ういてる
月曜日、今日も紅羽と並んでの登校だ。
なんやずっとこうして学校行ってたみたいに感じるな。こうなったんはつい先週の話やのに。
「どないしたん?ずっとこっち見て」
「いや、まだ紅羽と一緒に住むようになって一週間たってないのにずっとこうしてたみたいに感じるなぁって思て」
「あぁ、それわかるわ。うちも稟と登校しとるんが当たり前な感じする」
なんでか紅羽だけは初めて会った時から不思議と一緒におって落ち着くんよね。
「まあ、ここ毎日寝るとき以外ずっと一緒やしな」
紅羽がそう言い笑いかけてくる。
「ほんまに。お風呂くらい1人で入らせてや」
「それは稟が心配かけんでええようにやったらやな」
「何それ。ほなずっとあかんやん」
「そうそう。もういいかげん諦め」
「諦めとるから昨日も一緒に入ったんやん」
もはや一緒にお風呂に入るのが決まりみたいになってしまっている。
「ほな毎度カチカチに緊張せんと今日くらいは普通に入ろうや」
「ほんまはうちの恥ずかしがってる所見るために一緒に入らせてるんやないやろな?」
「それはどうやろな?」
誤摩化しに笑った顔も絵になるとか、ほんま神様は不公平やわ。
「はい、おはよう。土日でリフレッシュもできたやろ?今日から一週間まるまる授業あるし高校生活になれるまで頑張って付いていくように。1限目は数学やし眠い奴は頭覚ましけよ~。内の学科は特に理数の授業がが難しくなるからな」
今日もサバサバした感じでサッと朝のホームルームを終えた。でもなんや天連先生の言葉遣い早くも雑くなってない?
「なんであたし理系なんか来たんやろ・・・」
斜め前の席から晴のボヤキが聞こえた。
「そら理系が得意やからやろ」
「姫はテストできたからいいやろうけど。あんな難しい問題入学そうそうやらされたら普通凹むわ」
「まあまあ、それはこれからちゃんと勉強すればええねん」
「ほなテスト前は勉強教えてな」
「それはもちろん」
なんやええな。2人の感じ。ちょっと羨ましいかも。
「稟」
「なに?」
紅羽に呼ばれて横を向く。
「テストになったら勉強教えてな」
「いうて紅羽は自分でできるやん」
「でも稟のができるやん」
「そんなんまだわからへんやん。中学の内容のテストの結果がよかっただけやし」
「まぁまぁ、ほな稟の方がその時勉強できたら教えてな」
「そうなったらな」
「はい、皆静かに~。授業始めるから」
数学の先生が入って来て授業が始まった。
授業?はい、寝ました。だってしゃあないやん。数学1って。正直もうええわ。始めの方はノートも取っとったけど、さすがに公式とその説明、あとは例題だけでええやん。かなり練習問題やるみたいやしそれをノートを取らんことにしたらいつの間にか授業が終わってたんや。すんません、言い訳です。
「ほい、授業はじめるで。静かにして席着いて」
天連先生?
「入学式の日にも言ったけど私が化学の担当や。担任の授業なんやし皆化学を一番しっかり勉強するように。特に神宮、夏目、姫路、柊は顧問の授業なんやし手を抜いたらわかってるやろな?なあ、夏目」
???なに?
