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はつじゅぎょう

 冷蔵庫から牛乳パックを取り出しコップに注いでから一気に飲み干す。


 「ふぅ」


 何とか落ち着いた。私の体を気遣ってくれてんのやろうけど逆にこんなん続いたらもたへんわ・・・。


 体を休めるのにリビングに行きソファーに体を沈める。


 「どないしたん?顔真っ赤やけど」


 先に座っていた母さんがニヤニヤと聞いて来た。どう見ても確信犯やん。


 「なんでもない」

 「まあそら色々見てもたらしゃあないか。まだまだ初やねぇ」


 もう、事あるごとにからかいにきて。そのために一緒に住むん進めたんやないやろな?


 「・・・」


 わざわざ応えるのも癪なので沈黙で応えてやる。


 「はぁ、ほんまに初々しいなぁあんた。小学生みたいやな」

 「小学生ってなんやねん」

 「いやぁ、耐性なさ過ぎやん。そもそも紅羽ちゃん女の子やのに」


 確かに同性なんだから何も思う事はないはずなんやけど。でも。


 「稟、お待たせ」


 いつも通り?のシャツにカボチャパンツ姿になった紅羽が私の隣に座る。そうなると3人も座ることになり必然的に密着してしまう。


 うわ、全然太ってないどころか痩せてるのに腕とかほんわり柔らかいな。それに今日も軽装やし。もう、せっかく落ち着いて来たとこやのにまた顔熱なってきてもたいやん。


 「紅羽ちゃんも出て来たみたいやしお風呂入ってくるわ」


 母さんが着替えを取りに自室に向かって行った。


 「稟、体調大丈夫?」

 

