?」


 なんとか姫のジト目から逃れるために仲間を見つけようとする晴。


 「う〜ん。たしかに食べ物を我慢したことはないかも」

 「なぁ?そうやんな?ほら姫、まだ高校生なんやから普通気にしてへんって」


 勝ち誇った顔の晴。苦虫を噛み潰したような表情の姫。


 え?これってそんな必死になるとこ?


 「2人とも今ので世界中の女の子を敵に回したで。そのうちブクブク太ればええんや」

 「もう、やめてや燈。さすがにうちも最近食べ過ぎでやばいかもって思ってきとるんやから」

 「ほうほう、ついに紅羽も私達の仲間入りしましたか。やっぱりスイーツの食べ過ぎとかって気になってきちゃっよね」

 「いや、それよりもうちの場合稟と稟のお母さんの料理が美味しすぎて食べ過ぎてまうというかなんというか。絶対今週の食べてる量増えてるし」

 「あ〜、たしかにあるかもね〜。あたしも稟にお弁当なんか作られちゃったらガンガン食っちゃいそうだし」

 「いや、晴はいつも凄い量食べてるやん」


 なっとく〜という感じに頷いた晴に姫が突っ込みを入れる。うん、やっぱり晴と姫やと姫が突っ込みなんやね。


 「なぁなぁそろそろ食べへん?」


 紅羽が逸れに逸れた流れをお弁当の方向に戻す。


 「そだね〜食べよ食べよ」


 『いただきます』







 放課後情報教室でパソコンが立ち上がるのと天連先生をダラダラと待つ。


 「先生まだかな〜。ねぇ稟〜今日も適当にネットサーフィンでいいよね?今日はちょっと調べたいことあるんだ〜」

 「うん、いいんやない?もともとその手なんやし」

 「うしっ」

 「でも晴、何を調べんの?」


 姫が晴に訪ねる。


 「いや〜、あたしも女子高生なのでファッションにも気を配ろうかなぁなんて思ってさ」

 「何でまた」


 紅羽も会話に参加する。


 「う〜ん、一昨日にさ、姫と映画見に行ったんだけどさ〜、あたしの服見て姫に呆れらてさ〜」

 「いや、だって映画に女の子がジャージはないでしょ?それに聞いてみたらどこぞのスポーツ少年みたいな服しかもってないみたいやし」

 「そういうわけで心に傷を負ったあたしは姫を見返すためにファッションの勉強をしようかよ」

 「なるほどな〜」

 「姫もすごかったけど紅羽も私服って結構こってそうやんね?また教えてよ」

 「いやうちの場合は気にいった服を着てるだけやで?」

 「いや〜、それでもセンス絶対良さそうじゃん?それを教えて欲しいな〜なんて」

 「そんな言うんやったら服選びくらいは付き合うけど期待せんとってな?」




そんなこんなでダラダラ十数分が過ぎた。


 「先生まだかな〜」


 そう言って紅羽がケータイを開き時間を確認する。


 て。


 ちょい待って。


 え?


 待ち受け画面昨日のにバッチリなってるやん。


 「ん?それ紅羽?へ〜化粧しなかったら可愛い系になるんやね」

 

 姫が目ざとく待ち受けに映る紅羽を見つけてしまった。


 「あぁ、うん。そうかも。稟にも前そう言われたし」

 

 あんまり見られないように紅羽がケータイを閉じた。


 「隣に移ってためっちゃ奇麗な娘って誰?」


 めっちゃ奇麗って・・・まぁ紅羽は化粧上手いみたいやしな。それでやろな。


 にしてもパッと見では気付かんかったみたいでセーフやな。 


 「秘密」

 「何それ?中学の友達?」

 「だから秘密やって」


 紅羽がこっちをチラッと見てウィンクしてきた。


 うっ。ウィンクされた瞬間ドキッと胸が高鳴った。って、私は小学生男子か。


 まぁそれにしても紅羽は何やっても絵になるわ。


 「よし、みんな集まってるな?」


 天津先生がようやく来た。うん、ええタイミングや。これでうちやとはバレへんやろ。



2人のケータイはガラパゴスケータイです。


時代背景的にそうしました。

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