おむらいす
買い物袋を紅羽に台所の机に置いてもらってさっそく料理にととりかかることにする。
ほんとは昼はパンとかでかるく済ませるともりだったのだがあんまりにも紅羽が楽しみにしているので昼にオムライスを作ることにした。
「ほな時間かかるから適当に時間つぶしとって」
「そんなん。ウチも手伝うで?」
「大丈夫やから。テレビでも見とって」
なおも紅羽は不満顔だ。
「家のキッチンそんな広ないし2人は無理やから。気せんで寛いどいて」
「そうか?ほなそうさせてもらう・・・」
紅羽は不承不承といった感じで台所を出て2階に上がって行った。
さて、と。ほな作り始めよか。
まず炊飯器から朝に残ったご飯を器に移す。カパカパにならないように保温は切っておいたのでもちろんもう冷めてしまっていた。次に買い物袋から玉葱と人参を取り出す。それを洗ってから皮を剥き細かく切ってザルに入れてから水を入れたボールに浸した。
で、と。紅羽の好物みたいやしちょっとこって作ろかな。
買い物袋から鳥のもも肉を取り出して包装から取り出してまな板に置く。それに塩コショウ、ホワイトペッパーかけて下味を付ける。フライパンを取り出して火にかける。そこにオリーブオイルを少なめにひいてもも肉を焼く。そのときに皮を下にしてアルミホイルを落としぶたみたいにして重しをかけるといい感じになる。
焼けたところで肉を取り出す。取り出したフライパンにほんの少しの水とコンソメを入れてコンソメを溶かす。そこにトマト缶とケチャップを入れ最後に少し水溶き片栗粉を入れてとろみをだしてソースの完成。
次に別のフライパンを取り出して火に掛ける。オリーブオイルを多めにしく。そこに玉葱と人参を投入。さっと炒めてもも肉も細かく切りそこにたす。器に移しておいたご飯を空いたボールに入れ軽く水ですすぐいでからフライパンに投入。そこに塩コショウで軽く味を付けながら炒める。少し火が通ったところでさっき作ったソースを入れてまんべんなく混ぜる。できたチキンライスをお皿3つに装う。
卵を冷蔵庫から取り出して軽く洗ってから割って少量の牛乳と砂糖と一緒に混ぜる。それの半分を使って中身が半熟トロトロになるようにオムレツを作ってチキンライスに乗せる。すぐに残りの卵でもう1つ同じように作って乗せた。そして乗せたオムレツに切れ目を入れてやると勝手に割れていきチキンライスを覆った。
最後にソースを掛けて完成っと。
出来上がったオムライスとスプーンを机に並べる。
階段下から出来上がりを知らせる。
「紅羽~。できたで~」
「すぐ行く!」
返事が聞こえるやドタドタと階段をおりて来た。
2人して台所に入る。入ってすぐオムライスを見て
「うわぁ!すごい美味しそう!」
紅羽が満面の笑みを浮かべた。これだけでこったかいがありそうやな。
早速席について食べることにする。
『いただきます』
そういうやいなら紅羽はスプーンを持って一口。
「すっっっっっっごく美味しい!」
目を爛々と輝かせる。その様子に満足、というかなんだか幸せな気分になった。
その後、紅羽はまったくイメージに合わない感じでガツガツ食べ始めた。
「っ!」
案の定というか喉に詰まらせた。いそいでコップに水を入れて渡す。
「はい」
紅羽はそれを受け取ると一気に飲み干した。
「は~、助かった。」
「もう何やってんの。漫画やないんやから」
「稟のオムライスが美味しすぎるんやからしゃあないやん」
「もう、さっきから褒めすぎ」
なんて言ってしまったけど内心超嬉しい。
私もようやくスプーンを持って一口食べる。うん、まあまあやな。
そのあとは紅羽も私も黙々と食べた。
「ちょっと多めに作りすぎたな」
三等分にしてしまったので私には多すぎた。半分近く残してしまった。
「稟、もう食べれへんの?」
「うん。もう限界みたいや」
「ほなウチが残り食べていい?」
「人の食べ残しやで?」
