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ぶかつしょうかい

 「これで実力テストは終わりなので昼休憩とします。午後は部活紹介なので1時30分にここに1度集まってください」


 理科のテスト担当の先生が解答用紙を回収するとそう言って教室から出て行った。


「あ~・・・やっと昼ご飯だ」


 柊さんが精魂尽きたように机に崩れ落ちた。が、すぐに

「まあ終わったことやし、忘れて昼食べよ!」

ムクッと起き上がり何故か清々しい表情になった。


 「そうそう。終わったことは気にしてもしゃあないしね」


 姫路さんがやんわり優しげな表情でフォローを入れる。


 「姫路さんと柊さんはお昼お弁当なん?」


 紅羽が2人に確認する。


 「私はお弁当。朝早いのに母さんが頑張ってくれて」

 「お、あたしも弁当。てか紅羽さん、それに夏芽さんもやけど性にさん付けで呼ばれんのって何かこうムズムズするし・・・名前で呼んでよ」

 「あ、私もさん付けはやめて欲しいな」

 「う~ん、そうやな~」


 紅羽が少し考え込んでから言葉を続ける。


 「ほな晴ちゃんと燈でいい?あ、あとうちのことも紅羽でお願い」

 「もちオーケー。夏芽さんもお願いね」


 やっぱりきた。う~ん、晴ちゃんってなんか呼ぶの恥ずかしいな。まだ呼び捨ての方が言いやすいかも、それに姫路さんを名前でとか何となく呼びにくいしなぁ。


 「ぇ、と。なら晴と姫でいい?あとうちも紅羽みたいに稟って呼んでくれたらええから」

 「オーケーオーケー。じゃあ改めて紅羽、稟、よろしくね」

 「私からもよろしく」

 「よろしく、晴ちゃん、燈」

 「よろしく」


 「ん~!やっぱ他人行儀や無い方がええよね。稟と紅羽もお弁当?」

 「そうやで」

 

 紅羽が答える。


 「ほな早よ食べよ。腹減ったわ」

 「ならうちと稟の机でええかな?」

 「いいんじゃない?」


 姫路さんが答える。


 紅羽と私で席をくっ付ける。姫と晴も椅子をこっちに向けてから鞄からお弁当を取り出して机に置いた。サイズは姫が紅羽のと同じくらいの大きさで晴のはかなり大きめだった。体に似合わず大食感みたいやな。


 紅羽も席に掛けていた弁当を入れた鞄を机に置いて中身を出す。


 「はい、稟」


 紅羽から弁当を受け取る。そして早速蓋を開けた。


 ふと前を見ると驚いた表情で2人が私たちを見ていた。


 「どうかしたん?」


 紅羽もそれに気づいたようで2人にたずねる。


 「いやいや、どうかしたん?やないから。そのお弁当、中身も同じみたいやし、どういうこと?」


 姫の言葉におそばせながら普通ならおかしいことに気づいた。


 「ああ、そういえば。うち今稟の家にお世話になってるから。で、今日は稟が作ってくれてん」


 紅羽がニコニコ顔で答える。


 「え?・・・え?え?2人って制服採寸の時に知り合ったんだよね?」


 晴が頭の上に大量のクエスチョンマークを浮かべる。


 「そうやで。で、2回目に会うたんが一昨日にプリントを稟の家に届けに行った時なんやけど、その時うちが1人暮らし始めんの聞いた稟のお母さんに進められてな。そのまま一緒に住まわせてもらってんねん」


 「そんなドラマみたいなことが現実でもあんねんやね」


 姫が関心したように頷いた。


 「どうりで2人が仲良さそうやったわけやね。それに稟がお弁当作ったってのも驚き。あたし弁当を自分で作るなんて考えたこともないよ」

 「うちも。今朝聞いて驚いたもん。ほんま稟に感謝やわ」


 そう言って紅羽が抱きついて来た。


 「もう、止めて。恥ずかしいやん。昨日言ったばっかやのに」

 「ごめんごめん」


 紅羽が離れてテヘヘと笑う。


 「もう。お2人さん、美少女が戯れてるのも目の保養にはなるけど食べようよ。時間も少なくなってきてるし、お腹空きすぎてヤバいし」


 晴に促されてしまう。美少女って。それは紅羽だけやから。


 「ごめんごめん。食べよ食べよ」


 紅羽が応える。


 「いただきま~す」

 『いただきます』

 「いただきます」


 まず晴が、次に私と紅羽、で最後に姫と続く。


 晴が早速ガツガツ食べはじめる。ほんま見た目とのギャップが。あ、でも子供っぽいって意味では見た目通りなんかな?