 体調?あぁ、そういえばそんな感じで出て来たんやっけ。


 「うん。もう平気」

 「ならよかった。あんま無理したらあかんで?」

 「大丈夫、もう慣れとるから」

 「そんな問題やないやん。学校でも何かあったら言ってな」

 「う~ん。学校では多分大丈夫やと思う。体育の授業も見学にしてもらえたみたいやし」

 「ならいいんやけど。でももし何かあったらほんまに言ってな?」

 「うん。そのときは頼らさせてもらうわ」


 紅羽の目を見るとなんぜか素直に頷くことができた。


 「さて、あんま暗い話ばっかしててもしゃあないしな。稟は明日の予定知ってる?」

 「うん。時間割は教科書と一緒に母さんに貰って来てもろてたから」

 「ほな大丈夫やな。明日から授業かって思たらなんや緊張せぇへん?どんな難易度なんやろ?とか」

 「ん~。そういえばあんま考えたこと無かったな」


 そもそも高校の授業くらいで心配するわけも無いしな。


 「そっか~。稟は今日のテストも余裕そうやったしね」

 「それなりにはできたっぽいしな。そう言う紅羽も余裕やってんやろ?」

 「うちは微妙やね。一応全部埋めたけどいまいち自信ないの多かったし」

 「ほんま紅羽は謙遜すごいなぁ」

 「それやったら稟もやん」


 「稟は寝るまでなにする気?」

 「ん~、軽く明日の仕込みかな」

 「お弁当の?」

 「うん」

 「それやったらうちも手伝うよ」

 「気せんでええよ。それにそれやとメニュー分かってまうやん。明日学校までの楽しみにしとって」

 「そうか?稟がそう言うんやったらお言葉に甘えさせてもらおうかな。なんか本でも読んでから寝るわ。稟おすすめの本とかってある?」

 「おすすめなぁ」


 入院暮らしの時期も少しあった名残で私の部屋の本棚にはそれなりに本が置いてあったりする。


 「そうやなぁ・・・人間失格とか?」

 「いきなり暗い系やな」

 「太宰のは嫌いなん?」

 「嫌いっていうか苦手やね。何か鬱々しいというか」

 「う~ん。それやったら神様ボートか香ばしい日々は?」

 「聞いた事ないなぁ。どんなんなん?」

 「江國さんの小説なんやけど、神様ボートはやんやフワフワした感じの小説で香ばしい日々は名前のままのイメージの小説やね」

 「なるほどな。江國さんって何か名前聞いたことあるわ。それやったら神様ボートっての借りていい?」

 「うん。多分本棚に文庫あると思うからかってに持ってって。うちはそろそろ明日の用意するわ」


 伸びをして立ち上がる。


 「ほなありがたく貸してもらうわ」

 「うん。じゃあ仕込み終わったらうちも寝るから、紅羽、お休み」

 「うん、お休み。ありがとうな」


 台所に行き早速用意に取りかかる。今日のは超手抜きだったので今回は凝ったものにする事にした。

 まず大きめの鍋に水を入れて沸騰させる。


 そこに洗ったジャガイモを幾つか入れて茹でる。


 頃合いを見て火を止めて湯からあげて皮を向いてボールに入れていく。全て入れ終わったらつぶし始める。


 潰せたら冷ましている間にキュウリ、人参、玉葱、リンゴを細かく切りボールに入れてかき混ぜる。だいぶ冷まってきたのでマヨネーズも入れもう1度混ぜる。


 次にミンチ肉を取り出しボールに入れ下味付けてこねる。


 「へー。めっちゃ凝ってんなぁ。やっぱり紅羽ちゃんにあんな喜ばれたらやる気出る?」

 

 母さんがお風呂からあがって来たみたい。相変わらずの長風呂やな。


 「まぁな」

 「ほーほー、やっと慣れてきたみたいやね」

 「毎日事あるごとにからかわれてたら、そらな」


 まぁほんとはさっきの事で色々吹っ切れた感があるだけやけど。


 「ほな私も先に寝させてもらうわ」

 「うん。お休み」

 「お休み、稟」


 


 捏ね終わったのでラップをする。ポテトサラダをタッパーに入れて冷蔵庫に入れておく。


 最後に使った鍋やボールなどを洗って仕込み終了。


 「さて・・・寝よ」


 テスト中十分寝たはずなのにやってきている眠気誘われるまま自室に行きベットに入った。









 今日も昨日と同じく早めに起きて弁当に取りかかる。


 フライパンを出して火に掛ける。オリーブオイルを引いて手のひら大の大きさにして真ん中を凹ませたおミンチを並べる。


 焼き上がったものお弁当に入れる。残りは今日の晩ご飯でいいかな。連続するんはあれやけど。


 アルミの受け皿を出してそれにポテトサラダを入れて弁当の隙間に入れる。ハンバーグにはハンバーグ用のタレを掛ける。で、完成っと。


 中身はご飯、ハンバーグ、ポテトサラダだ。それなりには頑張った方だと思う。


 昨日と同じく3人で食パンの朝食を済ますと弁当袋は紅羽に持ってもらい登校した。






 やっぱり姫と晴はまだ来ていなかった。


 「姫と晴はやっぱりギリギリみたいやね」

 「そやね」

 「1時間目ってなんやっけ?」

 「数学。朝一で数学ってほんまキツいわ」

 「そやね。それに明日からは荷物置いといたらちょっとは楽やろうけど今日は教科書6冊、ノート6冊とかほんま重かったわ」

 「置いとくって教科書とか?」

 「うん。まぁ家で使うもんは持ってかえるけどな」

 「へ~。やっぱ高校はちゃうね」

 「高校はって、中学でも普通にするやん」

 「え、うち毎日持って帰っとったよ?」

 「ほんまに?」

 「うん」


 ほんまに優等生やねんな。


 「おはよ」

 「おはよー」


 『おはよ』


 昨日同様時間ギリギリに姫と晴が到着。


 「ほんと家近いの羨ましいわ」

 「だよねー。あんな早い時間に家出てもギリギリだし」


 「確かに近いんは便利やな。弁当作る時間あるし」


 素で疲れてそうな2人に答える。


 「はい、皆静かに。・・・ん、今日も全員いるね。さて、今日から通常授業が始まります。浮かれるのも分かるけど中学より格段に難しいと思うから気合いを入れ直すように。あとは・・・あぁ、そうそう、丁度今昨日のテストの上位者の番号がこの階の階段前に張り出してるところだから自信ある人は1限目終わったら確認しに行ってみて。それじゃ、朝のホームルームはこれまで、すぐに授業始まると思うから用意して待っといて・・・ともう先生来てるみたいやから騒がんようにな」


 天連先生と入れ替わるように若い男の先生が入って来た。


 「はい、皆さん初めまして。」


 「これから1年間このクラスの数学の担当をさせてもらいます日野と言います。多分中学では自己紹介とかが普通だったと思うんですが、高校では半分の先生は早速高校内容の授業に入るので授業初日だからって気を抜かないように。ただ今日のこの授業は軽く中学の復習がてら昨日のテストの解説するんで軽く聞いといてください。それと来週からは数学1の授業をするので教科書を忘れずに持って来てくださいね」





 

 あかん、予想以上に暇や。簡単なうえ昨日解いた問題やし、ノートを写すっていう暇つぶしもないし。


 先生の説明は丁寧で分かり易いと思う。でも、でもや、今の私には暇すぎるわ。





 その後50分間ボーッと説明を聞き流してすごした。



 

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