妹!
「・・・・」
目が覚めて、まず思ったのは、身体が異常に軽いということ。
ぶくぶくと太って重くなっていた身体が嘘のようだ。
周りを見回してみると、過去の自分の部屋そのままの形であった。
「マジかよ…」
あんなとんでもないことが起こってなければパニックになっていたと思う。
もし、あのときセレンと話したことが本当なら、俺は昔の家に戻ってきたことになる。
ふと、思い出して携帯をみると、見たことのないアプリが入っていた。
『エン・スト』
…だから、もうちょいましな名前にしろよ。
だが、これで確実だ。
俺は高校の入学式まで戻ってきたことになる。
本当に願いが叶ったことに、思わずガッツポーズしてしまう。
まあ、こんなチャンスをくれたのはセレンなんだから、ちゃんとしないとな。
大切なのはこれからだということもわかっているので、すぐに自制する。
とりあえず、改めて自分の身体を確認してみた。
それからしばらくして分かったのが、スキルはまだ一つしか無いことと、
そのスキルが身体能力UPだったということだ。
いや、やばい、この身体まじでチートスペック。
少しジャンプしたら天井に頭がぶつかりそうになったし、軽くパンチをしてみた
ら、ブォン! と空気を切り裂くようなパンチをうてた。
いやいや、まじでこれはヤバイだろ…。
握手とかしちゃうだけでケガとかさせちゃいそうだな…。
うわ・・・超お肌つるつるやん、脂肪も全然ないし。
別に気にしてはなかったけど…超うれしい!
こんなに俺昔は普通の顔してたんだ。
改めて、自分の不潔さを再確認する。
これからはちゃんとしないとな…
トン トン
突然、ドアをノックする音がした。
その音にユキヤは、とっさに身構えながら耳を澄ませた。
(誰だ…?)
「アニキー朝だぞー!
早く起きろ!」
聞こえてきた声は、昔聞いた懐かしい声。
その声にユキヤは驚愕した。
お互いに話すこともしなくなってしまった妹…
今では大学生で、離れ離れになっているはずの妹の声だったのだ。
「おきろ! 兄貴!」
問答無用でふとんをめくりあげられる。
そこで見たのは、やはりというか、中学生の頃の妹の姿だった。
少し癖のある短髪に、中学校のセーラー服を着た姿。
可愛い感じの顔立ちなのだが、つりあがっている目がどこかツンケンなオーラを
放っている。
これが我が妹である、篠崎 愛梨だ。
「お・・おはようアイリ」
き、きまずい・・・あんなことがあって、
めちゃめちゃ迷惑をかけたのに、こんなに明るく話されると・・・
(しかも・・しかもだ・・。)
愛梨ってこんなに素直だったか?
高校生になった時の愛梨といえば、
俺のことを見たときに、まるで生ゴミを見るような目でみてきたのを覚えている。
それは正直俺が悪いのであって、しかたない・・しかたないのだが
昔見た愛梨と、目の前の愛梨があまりにも掛け離れている!
目の前にいるサトコを見る。
朝からおかしい様子のユキヤをみて、不安がっているようだ。
「アニキ、大丈夫? 具合でも悪いんじゃない」
「だ、大丈夫だよ」
「本当にい?」
愛梨は心配そうに見つめている。
(やめて! そんな純粋な目で俺をみないで!)
お、俺の良心が悲鳴をあげている!
もうやめて! もうとっくに私のライフは0よ!
「う、うん
いつも起こしに来てくれてありがとな」
「は、はあ!?
べ、べつに起こしたくて起こしてるわけじゃないんですけど!///
た、ただお母さんに頼まれて起こしに来ただけなんだからね!///」
(・・・・)
昔の家に戻ったからなのか、久しぶりに愛梨をみたからなのか、少し感傷的になってしまう。
あの頃の俺は。
『うっせえな! 毎朝うるせーんだよ!!』
『はあ!? 起こしに来てあげてるのになんでそういうこというの!』
『誰が起こしてくれなんて頼んだよ! この・・・・・』
毎朝起こしに来てくれる妹のありがたさをわかっていなくて、怒鳴り散らしてば
かりだった。
自然と、昔やったように右手で愛梨の頭を撫でる。
「うん、でもそれでも毎日おこしてくれるだろ?
だから、ありがとな、アイリ」
(・・・・あれ? なにやっちゃってんの俺?)
うわああああ! 俺超くっせえええええ!
しかも何か勢いで頭なでちゃったし!
ああどうしよう…このままだと
「さわんな! このクソ兄!!」
っていう反応されてしまうビジョンしか思い浮かばない・・・!
しかもなんか愛梨赤くなってるし!
やべえ! どう転んでもヤバイ感じしかしない!
「い、いや、それだけだから! なんとなく言っただけだかんな!」
そう言って、脱兎のように逃げ出したのは、しょうがないことだと思う。
妹がほしい。