きたく
教室まで戻ると案のじょうと言うか誰も戻って来てなかったので席に座ってダベっていることにした。
「女子ほ方はまだなんはわかるけど男子はなんで来うへんのやろ?」
「だらだら行って他のクラスとかぶったんやない?」
紅羽の疑問に姫路さんが答えた。
「あぁ。私らが教室出た時まだ皆教室やったしね」
「それならまだまだ皆が揃うのに時間がかかっちゃうかもね~」
柊さんが面倒くさそうに言う。結構せっかちな性格なんかな?
そう言えば。
「そういや紅羽も姫路さんも柊さんも違う中学校なんやんな?この学校って同じ中学出身の娘って少ないん?」
「う~ん。この学校も一応進学校やからなぁ。結構いろんな学校から来てるし皆同じ中学同士の娘は少ないんやないかな?うちはあんま話したこと無い娘しか来てないみたいやし」
「私は結構遠いし同じ中学の娘自体微妙かも」
「あたしも友達は皆違う中学校に行っちゃった」
私の疑問に3人が答えてくれた。なるほど、てことは私だけアウェイってことはないんやね。まあ地元の高校行っても私はアウェイやったやろうけど。
「てことはうちだけ友達おらんかったわけやないんやね」
そうこう言っているうちに教室にクラスの子が結構戻って来た。それぞれいくつかのグループ分かれて私たちのようにダベっている。でもなぜか・・・
「なぁ、なんや皆うちらのこと見てへん?」
「稟は目立つからな」
紅羽の答えにげんなりする。
「昨日休んでもたから?ほんま憂鬱や」
そう口にすると紅羽が、え?なに言うとんの?って表情になった。
「そんなん関係あらへんよ。稟が可愛いからに決まってるやん」
「またそれ?そんな冗談いらへんよ」
ようやくなれてきたのか紅羽の可愛い発言に顔が赤くなることはなかった。
「なあなあ、これ自分のことに鈍感ってレベルやないと思わへん?」
「たしかに。ただまあ私は神宮さんもよっぽどやと思うけど」
「うち?」
姫路さんの答えに紅羽が首を捻った。
「はい、皆座って~」
先生が入って来るなり着席を促す。クラスの皆同様私達も慌てて前を向いた。
「よし、予定通り早く終わったみたいやね。え~っと、伝えなあかんことは・・・部活の勧誘は明日からやから見に行くんは明日からにすること、以上やな。ほな解散」
先生はいっきに言い終えるとすぐに教室から出て行った。
え?・・・はやっ。
「帰ろう」
紅羽が私たちを促す。異論があるわけもないので鞄を持って立ち上がった。
「紅羽はそっちやんね?夏芽さんは?」
「うちもこっち」
「じゃあここでさよならやね。また明日」
「神宮さん、夏芽さん明日~」
「うん。またな」
「バイバイ」
姫路さんと柊さんの2人とは校門で別れることになった。
「なあ稟。このあとすぐ家帰る?」
2人と別れてすぐ紅羽が聞いて来た。
「スーパー寄るつもり。今日母さん帰るん遅いから」
「そか」
一応家では朝は私で夜は母さんが作る。でも週1、2で母さんの帰りが遅いときには私が作ることになっている。
学校から家に向かってすぐのスーパーに2人して入った。入ってすぐの所にあるカゴを持つと紅羽にすぐに取られた。
「これはうちが持つよ」
「そんなんええよ」
「ご飯作ってもらうんやから荷物持ちくらいさせてぇな」
「紅羽はそんなん気にせんでええよ。生活費貰うことになったみたいやし」
そうなのだ。母さんも最初は断ったみたいだが紅羽のお母さんに電話で押し切られたらしい。
「もう、稟は頑固やなぁ。じゃあこれはウチが持ちたいから持つ」
「もう。ほなお願い」
「うん」
紅羽がなぜか嬉しそうに頷く。ほんとどっちが頑固なんだか。
諦めて話題を変える。
「紅羽、今日は何食べたい?」
「稟が作ってくれるものならなんでも」
何でもて、それが一番困るわ。
「ほな白米だけでもええん?」
「う〜ん。凛と一緒に食べるんやったら多分満足かな」
「なんやそれ」
ほんまなんやそれ
「凛と一緒におるだけで満足ってこと」
紅羽が舌をチロっと出して笑った。なんでこんな恥ずかしいこと普通に言えるわけ?
「もう、そんなんええって。じゃあ好物教えてや」
「好物な〜・・・オムライスかな」
オムライスが好物ってなんや可愛いな。
「オムライスか〜。ほな今夜はそれでいこか」
「ほんま!?」
ほんとに嬉しそうに紅羽が喜ぶ。
「嘘言うてどうすんの。さっさと買い物済ませて帰ろ」
「そやね。ぱっと済ませよ。ものすごい楽しみや」
その後紅羽に急かされるまま必要なものをさっさと買って家に帰った。