「稟のやから気にせぇへんよ」
「そか?ほなお願いしていい?」
「うん。こんな美味しいもんいくらでも食べられるわ」
という感じで紅羽に残り全部食べてもらいました。
食事の後は紅羽にはテレビを見ていてもらってその間に残り1つのオムライスも完成させてラップをしてから洗い物を済ませた。そしてリビングに行き紅羽に隣に腰掛けた。
「お疲れさま。ありがとうな」
紅羽が労ってくれる。なんだか胸が暖かくなる。まだ1日しかたってないけどこんなのもいいなって思った。前世の私の望みはさっそく叶ってもたみたいやな。
「晩御飯どうする?結局昼オムライスにしてもたし」
「美味しすぎて食べ過ぎみたいやしパン1個で十分かも」
「ほなそれでいっか。ウチもパンで十分やし」
「稟あんま食べてへんやん」
「うちにしたらあれで十分多いわ」
「やぱっり稟って小食なんやね」
「たしかにあんま食べへん方やな」
そんな感じに午後はダラダラ過ごした。
「そろそろ食べとく?」
日も完全に沈んで小腹が空いてきたので紅羽にたずねる。
「そうやね」
「ほなちょっと待っとって」
そう紅羽に言ってソファーから立ち上がる。
台所に行ってオーブンを温める。食パンを2枚出して温め始めたオーブンに投入。お皿を2枚取り出して机に置いてから冷蔵庫からマーガリンを取り出す。
しばらくボーっと待ってから頃合いを見て食パンを取り出す。それにマーガリンを塗ってリビングに持って行く。
「紅羽、はい」
「ありがとう」
ソファー前の机にお皿を2つ置いてから紅羽の隣に腰を下ろす。
紅羽はお皿ごと持ち上げて零さないようにお皿の上でパンを齧った。
「稟の料理は食パンまで美味しいわ」
「ただ焼くだけやのに違いらあらへんよ」
「全然ちゃうよ。特に稟が作ってくれたってとこが」
「いいかげんそのネタはええわ」
「ネタやないよ。ほんきやから言うんやん」
「はいはい、もうわかったわ」
「全然分かってくれてへんやん」
紅羽が少し怒った表情になる。紅羽の怒ったレア顔ゲット。
「分こてるよ。うちも紅羽が相手やから料理頑張ろうって思うし」
って何言うとんのや私。あかん、紅羽に浸食されとる。
「そうなん?」
一転して嬉しそうな紅羽。あぁ、もうやけや。
「そら自分のだけより友達の分作る方が作りがいあるよ」
「そか」
満面の笑み。うん。まあ、ほんとこんなのも悪くないかも。
「ただいま~」
パンを食べ終わって食器も片付けてからしばらくしてから母さんが帰って来た。
「「おかえり」なさい」
少しして母さんがリビングに入って来た。
「あのオムライス稟が作ったん?」
「そう」
どう見ても出来合いやないやん。
「稟が洋食って珍しね」
ああ、そういこと。
「うちの好物がオムライスって聞いて作ってくれたんです」
「へ~、どうりであのこり具合か」
母さんがニヤニヤとこっちを見る。なんだか恥ずかしい。
「そんなんどうでもええやん。さっさと食ってき」
「はいはい。あんまりおちょくると後が怖いさかいな。食べてくるわ」
そう言うとさっさとリビングから出て行った。ほんまなんなん。
「そういや明日って学校どういう予定やっけ?」
気分を切り替えるのに紅羽に話しかける。
「あぁ、そっか。稟昨日学校行ってないから聞いてへんもんな。明日は午前中実力テストで午後は部活紹介みたい」
「そんなすぐ実力テストやるんか。やっぱ進学校やね」
「そうやね」
「そやったら紅羽、勉強せんでええの?」
「実力テストやからな。わざわざ勉強することもないかなと思て。それに稟と話してるほうが有意義やしな。稟はせんでええの?」
「うん。どうせちょっと勉強したからって変わらへんやろ」
てか高校程度で勉強の必要なくなってもたし。
「そらそうか」
その後は適当に話をしてからお風呂に入って寝た。一番風呂は紅羽に譲った。その後の入浴は昨日に“比べれば”普通に入れた・・・と思う。