0000
ショップを出た私たちは近くのショッピングモールのフードコーナーにやって来た。
「2人は何が食べたい?」
母さんが私達に聞いて来た。
「うちはなんでもいいから紅羽が決めて」
「え〜、そんなん言われたら逆に決められへんわ」
「紅羽ちゃん、好物は何やっけ?」
「ぇと・・・オムライスです」
「ああ、そういやこの前聞いたわ」
チラッとこちらを見てくる・・・が無視。
「ほなちょうどオムライス屋もあるみたいやしそこ入ろか」
3人で色んな場所で見かける有名所のオムライスチェーン店に入った。
店員に案内されて席に着き注文する。
母さんがケチャプの普通のオムライス、私と紅羽がふわとろオムライスのトマトソースを頼んだ。
「稟」
「ん?」
「ケータイ貸して」
「貸してって紅羽のんと同じやん」
「ええからええから」
「そんな言うんやったら貸すけど・・・はい」
ポケットからケータイを取り出して紅羽に渡す。紅羽はそれを受け取ると徐にポチポチと操作すると画面をこちらに向けて来た。
「ウチのアドレスと番号稟のケータイの電話帳の初登録にさせてもろたから」
電話帳の表示されている番号を見ると0000となっていた。ニコニコしている紅羽。ニヤニヤしている母さん。
なんやむず痒いわ。
「でも紅羽のケータイにうちの番号は一番始めどころか登録もされてへんけどな」
なんとも言えない気持ちを誤摩化すように言いたくもないことが口から出てしまう。
「大丈夫。ウチのケータイの電話帳0001から登録してたから0000空いてるよ」
「でも初めてやないやん」
「たしかにそれが残念なんやけど・・・」
少しシュンとなる紅羽。もう・・・私のバカ。
「で、でも登録番号的には同じやしな」
「・・・ありがとう、」
この程度のフォローしかできない自分が情けなくなる。コミニュケーション能力の高い人が羨ましいわ。
「稟、アドレスってもう決めてあんの?」
さすが紅羽というか、さっと話を変えて雰囲気を変えてくれる。
「全然。なんで?」
「いや、決めな登録してももっかい登録し直さなあかんやん」
ああ、たしかに。でもどうするかな。アドレスなんか全く考えてこんかったし。なんかアドレスにできそうなもんあったっけ?自分の名前もあれやしなぁ。アルファベットやしどうするかなぁ。なんか好きなものの名前でも付けたらええんかな。
ん〜、・・・kureha・・・って!何考えてるんや私!
「どうしたん?顔赤いよ?」
「な、なんでもない」
「そう?」
「うん、あ、アドレスは考えとくし登録は家でいい?」
「ええよ。そんな急がなあかん理由もないしな」
「お待たせしました〜」
注文していた料理が机に並べられる。
「それでは失礼します」
店員がテーブルを離れてから母さんが口を開いた。
「一旦食べよか。稟、家帰ったら私ともアドレスと電話番号登録し合おか?紅羽ちゃんも」
頷く。紅羽は「はい」と律儀に答えた。
昼食を食べ終わって家に帰ると早速部屋に戻ってアドレスを考えることにした。
アドレスなぁ。ん〜。いざとなると難しいな。私のことやし多分面倒やしずっと変えへんよなぁ。
あ〜もう、悩んでもしゃあないか。始めに思いついたんでいいや。・・・ってほなkurehaっての使わなあかんやん。
でもこのままやとずっとループしそうやしな。使うしかないか。kurehaを使って考えるとなると、どんなんがいいかな。kureha・・・kurehas-lodgerは軽いし、kurehas-housemateは・・・あれ?ええんやない?
そうしよ。決定。
早速メールアドレスを初期のものから変える。それから紅羽に登録してもらうために紅羽の部屋に向かう。
ノック。
「入って〜」
返事を聞いて部屋に入った。
「決まったん?」
「うん」
自分のアドレスを画面に表示させ紅羽に見せる。それを見て一瞬紅羽が固まる。
うぅ、やっぱりさすがに気持ち悪いと思われたんかな。
しかし紅羽はそんな私の心配を裏切ってくれた。
「わぁ、嬉しい!ええなぁこれ。ウチも変えるわ」
そういうやいなや紅羽がメールアドレスを変え始める。
「アドレス変えたし稟の方のも変えなあかんな」
差し出された手にケータイを乗せる・・・て、ちゃうちゃう。
「そんなあっさり変えていいん!?登録してる人に変えたの知らせんの大変やない?」
「そんなんこのアドレスに変えること思ったらなんでもないよ、はい」
ケータイを受け取ってアドレスを見るとrins-housemateとなっていた。
やばい。なんやすごい恥ずかしい。ってあれ?アドレスって皆に知られるやつやんな?
「紅羽!やっぱアドレス変えへん?さすがに見た人が変に思わへん?」
「大丈夫やって。事実一緒に住んでんのやし」
あっけらかんと言い放つ紅羽。たまに堂々とすごいことをする紅羽である。
「うちのには登録できたし、お母さんとも登録してきたら?」
「うん、そうする」
母さんには案の定超からかわれた。なんでそこまで考えが及ばんかったんや私・・・。