 「う~ん、やっぱり稟の料理は美味しいわ」

 「そんなでもないやろ?手抜き弁当やし」

 「ほんまに美味しいよ」

 「そんなに美味しいの?なら私も食べてみたいな」

 「あたしも」


 紅羽の感想に2人も興味を持ったみたいだ。


 「そんなに美味しないよ?紅羽がおおげさなだけで」

 「それでも食べてみたいな。ダメ?」


 別に断る理由も無いし食べてもらうことにする。


 「そんな言うんやったら、はい」


 姫に弁当を向ける。


 「ありがと」


 姫が野菜炒めを一口食べる。


 すると驚いた顔をして

「普通にお店レベルに美味しいやん」

と言った。


 「あたしにもちょーだい」

 

 晴にせがまれるまま弁当を向ける。すると晴はすぐに卵焼きを1つ取ると口に放り込んだ。


 「ちょ、稟、チョーおいしいんだけど!」

 「もう、2人とも大げさ過ぎや」

 「そんなことないて。稟の料理はおいしいって昨日からずっと言ってるやん」

 「ほんと。あんまり謙遜するのもあれやよ」


 もう姫まで。


 まあ褒められて悪い気はせんけど。


 「あ~あ、稟の手作り弁当いつも食べれるとか紅羽ちゃんうらやまし過ぎ」

 「へへへ、そうやろ?」


 晴の言葉に紅羽が乗っかる。


 「もう、この話はええやろ?」

 「あぁ、ごめんごめん。そんなムスッとせんといてな」


 どうやら気持ちが表情に出てしまっていたみたいだ。ほんと紅羽といると調子が狂ってまうな。


 「そういや稟は部活どうすんの?晴ちゃんとかも」

 「あ~あたしは姫とも今朝話したんだけど、やっぱり朝これ以上早いのは無理やし朝練とかない文化部系にしようかなって」

 「文化部か~。稟は?」

 「・・・帰宅部」


 『・・・・・・・・』


 沈黙が落ちる。え?そんなにおかしい?中学も帰宅部やってんけど。


 「せっかくなんやから稟も何か部活は入らへん?」

 「うちあんま人付き合い得意やないし」

 「ほな部員少ないとことか」

 

 部員が少ないって言うと・・・


 「文芸部とか?」

 「ああ、うちの高校文芸部員多いみたいよ?」


 しれっと姫に否定された。


 「ほなどこが少ないんかな?」

 「まあ今考えても埒あかんし部活紹介見てから考えようよ」

 「そりゃそうやね」


 晴の言葉に紅羽が頷いてこの話は一旦終わった。






 「よーし。みんなちゃんと集まってるな」


 昼休憩が終わり先生が教室に戻ってきて生徒が集まってるかどうか確認する。


 「これから体育館で部活紹介を聞いてもらうことになる。その後一旦教室に戻ってもらってから解散となるからその後興味を持った所に部活見学に行ってくれ。一応入部届けは何時でも出すことができるけど同時入部できるのは2つまでだから気をつけて。じゃ、さっそく体育館に行くぞ。さっさと付いてこいよ」


 先生は言い終わってすぐ教室から出て行く。それを慌てて追いかけるようにクラスメイト達が追いかける。私たちは最後尾に付いた。


 体育館に着いて先生は指示を出して私たちを整列させ座らせるとどこかに行ってしまった。そして他のクラスも全員座った頃合いで部活紹介が始まった。






 まず運動部から紹介があったがまったく興味ないのでスルー。結構回りは部活をどうするかで騒がしかったけど私は前も後ろも知らない人だったので誰とも話さずに舞台での説明をボーッと見ていた。


 運動部が終わると文化部の説明が始まった。一応軽く聞くがあまり興味を引くものは無かった。


 そして文化部の最後に何故か部員が舞台に上がらず知らない先生のが壇上に上がった。


 「え〜、最後の部活はコンピュータ部です。が、先月に卒業生が抜け部員が0になってしまったので私から紹介させてもらいます。活動は情報教室のパソコンを使ってのものとなります。一応今日の放課後天連(あまつ)先生が情報教室で待機していますので興味が有る人は行ってみてください」


 そう言うと先生は壇上から下りて行った。


 コンピュータ部か。部員もおらへんみたいやしええかも。



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