オープニング
カチャ、カチャ、カチャ
暗い部屋に、一つの光源としてテレビが光っている。
そのテレビの前では黒い物体がうごめいていた。
カチャ、カチャ、カチャカチャ
はたから見ればかなり恐ろしい…というよりもドン引きする光景だ。
体は豚のようにぶくぶくと太り、顔はニキビだらけ。
もう半年も外に出ていないので体からは異臭が漂っている。
さて、そんな日本ゲーム中毒少年代表のような男。
彼は30歳を過ぎたにも関わらず日夜ゲームをしていたのであった。
「はぁ…」
男はクリアしたアドベンチャーゲームをぼーっとながめる。
今さっき倒したラスボスが派手なムービーと共に散っていく。
最近では珍しい王道ゲームだった。
エピローグが流れていき、ハッピーエンドの音楽が流れていく。
それを彼はなんの感慨もわかないまま眺めていた。
(なんか…楽しくねぇんだよな…)
小学生の頃からゲームが大好きだった。
中学生にあがってもやっていたし、
高校生になってからは友人の影響で…まあ、色々なゲームにも手を出していった。
全てのゲームが大好きだったし、楽しかったのだ。
そして…人生が変わってしまうゲームに手を出をだした。
オンラインゲームである。
友達にすすめられて始めたゲームだったが、
すぐに取り憑かれたようにはまっていき、
いわゆる廃人ゲーマーになるまでにはそう時間はかからなかった。
俺は、生きてる価値があるのか…?
ああ、もう一度やり直せたなら。
こんな俺だけど、人のためになにかをしたい。
もう一度やり直したい。
(ああ、ちくしょう……)
ぶくぶくに膨れた指に、一粒の涙が落ちた。
そのときだった。
・・ザザザ・・・・ザザ・・・・・・・・・
そのときだった。
目の前のTVの画面が変わり、真っ白ながめんになり、文字が浮かび上がってきた。
『本当にやりなおしたいですか?』
「…!?」
いきなり出てきた文字に驚いた。
さっきクリアしたゲームのプログラムではない。
TVにうつった文字をまじまじとみてしまう。
そのしたにはYES/NOの選択肢がある、それだけの画面であった。
…ゲーム会社のいたずらか?
いや、さすがにこんなに手の込んだことはしないだろう。
やり直したいですか?
やり直したいにきまっている。
空っぽで、無責任で、迷惑ばかりかけてきた。
自分のやりたいことだけをして、結局、一番大切なものには気づかないで…
気づいたときには、もうどうしようもなくなっていた…
これがリアルでも、ただの冗談でも、もし戻れるなら戻りたい。
カーソルをYESにあわせて、ボタンをおす。
すると、次の画面があらわれてきた。
『了解しました
戻ってしまうと、もう後戻りできません
本当に、よろしいですか?』
迷わずYESをおす。
『…了解しました
これは最終忠告です。
軽い気持ちであるならばYESをおしてはいけません
本当に、よろしいのですね?』
就職もできずに彼女もいない、親からの連絡はなく、友達もいない。
残っているのは、部屋の隅まで埋め尽くされたゲームパッケージの山。
ここにはなんの心残りもない。
YESのボタンを力強くおした。
その瞬間、眩い光が部屋をつつみ、光が消えたときには、彼の姿はどこにも残っていなかった。