「頬に腕の型付いてるみたいやけど私の授業で寝たら許さんぞ」
やばいやばいやばい。化学は要チェックや。
「ほな授業始めるで。テキスト開いて、一章理論化学。物質の構成から始めるで。」
授業はノートを写して聞いてるアピールして過ごした。授業はかなり意外にも分かりさすく丁寧な内容だった。ただ、スピードが段違いに早い。今は化学1と2に分かれてるみたいなんやけど中間までの間に無機の手前までやるらしい。私にとったらどんだけやってもらっても構わんのやけど、これ皆にしたらキツいんやないかな?わかる人には分かると思うんやけど元素を構成するK、L、M殻の説明まで終わりました。チラッと3人を見ると紅羽と姫でも疲れ顔で晴に至っては顔面蒼白になっている。
「やばい。やばいやばい。姫、どうしよ、全然ついていかれへん」
「確かに、速すぎるわ。ノート取るんに必死やったわ」
やっぱり晴付いていかれへんかったんやね。
「紅羽はどうやった?」
晴が姫に続いて紅羽にも聞く。
「ウチもちょっとノート取るん大変やったわ」
「稟は?」
「う~ん。まぁ速かったかな」
「うわ~、やっぱ満点はあたしなんかと違って余裕やわ」
「そんなんやないって」
まあ余裕なんはそうやけど正直ズルしてるみたいなもんやし。
「って言っても姫も紅羽も付いていけてるもんね。ほんま凄いわ。」
「晴もちゃんと勉強していけばすぐわかるようになるよ」
「じゃあ姫がその勉強を教えてよ、テストん時だけやなくてさ」
「ええよ。帰りの電車同じやし毎日復習しよか?」
「ぅ。毎日は勘弁」
晴のげんなりした様子に姫と紅羽が笑う。
「もう、笑わんといて〜」
3限は英語。
授業の進め方はまず文法書でテキストで使う構文などをやってからテキストに進むって感じやった。
「はい、今日は時間なのでここまでとします。テキストの一章の残りは予習しておいてね。文法書をやるのに比べたらかなり速く授業進めるから予習やってなかったらツラいからね。じゃあ、また明日の授業で」
チャイムが鳴ってそう締めくくって授業は終わった。
うん、やっぱり英語と数学が暇な授業になりそうやな。
「僕は現社を担当で、如月といいます。現社は理系の受験者の中ではセンター試験に利用する人が結構な割合でいますし、センター試験以外で使う人はほとんどいません。なので授業ではセンター試験を意識した形で進めていきます」
昼前の授業は現社。先生は中年の男性だった。
授業内容は昔の私にこの手の知識が無いため暇ではなかった。でもやっぱり頭のスペックがかなり上がっているのか授業内容の全てが授業が終わった時に頭にすでに入っていた。我ながらほんまCheatやな。
「やっとお昼だ〜」
晴の歓喜の声を合図に私と紅羽が机をくっ付ける。そして弁当を4人とも机の上の出してから食べ始める。
「ほんと授業のレベル高過ぎ。午前のだけでもういっぱいいっぱいやわ」
「そうやね。確かに難しいね。中学とはやっぱり段違い」
さすがの姫も疲れた表情を見せた。学年2位でも疲れる授業ってどんだけやねん。前の私の記憶が戻ってなかったらと思うとゾッとするわ。
ダラダラと話しながら食べていてふとクラスの様子を見ると当然ながら幾つかのグループが出来ていて私たちのように話しながら弁当食べていた。
紅羽とかは私以外の子と遊んだりせんでいいんかな?ここ何日かで色んな子と話したりはしているみたいやけど何や軽く話して終了って感じやし。コミ力ない私に気使ってくれてんのかな?それか私といて浮いてもてんのかな?
「やっぱりうちらって浮いてんのかな」
「今更?」
呟きが晴には聞こえたみたいで話題に拾われてしまった。
「才色兼備な3人がいるのに浮かない方がおかしいでしょ。あたしも別グループやったら高嶺の花すぎて話しかけずらかったと思うし」
「何自分は浮いてないみたいに言ってんの?晴ちゃんもそんだけ可愛いんやしうちらとおらんでも注目されとるわ。それに才色兼備って稟と燈のことやろ?」
「私はともかく稟は才色兼備そのものって感じよね」
え?この人達は何を言ってんや?才色兼備て、私は勉強だけやん。
「皆何言うてん。可愛いんは3人やん」
そう言うと何故か3人が「やれやれ」といった表情を浮かべる。
「これやから稟は」
「ほんと」
「でも、これだから稟って感じだよね〜」
紅羽、姫、晴が訳の分からないことを言う。
「これやからってなんなん?」
「いや、やっぱ稟は可愛いすぎるなぁってこと」
「何なんそれ?」
ほんま何なん。意味分からへんわ。