きょうしつ
正門前から急に人が多くなる。
ぁぁ、やっぱり人多いんは嫌やな。
正門を抜けると同じ制服の生徒ばかりで溢れていた。
「稟もうちと同じCクラスやしついて来て」
「うん、ありがと」
言われるまま紅羽に続いて校舎に入る。そして入ってすぐの階段をのぼって3階へ。
3階とかやめてや。しんどいわぁ・・・。
「ここやで」
紅羽がある教室のドアの前で止まると振り返った。見るとドアの上にあるクラス指標には“1-C”と書かれている。
紅羽がドアを開けると中に入った。続いて私も入る・・・と教室にいた生徒全員から異様な目を向けられた。
ぇ?なんで?
あ。
そうか。昨日休んだからか。ぅぅ、注目されるんややのに。
「稟、ウチらの席後ろやから」
そう言うや紅羽は教室の後ろへ進んで行く。離れるのも心細いのですぐについて行く。
「ここが稟の席やで。で、これがウチの席」
私の席は窓際一番後ろと最高の席だった。紅羽はその隣。
「隣同士なんやね」
「そうやねん。うちも昨日驚いたわ」
紅羽が席についたので私も鞄を机に置いて席に座った。
「でもやっぱり稟は注目されてそうやな」
「ほんまに。こんなことやったらやっぱり昨日無理してもこればよかったわ」
「なに言うてん。昨日来てもどうせ注目されとったって」
「またそれか。お世辞はええよ」
「お世辞やないよ。稟はもうちょっと自覚した方がええよ?」
「それを言うなら紅羽やん。男子みんな紅羽を見とるで?」
「そんなん稟と話してるから何でか気になるんやろ」
紅羽って、なんて・・・鈍感なん!?たしかにこれは恋人できひんかも。
「おはよ、神宮さん」
「おはよ」
紅羽に2人分の声がかけられたので私も紅羽もそちらに目を移す。
「あ、姫路さん、柊さん、おはよう。」
紅羽が2人に挨拶を返した。
長髪、長身の綺麗系な娘と短髪で小さめの可愛い感じの娘が並んでいた。
「そっちの娘は昨日休んでた娘?」
長身の方の娘が急に私の話題を口にした。
「そうやで。夏芽稟ちゃん」
紅羽が私を紹介してくれた。多分私からは自己紹介なんてできなかっただろうからありがたい。
「夏芽さんか。私は姫路燈、よろしく」
「あたしは柊晴」
長身の娘と小さめの娘が続けて自己紹介してくれた。
「よ、よろしく」
ちょっと詰まってしまったがなんとか返すことができた。
姫路さんが私の前、柊さんが紅羽の前に座った。
「神宮さんと夏芽さんは中学からの友達なん?」
姫路さんが紅羽と私に聞いてきた。
「ちゃうよ。最近知り合ったばっかり」
「最近っていうと・・・制服採寸の時?」
「そうそう」
紅羽が頷く。
「へえ。やけに仲よさそうやったから同中出身かと思った」
姫路さんの言葉に柊さんも頷いている。
「ウチ大阪の中学行っとったから多分この学校に中学からの知り合いおらへんと思う」
「引っ越し?ほな家は学校の近くなん?」
「うん」
「紅羽も?」
「そうやで」
「ええな~、私も晴も電車通学やから今日も朝から辛かったわ。なぁ晴?」
「ほんまに」
姫路さんの問いに柊さんが頷く。
「2人は同い中学やったん?」
2人が仲がよさそうだったので気になってたずねた。
「ちゃうよぉ。昨日知り合ったばっかり。姫と電車が途中まで一緒やから昨日一緒に帰って仲良うなってん」
姫?ああ、姫路さんやから姫か。たしかに姫っぽいもんな。
「ねぇ紅羽」
「何?」
「ふと気になったんやけど席順おかしない?」
姫路、夏芽、柊、神宮がこの並びっておかしいよね?
「ああ。昨日席替えしてん」
「急やね」
「何か担任の先生が出席番号で並ばせるのは嫌な人らしくてな」
「変わった人やな」
「神宮さん、夏芽さん、言うてたらちょうど本人来たで」
姫路さんに言われて前を見るとスーツ姿の若い女の人が入って来たところだった。
先生も来たしで私たちは会話を止める。姫路さんと柊さんはさっと椅子を前向きに戻した。