くれはとはじめてのよる
紅羽の荷物をある程度整理できたころには10時を回っていた。
「ありがとうなぁ」
「お礼なんかいらへんよ。母さんが無理言ったことやし」
2人一緒に紅羽のベットに腰掛けた。
「今日朝学校行った時稟がおらんで残念やったけど、今となってはラッキーやったわ」
紅羽がニコニコした笑顔を私に向ける。
「なにが残念やったん?うちなんかおらんでもかわらへんやん」
「そんなわけないやん!せっかく地元の子以外で高校初の友達やのに」
「友達?」
ぇ?ちょっと話しただけやん。
「えぇ!?友達になれたと思っとったんうちだけなん?」
紅羽が本気で落ち込んだ表情を浮かべた。
え?え?
こっちこそだよ。
「うちなんかが友達でええのん?」
「当たり前やん!というよりも稟やから友達になりたいんやん。稟やなきゃいやや」
ちょ、ちょちょちょ!やばい、やばいやばい。何言っとんのこの娘。あつ、顔が燃えるように熱い。
赤い顔を見られた反応が気になって横目で紅羽を見ると紅羽も顔を真っ赤にしていた。どうやら今のはさすがの紅羽も恥ずかしかったらしい。
2人の間にどうしようもない沈黙がおりる。
「なんでなん?ちょっとしか話しとらんのに」
沈黙も困りものなのでなんとか疑問を口にする。
「う〜ん、なんでって言われるとあれやけど・・・初めて見てピンときて話して好きになってもた。としか言われへんなぁ。それに嫌いな娘と一緒に暮らそうやなんて思わへんよ」
す、す、好き?どういうこと?
好きなんてどうでもいい男の子からくらいしか言われたことがなかったため慌ててしまう。
「好きって・・・」
「うん。この娘と、稟と友達になりたいって、親友になりたいって思ってん。でもケータイのメアド聞くん忘れてもたし、急に家尋ねんのもあれやから入学式楽しみにしててん。そやからクラス表見て稟の名前あって喜んだのに、式始まっても来うへんし」
「・・・ごめん」
なんとなく謝らなくちゃいけない気がして謝ってしまった。
「謝ることやあらへんよ。うちが勝手に期待しとっただけやしな。それにそのおかげで稟とこうしてられるわけやしっ」
そう言って紅羽が抱きついて来た。
ぅぅ・・・。確かに抱き合ったりは中学のクラスの娘らもやっとったけど。私には無縁のことやったし、耐性ないし。
「ちょ、紅羽。恥ずかしい」
「なんや、嫌か?」
紅羽が心配そうにこちらを伺ってくる。
「嫌やないけど・・・」
恥ずかしさに俯いてしまう。
「そか!」
紅羽は嬉しそうな表情に戻ると一度ギュッとしてから離れた。
「2人とも〜、そろそろお風呂は入り〜!」
1階から母さんの催促がかかった。
「待たせてもてるみたいやし、先に紅羽が入って」
「ええの?」
「うん、引っ越しで疲れたやろしゆっくり休んで」
「おおきに、ほな先に入らしてもらうわ」
「うん」
その後すぐに紅羽にお風呂に入ってもらうと交代ですぐに私も入ってこの日は眠りについた。