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はつとうこう

 母さんが出て行ってすぐに私も紅羽も朝食を食べ終わった。


 『ごちそうさま』


 「ありがとう、すっごい美味しかったわ」

 「・・・うん。紅羽はもう学校の準備はええの?」

 「あとは化粧だけ」

 「そか、じゃあこれ片付けとくからして来て」

 「そんな、作ってもろたんやし私が片付けくらいやるよ」

 「そんなん気にせんでええよ。それにうちはもう準備終わってるし」


 それにこんな簡単な料理でこんな喜んでくれるんならこっちとしてはそれだけで十分やしな。


 「稟は化粧はせんの?」

 「うん。うちなんかがしても意味ないやろ?やり方もわからへんし」

 「化粧くらいうちが教えたげるけど・・・確かに稟くらい肌綺麗やと必要ないかもな」

 「全然綺麗やないよ。ウチなんか普通やん。」


 肌のことなんか気にしたことないし綺麗なわけないやん。


 「そんなことあらへんよ。どうやったらそんなきめ細かい肌になるんか知りたいわぁ。ウチやとどうしても化粧でごまかさなあかんし」

 「何言うてん。紅羽、化粧なくても十分綺麗やん。むしろ無い方が可愛いくらいやし」

 「え?稟は化粧ない方がいいと思う?」


 急にやけに真剣な表情で紅羽が聞いてきた。もう、見つめんといてや。


 「いや、うちはどっちもかわいいと思うけど・・・」

 「なるほどな。じゃあ学校では化粧してそれ以外はスッピンにするわ」

 「そ、そか?好きにしたらええんちゃう?」

 「うん。ほなお言葉に甘えて一旦部屋戻らしてもらうわ」

 「もう、さっさと行ってき」


 紅羽がそそくさと2階に上がって行った。


 私はもさっそくエプロンを着けて食器を片付け始めた。2人分の食器をシンクに運んでから母さんの分も含め一気に洗ってしまう。次にお湯に付けておいた網を洗う。それが終わると最後に生ゴミをまとめてゴミ箱に捨てた。


 それが終わるとエプロンを脱いで自分の座る椅子にかけて2階にあがる。自分の部屋に入ると予め用意しておいた鞄を持った。用意といっても今日は身体測定だけなので中身はファイルと筆記用具、財布だけなんだけど。


 自分を部屋を出て紅羽に呼びかける。


 「紅羽〜。もういい?」


 するとすぐに紅羽がドアを開けて出て来た。


 「お待たせ。もう大丈夫や」


 昨日ぶりの化粧バージョン。ちょっと可愛いよりも綺麗な印象が強くなるみたい。


 「ほな行こか」




 紅羽とともにドアを出て戸締まりをする。


 「あ、そうや。これ、昨日母さんに渡されてたんやった」


 紅羽に家の鍵を1本渡す。


 「鍵?」

 「うん。これから一緒に住むんやし、無いと不便すぎやん?」

 「あろがとう!」


 何に感激したのか紅羽に抱きつかれた。


 「ちょ、やめて。恥ずかしいやん。ここ外やで!?」


 紅羽は抱きつくのは止めたが顔を私の耳に近づけて

「2人だけの時やったらええの?」

なんて聞いてきた。


 「それなら、まぁ、ぇぇけど」


 心臓がバクバクだったが何とか頷いた。


 「そか!」


 私の言葉を聞くと紅羽は満面の笑みをうかべて体をやっと離した。


 「もう、はよ行こ」


 絶対赤くなってる顔を見せないように先に歩き始める。


 「ちょっと、待ってぇや」


 すぐに紅羽が小走りで追って来て隣に立った。


 「ごめんごめん。稟が可愛すぎて調子にのってもたわ」

 

 可愛すぎるとか!全然反省してへんやん。


 「もうええよ。でも学校では止めてな」

 「なんで?」

 「なんでって・・・。」


 絶句。


 「恥ずかしいやん。それに目立つんややし」

 「どうせ稟は目立つに決まってるやん。こんな可愛いのに」

 「なに言うてん。今まで可愛いなんか紅羽以外に言われたこと無いわ」

 「うそ!?」


 紅羽が本気で驚いている。なんで?


 「ほんまやし」

 「じゃあ誰かと付き合ったこととか告白されたりとか無かったん?」

 「付き合ったことなんかあるわけないやん。・・・まあ告白はされたことはあるけど、可愛いなんか言われたことないし」

 「そうか!誰とも付き合ったことないんか」


 なんで嬉しそうなん!?なに?もしかして紅羽も彼氏おらんの?


 「そう言う紅羽は彼氏おらんの?」

 「生まれてこのかたいたことないわ」


 仲間意識なんかな?でも紅羽が誰とも付き合ったことないってなんで?


 「なんで?紅羽くらい可愛かったら選びたい放題やん」

 「そんなことあらへんよ。それにうち付き合うんやったら結婚するくらいの気持ちやないと嫌やねん。それにまだ誰かを好きになったことなんかあらへんし」


 結婚って。意外とメルヘン少女なんやな。


 「そうなんや」


 でも、じゃあなんでさっき嬉しそうやったん?


 「そういや稟。いまさらなんやけどメアド教えてくれへん?」

 「ケータイのメアド?」

 「そう、ケータイの」

 「ごめん、うちケータイ持ってへんねん」

 「え!?ほんま?」


 紅羽が心底驚いた顔をした。たしかに珍しいとは思うけど、そんな驚くこと?


 「うん」


 「欲しくないの?」

 「あんま欲しいとは思ったことないなぁ」

 「そうなんやぁ。ほな連絡取るの不便やね」


 言われてみれば確かにそうだ。今後一緒に暮らしていくならあった方が便利だ。今まではケータイで連絡を取るような友達もいなかったし買ってなかったけどこれを機会に買ってもいいかもしれない。


 「う〜ん。そうやね。ほな今日にでも母さんに頼んでみるわ」

 「ほんまに!?ほな買う時うちもついて行くわ」

 「ええの?ありがとう。ケータイのことなんも知らんから助かるわ」


 ここまで話したところで学校の正門に到着した。


 「話してたらあっという間やね」

 「そうやね。前来た時よりもすぐに感じたわ」


 紅羽の感想に肯定を返す。たしかに、1人やないこんな通学も、いいかもしれへんな。



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