はんばーぐ
「やっっと終わった~」
晴が先生が教室を出てた同時に立ち上がった。
「やっとご飯だよ~」
「はいはい早く食べたいんなら席付けるの手伝おうね~」
姫が嗜める。ほんとにこの2人は姉妹みたいやな。
「はい、稟」
「ありがと」
紅羽から弁当箱を1つ受け取る。姫と晴も各々弁当箱を鞄から取り出す。
「うわぁ」
紅羽が弁当の蓋を開けた状態で固まる。それを不振に思って姫と晴もその中身を覗き込む。
「ちょ、稟、弁当にハンバーグって」
「ほんとに。手作りみたいやしどんだけ手間かけてんのって感じ」
晴も姫も驚き半分呆れ半分だ。
「稟、凄い美味しそう・・・やけど無理してへん?」
漸く蘇った紅羽が心配そうに私を見てくる。
「別に無理なんかしてへんよ。ただ昨日は別にやることなかったし作っただけやって。殆どの日はもっと適当になると思う」
「それやったらええんやけど。ほんまに無理はせんとってな」
紅羽は多分昨日の話したことを気にしてくれているみたいだ。でもさすがに料理くらいで体調を崩すことはない。とはいっても何もやってなくてもたまに倒れたり気を失うことはあるけど。
「紅羽、気にし過ぎやって。そんなことより早よ食べよ食べよ」
「そうやね」
『いただきます』
今日は4人で揃った。うん、食事の挨拶が私たちからきっちり感染していっているみたいやな。
「ん~~~~~~。稟!すんごい美味しい!冷めてんのに全然固ないし」
うん、紅羽の幸せそうな顔が見れただけでも手間かけたかいはあったかな。私もハンバーグを一口食べる。まあまあやな。ポテトサラダも食べる。うん、こっちもそれなりに出来たみたいやな。
「稟って料理できて勉強超できてホント完璧超人って感じだよね」
「晴、そんなん止めてや」
「うんうん、稟ってこれぞ才色兼備って感じ」
「もう、姫まで」
「諦めって。稟がすごいんはもう周知なんやから」
「う~、紅羽は味方やって信じてたのに」
ちょっと拗ねた声を出してしまった私に3人が堪まらずというふうに笑い出す。
なんなん、もう。
まあでも、・・・こんな賑やかなんも悪くないかもな。
午後一発目の授業は地理だ。教室にやって来たのは白髪まじりのおじいちゃん先生だった。
「地理担当の明智です。みなさんとは今年と3年で地理を選択された方は3年と1年か2年のお付き合いになります。この授業ではおもにセンター試験で如何に90点以上を取るかというようなこと中心に行っていこうと思います。皆さんはセンター試験の問題が何を参考にして作られるかご存知ですか?そう、この教科書です。ではこの教科書から問題を作るときは重要な内容や問題の作り易いものを題材にしますよね?ということはどのようなことを重点的に勉強していけばいいかは自ずと分かってきます。写真や図、表です。大抵の学生は勉強するのに教科書の文章を必死に読んで写真はその補助のように考えがちですが逆に考えましょう。この長ったらしい文章はおまけです。もちろん私立などを受験するにあたって筆記試験まで受ける必要があるなら文章の方も勿論きっちり覚えなくてはいけませんが皆さんは理系の学生なんですからセンターのみの学生がほとんどなので考慮しなくてもけっこうです。もちろんそのように授業を進めていくので定期考査も選択問題でセンターに近いようなものにするつもりです。さて実際に勉強していきましょうか」
そんなふうに始まった授業は聞いていて楽しかった。1度大学受験をしているので知っている内容だったが切り口を変えるとなるほどとなる。例えば教科書の始めの章は地形についてだが黙々と地形の名前と形を覚えるのではなくてそれぞれの写真の地形がどのようにしてそうなってそんな名前が付けられたかというような説明からされて、文章についてはそれぞれの写真についてまとめて並べて書かれているよ、くらいの説明でしめられた。
教科書の後ろを見ると昔の私が覚えていた事と若干の違いが所々あるしこの授業は今後も楽しめそうやな。
今日最後の授業は生物。昔の私は軽く流してたけど他の授業は暇になりそうやしきっちりやるかな。
先生は美人の若い女の人だった。
「これから1年皆さんのクラスを担当します北野といいます。生物は受験では使わないよって子もいると思いますが国がやらないといけないと定めているのでしかたがないです。なので諦めてどうせなら楽しんで勉強していきましょう。もちろん医学部志望の子は本気で勉強してね」
授業は結構雑学も交えて面白いものだった。知らない内容も多く楽しめた。それにスイスイ内容が頭に入って来る。
ん〜、記憶戻ってから頭のスペック上がったんかな。