にゅうがくしきぜんじつ
4月に入って数日、明日はついに入学式だ。全然楽しみちゃうけど。憂鬱やけど。
時間は昼下がり、最近だんだんと暖かくなってきたため散歩するには丁度いい感じやと思う。
母さんは今日も仕事だ。部署が変わったばかりでやっぱり忙しいらしい。私のイベントには必ず休みをとるのでその分それ以外の時は休みの日が少ない。
明日から学校始まってまうし、最近家におってばっかでなまった体でも動かそかな。
家の鍵だけ持って家を出る。少し川のほうに歩くと堤防沿いに植えられた桜が綺麗に咲き誇っていた。ほぉ、綺麗なもんやな。
しばらく桜を眺めてから住宅地の方に入ってテクテク歩く。
すると小さなお寺が見えてきた。何ともなしにお寺へ続く階段をのぼる。
のぼりきったころには息が若干きれていた。短い階段でもこれだよ、もう。
かなり古ぼけたお寺だった。境内もお寺自体もかなり小規模だ。大きな桜の木が一本植えてあって満開に咲き誇っていた。
「にゃー」
ん?
「にゃぁ」
なにか猫の鳴き声が聞こえる。
どこからや?
キョロキョロと周りを見渡す。でも見当たらない。
「にゃー」
今度は聞こえる方向を聞き取れた。聞こえた方向を見ると桜の木の上に猫がいた。
下りられへんのか?
「にゃぁ」
ぅぅ、こっちを見てる。どないしょ。助けてあげたいけど・・・。
「にゃあ」
もう、しゃあない。
「にゃあちゃん、助けたげるさかいちょっと待っとってな」
意を決して桜の木の根元に張り付くとゆっくりと登りはじめる。木登りなんかしたことがないのでかなりの時間をかけて猫のいるところまでたどり着いた。
「にゃー、・・・ちょっとそこから動かんといてなぁ・・・っ!」
頭がクラっとする。意識が遠のく。
ぁ、やばい。こんな時に。あかん、今倒れたらあかん。
なんとか意識をつなぎとめて猫を抱きかかえる。そのあとなんとか地面まで降りると猫を地面に下ろしてあげた。するとすぐにどこかに走って行った。
なんとかなったな。でも無理しすぎたな、こりゃ。
頭がボーっとする。
あぁ、これは明日学校行けへんかも。
ごめんな、母さん。
しんどいながらもなんとか家にたどり着いて中に入ると自分の部屋に行ってすぐにベットに倒れ込んだ。
それとともにすぐに意識が深くへ沈んでいった。