はじまり
・・・・・・目を覚ます。
え?どういうこと?
目の前には見知らぬ白い天井。
たしか中学の卒業式が終わってすぐ、その日のうちに引っ越したはず。大阪から京都へ。引越し先の一軒家についた時には夕方になっていた。あれ?でも玄関を開けようとした時からの記憶がない。うん、多分何時もの持病悪化の気絶やろな。それはええ。でも、その代わりに妙な記憶がある。いや、ちゃう、私に中学卒業までの記憶がある?わからん。どういうことや?生まれ変わったってこと?普通生まれ変るいうても産まれた時からか物心がついた頃には記憶があるもんちゃうの?わからん。
まあ、でも、起こったことは起こったことやし、そういうことなんやろう。
あまりにも起こったことが起こっただけに逆にすんなりと納得できてしまった。
「目が覚めたんやね。気分はどう?」
「ごっつう悪い」
ドアを振り返らずに答える。
「・・・大丈夫か?悪いなんて言うん久々やん」
母さんがベッドの隣のパイプ椅子に腰掛けて心配そうに顔を覗き込んでくる。
「体は大丈夫やさかい平気」
「そうか?ならええんやけど」
母さんがふぅと息をついた。
「ここは?」
「家の近くの大学病院」
「ああ、あそこか」
引っ越す前に予め病院に1度来たことがあったのですぐにピンときた。
「もう帰ってええの?」
「うん、事情は前の病院のセンセからいってるみたいやし、体に異常もないみたいやしな」
「異常なし、かぁ」
苦笑いを浮かべてしまう。
「ごめんなぁ」
母さんがすまなそうに眉を寄せる。
「やめてや、生きてるだけでウチは幸せやから。・・・・・・ほんま」
最後は誰にも聞き取れないくらいの声で呟いた。
そういうと母さんは眉を寄せながらも微笑んで私の頭の上にポンポンと手を載せた。そして荷物をさっと整理してから鞄に詰め込むとそれを持ち上げた。
「ほな帰ろか」
「うん、結局家の中は見れてないからな。楽しみや」
話し方がプロローグと変わっているのは2つの記憶が混ざったためです。